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バサルト 繊維 FRPへの適用拡大の可能性

2015-06-01

FRPの強化繊維として代表的なものはやはり、

– 炭素繊維

– ガラス繊維

の2種類だと思います。

それ以外にもアラミド繊維を初め、数種の有機繊維もありますが、
やはり上記2種類の無機繊維ほど浸透している繊維はありません。

 

そんな中、環境親和性能という新たな切り口で近年少しずつでてきているのが、

バサルト 繊維

です。

 

バサルト繊維というのは、玄武岩を1500℃で溶融押し出し(遠心)紡糸して得られる繊維で、ガラス繊維と類似した製造方法で得られます。

玄武岩はマグマが固まった火成岩の一種で、マントルを構成するカンラン岩の一部が溶融し、低粘度のマグマとして地表またはその近くまで急冷することでできる酸化ケイ素含有率45から52%のものです。

 

あまり知名度が高いわけではありませんが、
天然素材から作られているということから、
FRP業界でも環境親和性が求められる昨今において今後存在感を強める可能性があります。

日本においては「石から生まれ、もとの石に還る、環境にやさしい新素材」というスローガンのもと、日本バサルト協会といった特定非営利活動法人が存在しているようです。
http://www.tvac.or.jp/eh/each.cgi?id=7549

 

バサルト 繊維の物性はガラス繊維や炭素繊維と比較してどのような位置づけなのでしょうか。

 

物性に関する情報はあまり見られませんが、一例として以下のURLに掲載されたデータを見ながら見ていきたいと思います。

http://ccard.co.jp/basalt/bfgdata.pdf

 

密度については2.6~2.8 g/cm3

二酸化ケイ素が主成分ということからガラス繊維と同等程度です。
炭素繊維よりは密度が大きいです。

また断面観察の結果から7割近くが非晶質のようです。

弾性率は70~100GPa程度でガラス繊維よりやや高く、
PAN系炭素繊維の半分以下、ピッチ系炭素繊維の5分の1以下です。

破断伸びはガラス繊維と同等の2~4%。
炭素繊維の倍近く。

それ以外にも耐熱性や耐摩耗性といった特性が優れているとみられます。

ここまで見てくるとガラス繊維に近い特性であることがわかります。

 

製造メーカーとしては、

Kamenny Vek (ロシア)
http://www.basfiber.com/

HG GBF Basalt Fiber Co., LTD (中国)
http://www.hg-gbfbasalt.com/

といったところがあるようです。

 

日本では JCK 株式会社 がバサルト繊維関連の製品を多く扱っています。

http://www.j-c-k.co.jp/index.html

この会社ではバサルト繊維をベースにした製品で、

水の濾過、化学物質の吸着

といったことを行っているようです。

 

 

バサルト繊維はロシアや東ヨーロッパが強いという傾向が見られます。

この理由を調べてみたところ、どうやらこの繊維は冷戦時代に当時のソ連が研究をしていたという歴史があるためのようです。

参考URL:http://www.build-on-prince.com/basalt-fiber.html#sthash.8yKriwtP.dpbs

 

 

クリープ特性などの長期利用信頼性含めてガラス繊維と同等の性能を有しているとされていますが、 American Concrete Institute 、Canadian Standards Association 、International Federation for Structural Concrete といった公的機関からアプリケーション適用に関する設計ガイドラインを作成してもらえず、いまだに市場ではほとんど使用されていないというのが現実のようです。

この辺りは冷戦時代という歴史的な背景が大きく影響していると考えられます。

 

市場で認知されていないものを扱うのはビジネス的にリスクを伴いますが、今回の バサルト繊維 でいえば環境性能というトレンドをつかみうる素材の一つであることは間違いありません。

 

今後のFRP事業展開を考えるにあたっての参考になれば幸いです。

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