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2022年のFRP業界最新ニュースの振り返り

2023-01-09

今回は2022年新春特別号として2022年のFRP業界最新ニュースの振り返りという題目にて、昨年発行したメルマガを抜粋して概要を述べてみたいと思います。

以下の見出しは、メルマガのバックナンバーにリンクしております。

 

1. 風力発電機のFRP製ブレード材のヘルスモニタリング

エネルギー戦略が資源を持たない国々での関心になりつつありますが、
その中で再生可能エネルギーは一つの選択肢として確固たる地位を確立しつつあります。

しかし再生可能エネルギー最大の欠点は発電による出力の不安定さ。
自然相手なので当たり前と言えば当たり前です。

そのため自然によるエネルギーが発生している際は抜け漏れなく発電を行うため、
少なくとも構造物は故障なく常に動き続ける事が求められます。

このような安定運用に一役買うヘルスモニタリング技術を紹介しました。

従来のAE(アコースティックエミッション)や超音波に加え、
画像認識にはAIを使うというところがここ最近のトレンドです。

人が見逃しがちな目視という業務に人工知能を適用するのは良い戦略です。

 

 

2. 建築物のFRPによる補修後の検査方法に関する新しい規格 ASTM WK74694

日本では法規等の存在により普及があまり期待できませんが、
世界に目を向けた場合において大変重要な技術になり得ると思うのが、

「建築物の補修」

という考え方です。

FRPの形状追従性が高いという特性を活用して補修材として活用し、
建築物というインフラを長持ちさせようという取り組みです。

COVID-19で大打撃を受けた業界が多い中で、建築物へのFRPの補修適用というのは伸びたということが知られています。
例えば工場等では生産量が落ちた今のうちに、メンテナンスを行おうという動きがあったようです。

規格化が始まったことで補修の最低ラインが上がると期待されます。

 

 

3. リサイクルPETを用いた発泡GFRTPの断熱材への応用

プラスチック資源循環法の施行など、FRP業界においても例外なく避けては通れないのが材料のトータルライフアセスメントの考え。
リサイクルは当該アセスメントの重要な要素を担っています。

サンドイッチ構造のような形態とし、
コアの部分にリサイクルPETを用いた発泡GFRP材を用いるのがポイントです。

従来はハニカムが担ってきたコアに発泡材を用いるという考えも、
これからのFRP設計の世界では重要になってくるかもしれません。

またGFRPが比較的熱伝導率が低いという所に着目したのもいい視点です。

 

 

4. フェースにCFRPを用いたゴルフクラブヘッド

個人的にはこの手のテーマが好きです。

スポーツの世界は研ぎ澄まされた感覚の世界であり、
そこに技術的なアプローチで客観的かつ定量的要件を抽出する、
というのが技術者にとって大変有意義な仕事だからです。

ここでは飛距離などに加え、音にこだわったというのが大変興味深かったです。

人の感性に訴えかけるのも大切な付加価値でしょう。

 

 

5. リチウムイオンバッテリーエンクロージャーへのFRP適用

モビリティーに限らず様々なものに対して電動化の波を受ける昨今、バッテリとモータは大変重要な技術になります。

FRPは軽量化による走行、飛行の距離という話だけで勝負するのではなく、

「バッテリーエンクロージャーに用いることでエネルギー密度という付加価値を提案する」

という観点が面白いと感じました。

リチウムイオンバッテリー特有の熱暴走を抑え込むために、
エンクロージャーに求められる特性の多くは構造設計に関連するものである、
ということも意外だったのではないでしょうか。

熱暴走をシミュレーションで予測するというアプローチも興味深かったです。

 

 

6. プリプレグのタック性評価規格 ASTM D8336 と試験治具

タック性というのは粘着特性と言い換えることもできます。

強化繊維にマトリックス樹脂が含浸したプリプレグという材料は、
そのマトリックス樹脂が熱硬化性の場合に表面がべたつくのですが、ここで評価するのはこのべたつき感です。

地味でわかりにくい技術だったかもしれませんが、
実際のFRPで成形体を作る現場では比較的重要な特性に関する内容です。

特にロボットを用いた自動積層等、プロセスパラメータ設定に向けた貴重な定量データを提供すると考えられます。

 

 

7. FRPも適用される英国次世代戦闘機 Tempest

このコラムは2022年で最も読まれたようです。

比較的マニアックな話だったのですが、
軍事技術や戦闘機が好きな方が読まれたのかもしれません。

派手な空中戦とは対極にあるような、
レーダで補足されないように移動した上で宇宙衛星を使いながら高精度の遠隔攻撃が主流というのは、
今の戦闘は準備がすべてということを改めて認識させているような気がします。

 

 

8. 道路トンネルの変状・異常事例集から見るFRPの活用

これは日本にとっても喫緊の課題です。

インフラの点検と必要に応じた補修は、
これからの持続可能な社会では不可欠でFRPは必ずその役割を担うことになると思います。

国土交通省の国土技術政策総合研究所がまとめたものですが、
インフラの課題が大変よく分析されています。

あとはこれをきちんと活用することが求めらるでしょう。

 

 

9. 化学工場での酸性薬品保管に活用される耐薬品性を有するFRP

2022年、日本で最も大きな化学系のニュースといえばここで紹介した濃塩酸の大量漏洩です。
これがあまり大きく取り上げられないのは不思議ではありますが、恐らくその後の処理も大変なはずです。

化学系の方、工場管理等に関する方々はこのニュースを見た時に言葉を失ったと聴きました。

このような惨事が二度と起こらないようにするためには、
構造物の保守点検が不可避です。

金属が最も不得意とする強酸相手では、FRPが高い性能を発揮します。

FRPの耐薬品性は重要な機能性の一つであるという認識が、
今以上に浸透していくことを期待したいと思います。

 

 

10. 燃料電池のガス拡散層を形成する炭素繊維複合材料

ここでいう炭素繊維複合材料はCFRPでもありますが、
どちらかというと不織布のようなイメージのものです。

これが燃料電池のガス拡散層に活用できるということをご紹介しました。

腐食に強く、導電性を有し、気体を均一に拡散させ、高い圧縮強度と、低圧縮クリープ性能、そして厚みの均一性があること。

ガス拡散層には上記の通り多くの要件が求められますが、
このような箇所にもFRPが使われているということは知っておいて損はないと思います。

 

 

11. FRPを使った3D printing製品の医療業界への適用

これは3D printing技術を適切に活用した事例といえるでしょう。

医療現場では当たり前のX線CTを用いてstlデータによる臓器等の形状情報を取得。

それをソフトウェアを用いてセグメンテーションを含む修正を実施し、
造形向けにモデルデータを整える技術を紹介しています。

被検査体の密度の違い、すなわちX線の透過率の違いによるコントラストをセグメンテーションに応用していると考えます。

このような具現化された3D形状物は医者が手術等の計画を議論するにあたって大変有効のようです。

世界中の人々の健康寿命延長に向け、FRPも医療業界でますます活躍していくと期待しています。

 

 

 

2022年は電動化関連とインフラ関連へのFRP適用について多く取り上げたと感じます。

 

今まで一般的に言われてきたCFRPで一次構造部材を作りましょう、
という時代は既に終わったと感じます。

ここから先は今まで以上に「FRPの機能性」が重要視されるでしょう。

機能性というのは軽量化や比強度、比剛性”以外”のFRPの特性となります。

FRPを適用するには従来の観点以外の着眼点が今まで以上に求められているということなのです。

 

FRPは主役ではなく、様々な主役が輝くための黒子としての役割が今求められています。

この役割を理解するためには、より広範囲で俯瞰的な視点が必要となるでしょう。

 

本年もできる限り様々な領域の技術の紹介とその考察をしていきたいと思います。

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