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CAMX 2022の conference program から見る業界動向

2022-09-19

FRPも属する複合材料業界の大きな展示会というと、欧州のJEC、そして北米のCAMXです。

複合材料が対象であるため、FRPに限らず、その周辺の副資材、離型剤、接着剤、
囲うツール等も多く展示されます。

CAMX2022の conference program から見える業界動向とは何か

Photographed by Luis Quintero

CAMXとは

About CAMXというサイトに概要が述べられています。

複合材料並びに先端材料に関するコミュニティー間交流を深め、
技術的課題解決やビジネス創出等につなげることが狙いにあるようです。

先端材料関係ということでSAMPEとも連携していると書かれています。

毎年開催されているようで、
2022年は10月17から20日の期間、
カルフォルニア州のアナハイムでの開催となります。

例年展示会と会議の2本立てで開催されているようで、
過去の開催についてはPAST EVENTSというページに概要が述べられています。

2020年はCOVID-19の影響もあってか2020年の展示会は見送られており、
Webベースの会議のみとのことです。

私自身も昨年は韓国で開催されたJEC Asiaからの依頼で会議に登壇しましたが、
その際はオンラインでした。

しかしリハーサルに参加した際にオンラインの難しさを感じました。
日本や韓国は問題ないのですが、それ以外の諸外国は場合によっては回線状況が悪く、
音が途切れる、画像が固まるということが頻発。

本番は自分とその前後の方のものしか聴いていなかったので他はわかりませんが、
同じような問題が起こったかもしれません。

2020年のCAMXも大変な状況だったのではと想像します。

2022年のCAMXは450社超の出展ということで、
1000社を超えるJEC Worldと比べると小規模ですが、
複合材料業界としての展示会としては大きいと思います。

日本からも出展する企業があるようです。

 

 

CAMXの会議のテーマ

複合材料のサプライチェーンに関する GENERAL SESSION に加え、
FEATURED SESSIONS というテーマに特化した会議が開催されます。

概要はCAMXのサイトに掲載されています。

 

FEATURED SESSIONS の議題としては以下のものが述べられています。

Outlook for Sustainability in Composites Manufacturing

Net Zero: What Does it Mean to the End User?

Resin Chemistry Advancements Meeting Future Market Opportunities

The Bi-partisan Infrastructure Law and the Opportunities for Composites

How Materials and Design Enable Future Transportation

The Journey of NASA Technology to Commercial Viability

Ceramic Composites Manufacturing Routes

Adhesive Selection and Sustainable Bonding

それぞれについて概要とコメントをしたいと思います。

 

Outlook for Sustainability in Composites Manufacturing

今やどこの業界でもきかないことは無くなったテーマといえます。
複合材料においても材料、プロセスを含む今までの既存の手法を考え直し、
持続可能な世界にどのように貢献すべきかを考えなくてはいけない、
というのが趣旨です。

本テーマは当然ながら重要であることに疑いの余地はありませんが、
全体的な問題は視野が狭く、偏っていることだと思います。

例えば天然由来の材料を使うというのを一例にすると、
その原料となる植物を育てるために自然を破壊する、
天然由来とはいえ加工時に莫大なエネルギーが必要になる、
といったのはその一例です。

リサイクルについても現状ではFRPをはじめとした複合材料で万能解は無く、
またそもそもマテリアルリサイクルにこだわることが間違っている可能性もあります。

材料という視点だけでなく、
設計、品質保証、保守点検を見直すことで「長く使う」というマテリアルサイクルの長期化も一例に、
そもそもの製品コンセプト立案段階から持続可能な世界に向け何ができるのか、
ということを試行錯誤しつつ、できるところから少しずつ始めることしか手法は無いと考えます。

広い視点を持ちながらも効率を焦らず、地道に進むという姿勢が本質ではないかというのが私の意見です。

ただCAMXで話をするのが複合材料業界で比較的優れた記事を掲載する Composite World の編集者 Jeff Sloan氏なので、広い視点での議論を展開してくれる期待もできそうです。

・関連コラム

天然繊維を用いたBPREGの熱可塑性プリプレグ

ガラス繊維のマテリアルリサイクル工場が稼働開始

リサイクルプラスチック と炭素繊維を用いた車載コンテナ

 

Net Zero: What Does it Mean to the End User?

こちらも基本的には環境問題に関連した内容です。

複合材料業界に関連する川上、川中、川下の企業が、
当該課題に対してどのような取り組みをしているのかの紹介をする、
というのが概要のようです。

幅広い産業界の企業について具体的な環境への取り組み事例を知ることができるというという観点から、
情報収集と必要に応じた自社への取り入れまで想定できるのであれば、
意義のある内容になると感じます。

 

Resin Chemistry Advancements Meeting Future Market Opportunities

複合材料のうちFRPのマトリックス樹脂に焦点を当てた内容のようです。
耐熱性、高物性、環境性能の改善によって、
新たな展開が期待されるという流れになると想像します。

FRPという材料の観点でいえば、
マトリックス樹脂の改質は大変重要です。

一つ誤解をしていけないのは、今までの延長では意味がないということです。
既存のものと比べて耐熱性が高い、弾性率や強度、靭性が高い、安いということではなく、

「今までにない価値を創出する」

というのがポイントです。

こういうと難しく考えられがちですが、
ヒントはFRPを含む複合材料業界の「外」にあると思います。

他業界では当たり前のことが、複合材料業界では当たり前ではないということは多々あります。

FRPや複合材料に限らず、業界で枠組みを作る意味がないと私が常に考えているのは、
物事の考え方が近視的になるという危機感に由来します。

今までにない価値の創出ということに関しては、
技術的にというよりも使い勝手を良くするということがポイントかもしれません。

マトリックス樹脂の機械的、または物理的特性を高めたとしても、
そもそも設計スキルが不足する現代では、
その性能を使い切ることは難しいのではないでしょうか。

それよりも冷蔵保管が必要ない、使用期限が長いといったものは一案です。

冷凍、冷蔵保管が必要、寿命管理が必要ということが、
どれほどユーザの負担になるのかは実際に量産まで経験しないと想像できないことです。

しかし視点を少し広げてみれば、
他の業界では量産フェーズに到達している可能性もあるため、
それが常識になっているということもあるのではないでしょうか。

 

The Bi-partisan Infrastructure Law and the Opportunities for Composites

インフラにFRPを含む複合材料を適用していこう、
という動きについての紹介です。

従来のモビリティーへの複合材料適用という考えに固執せず、
国がインフラ並びにその構造部材に投資をすると決めたので、
そちらへの展開を考えましょう、というのが趣旨だと想像します。

構造部材の寿命という長期視点から、複合材料の強みを述べると概要に書かれていることから、
Scrap and Buildを辞めようという考えは北米でも一般的になりつつあるようです。

北米のバイデン政権は超党派で The Infrastructure Investment and Jobs Act (IIJA) という枠組みに同意し、
インフラへの積極的な投資を行うことを2021年に発表しました。

その総額は5年で470億ドルです(約6.8兆円)。

IIJAについてはサイトで概要を見ることができます。

投資対象になるアプリケーションは道路、橋、公共交通機関(鉄道関連、空港)、治水に関するものに加え、
再生可能エネルギーや高速通信等もインフラとして述べられています。

インフラの構造部材としての老朽化は先進国で深刻で、
北米もその取り組みを本格化し始めているという印象です。

FRPは金属に比べて耐食性、耐薬品性が高く、形状追従性により補修材として活用する事も可能です。
恐らく活用の障害となるのは法規だと思います。これは時間がかかるかもしれません。

しかし長い時間をかけた実績の積み上げなどの着実な前進の結果、
FRPを含む複合材料がインフラや建築物の構造部材や補修材として、
今以上に活用される方向に社会の流れが変化するかもしれません。

・関連コラム

建築物のFRPによる補修後の検査方法に関する新しい規格 ASTM WK74694

はじめてのFRP – FRPの 補修 工程の必要性と注意点

 

How Materials and Design Enable Future Transportation

複合材料が自動の乗り物(恐らく主には自動運転の自動車やUAM等)の新たな設計的発展に貢献できること、
それが結果的にどのように乗り物の概念と未来を変えるのか、
というのが発表の概要のようです。

この手の話があまりうまくつながっていかないであろうことは、
恐らく多くの方にとっても共通の認識になっているのではないでしょうか。

様々な乗り物において求められる性能はモータ、バッテリー、センサ、制御ソフトや基盤等で、
構造部材に対してお金と時間をかけようという流れはかなりの少数派だと感じています。
唯一あるとすれば「安いこと」だけでしょうか。

UAM等は長く使う想定になると感じますが、
多くの自動車は基本的に最長10年程度の使い切りが前提にあり、
修理しながら長く使うというのが一般的ではないことがその背景にあると思います。

さらに、FRPの場合は異方性があるためその設計スキルは他の材料と異なる部分も多く、
それを学んでまでやるという技術的スキルを高める負担も、
複合材料を構造部材として活用しようということに対して後ろ向きな考えを助長しているかもしれません。

乗り物への複合材料適用を議論するにあたっては、
やはり構造部材ではなく機能材料としての観点が不可欠でしょう。

強い、軽いに+αの部分を見出すことができるのかというのが機能材設計のポイントです。
特定の業界にこだわらない広く高い視点が不可避なのは言うまでもありません。

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The Journey of NASA Technology to Commercial Viability

NASAの技術者が、NASAの技術を紹介して産業展開できないかをすり合わせる、
というものになります。

宇宙産業関連技術はその展開先が限られるため、
宝の持ち腐れのような形になることも多い。

特殊な業界故に技術者の自己満足とも揶揄されることもある宇宙関連技術ですが、
技術的観点だけで見るとその本質をついているものもあります。

ただし、そのような本質を見抜くには技術情報を受け取った側の技術力と視点の高さが求められるため、
なかなか難しいかもしれません。

上記のようにNASAの技術者が説明するということは、
情報を受け取る側と与える側のギャップを低減するという狙いがあるかもしれません。

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Ceramic Composites Manufacturing Routes

複合材料の中で抜群の耐熱性を誇る Ceramics Matrix Composites (CMC)。

ご存知の通りFRPのマトリックスは樹脂、つまり高分子/Polymerです。
その一方で同じ複合材料でもCMCのマトリックスはセラミックです。

このCMCの製造方法について、

reactive melt infiltration
sintering of slurry-infiltrated prepreg
PIP (polymer infiltration and pyrolysis)

という3つの手法が紹介されるようです。

reactive melt infiltrationというのは、
強化繊維であるSiC繊維に加え、SiC粒子とCを含有する板材に溶融させたSiを含浸させる、
というCMC製造方法のようです。

PIPは強化繊維であるSiC繊維に樹脂を含浸させてシート状にして積層後、
高温に暴露して樹脂を熱分解させて生じた空隙に溶融シリコーンを含浸させるという技術と考えます。

恐らく以下のような動画のイメージのものと考えます。

How the CMC process works

sintering of slurry-infiltrated prepregというのはよくわかりませんが、
スラリー状のマトリックス(Si)が含浸された中間材料を、
熱をかけてCMCにするものと推測します。

このようなCMC製造方法を紹介し、
それぞれの課題や限界、コストパフォーマンス、
適したアプリケーション等を紹介の上、
新規または代替のプロセスについても議論するようです。

CMCは抜群の耐熱性を誇る複合材料で、
FRPとは全く別世界の熱環境で用いられるものです。

車や航空機などのエンジン部品に適用され、
過酷な熱環境もしくはその環境で高回転するといったアプリケーションがその事例となります。

CMCは繊維製造に加え、その含浸が大変難しいことが知られており、
また強化繊維が入っているため最終破壊のリスクは低減される一方、
セラミックがマトリックスであるため「脆い」という事実とは常に向き合わなくてはいけません。

同じ複合材料ではありますが、
CMCを適用する製品設計には後述するように破壊力学を主とする等、
FRPとはまた異なる要件を設定の上、
材料の強みが生かされるような技術的検討が不可欠であると考えます。

・関連コラム

DLR が MultiMech を用いた CMC の亀裂進展予想技術を開発推進

GE aviation が CMC 向け SiC 製造工場設立

高耐熱複合材料の CMC ( Ceramics Matrix Composites )

 

 

conference program から見る業界動向

キーワードでいうと、

「持続可能な環境への取り組み、インフラ、超耐熱」

という3つではないかという印象です。

SDG’sの中には持続可能な環境に関する文言も多く、
その流れに複合材用としても何かできることは無いかという模索が続いている、
そしてそれが求められていることを感じます。

既に述べた通り、
今できる小さなことを着実に積み重ねるという後戻りしない一歩一歩こそが求められていくと思います。

インフラについては構造部材を長く使うというコンセプトを前面に出すことで、
目先のコストではなくトータルとしての製品寿命という観点で物事をみる流れが出てきた、
ということが大きいと思います。

FRPを中心とした複合材料の新たな良さが見出され、
法規という技術と無関係な障害を超えてインフラの世界でより一般的になっていくかもしれません。

超耐熱については、複合材料の適用範囲を広げようと考えるにあたり不可避な方向性です。

複合材料の中で抜群の耐熱性を誇るCMCがその主役ですが、
作り方ひとつを見ても同じ複合材料のFRPとは全くの別物で、
身近なものになるのは大分先になるかと思います。

そしてCMCの破壊形態の主たるものは脆性破壊となることから、
CMCの破壊現象を解明しようという破壊力学を基本とした検討が進むでしょう。

構造設計は材料力学を基本にしながら、破壊力学が主役となる可能性もありそうです。

世界が変わると求められる技術的スキルも変化するという認識が必要です。

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