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はじめてのFRP- 非破壊検査 2

2014-12-24

FRPに対する非破壊検査技術紹介の2回目です。

今回は、アコースティックエミッションと超音波探傷についてご紹介します。

 

1.アコースティックエミッション


内部破壊で生じる微小な振動を圧電素子を通じて電気信号で受け取る技術で、AEともよばれます。


これは、非破壊検査といってもFRP部品出荷前というよりは、実際の運用中の状況をモニタリングするという使い方が一般的です。


この業界での大手は日本フィジカルアコースティック社であると考えます。

http://www.pacjwest.com/

 

また、一部実用化されているようですが、橋脚に圧電素子を設置することで目に見えない内部の初期破壊を検知するということが行われています。

検証文献の一例をご紹介します。
https://www.tobi-tech.com/tech/image/tech-pdf/DeSAMO1.pdf

 

FRPについてAEは初期破壊をとらえるための重要な技術であると考えます。

 

というのも、FRPの材料データの多くは最終破壊に対してのみ述べられているものが多く、その前の初期破壊についてAEで評価している例が少ないからです。

 

金属のように塑性変形しないFRPは、最終破壊までほぼ弾性変形しますが、その前段階で内部破壊が生じることが殆どです。


そしてこの内部破壊が進行することで最終破壊に到達します。

 


材料試験を行う際には是非、AEも併用して評価することで材料を使用する応力範囲を見極めることをお勧めします。

 

 


2.超音波探傷

結論から言うと、FRPの非破壊検査では超音波探傷が抜群の力を発揮します。


X線による非破壊検査技術の紹介のところでもご説明しましたが、FRPの欠陥の多くは層間剥離。


大きさはさまざまですが、特徴はその「薄さ」です。


入れた音波の反射波を検知する、もしくは表から入れた音波を裏側から受け取るという超音波の思想。


これこそが極めて薄い層間剥離も検知できる最大の強みです。


立ち上げ経験のある量産工場でも、FRPの非破壊検査は結局、超音波のみが機能しました。


そのくらい強力な検査ツールです。

 


ところが、この事実とは裏腹に超音波にも限界があります。

 

欠陥検知精度です。

 

 

FRPというのは、強化繊維とマトリックス樹脂が混ざったものであり、


不純物だらけの物質


という見方もできます。

 

それゆえ、解像度の高い高周波の超音波探傷プローブを用いることが困難です。


というのも、解像度を高めてしまうと、材料中の繊維が欠陥として検出されてしまい、本当の欠陥と見分けがつかなくなるからです。

 


つまり、低周波の超音波プローブを用いることが必要となり、結果として欠陥検知精度は低下します。

 


このような限界を考慮したとしても、FRP固有の欠陥である「層間剥離」を検知できる超音波探傷はFRP材料を扱う方々にとってなくてはならない存在であることは間違いないでしょう。

 

 

 

最近複合材料業界では、赤外線放射による非接触の非破壊検査手法なども出始めています。


これは、表面を赤外線で急速加熱した後、それが冷却する様子をモニターすることで、表層付近の熱の冷め方でその位置の欠陥有無を判断するというものです。

 

欠陥があると空気層が遮熱層となり、冷却速度が変化するというメカニズムを使っています。

 

また、渦電流によって形成される磁界変化によって繊維破断を検知し、さらに誘導加熱による層間剥離を検知するという手法も研究レベルでは出始めています。

 

50μm程度の厚みであれば15mm程度の大きさの欠陥も検知できるというのが今年の秋に秋田大学で開かれた複合材料学会で発表されていました。

 

 

まだ実用化されていないようですが、これからこのような技術が出てくれば超音波に代わる検査手法として確立されるかもしれません。

 

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