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損傷検知をサポートするセンシング機能を有する繊維を用いた 宇宙服 Vol.146

2020-05-04

損傷検知をサポートするセンシング機能を有する繊維を用いた 宇宙服

(The image above was referred from https://wallpapercave.com/astronaut-spacesuit-wallpapers)

今日のコラムでは、損傷検知をサポートする 宇宙服 ということについて述べてみたいと思います。

 

機能材としてのニーズの高まるセンシング

FRP製品の付加価値向上と適用動機を高めるため、
ニーズの高まる「 センシング 」。

過去のコラムでもいくつか該当するものをご紹介しています。

熱硬化系材料の工程妥当性の検証に必須ともいえる内部温度を、
合金が示すバルクハウゼン効果を応用して計測するという技術を紹介したことがあります。

※ 接着補修やFRP硬化・加熱時の 内部温度 計測に対する新しいセンシング

また歴史がある程度ある光ファイバセンシングについては、
多点型と分布型があり、ひずみや温度の位置まで把握するには分布型を適用する必要がある、
といった事を以下のコラムで述べたことがあります。

※ FRPにも適用できる光ファイバ センシング の最新研究動向

圧電性のあるポリ乳酸を応用したものについても、
以下の所でご紹介しました。

※ 炭素繊維やポリ乳酸繊維を用いた 圧電ファブリック

最近では CNT wire を応用したひずみや温度センシングについて、
その可能性を JEC Group に寄稿しました。

※ Conductive CNT wire and CNT sensor open potential for new composite functionality
http://www.jeccomposites.com/knowledge/international-composites-news/conductive-cnt-wire-and-cnt-sensor-open-potential-new

今回紹介するのは、アラミド繊維に導電性のある繊維を一体化させ、
損傷が発生した際の電気抵抗の変化等により、
宇宙服の状況変化を知らせるというのがその大枠のようです。

 

損傷を検知する 宇宙服 の概要

早速中身を見ていきたいと思います。

リリース記事は以下の所で見ることができます。

Title: Innovative Spacesuit Prototype Uses Composites to Help Detect Damage

http://compositesmanufacturingmagazine.com/2020/04/innovative-spacesuit-prototype-uses-composites-to-help-detect-damage/

このプロジェクトを統括しているのは

International Lunar Exploration Working Group (ILEWG)

です。

以下のHPで概要を見ることができます。

https://moonbasealliance.com/

大枠としては、地球外惑星への人類の居住を目指すにあたり、
まずは月をターゲットに、産官学の英知を集結させ、
その実現(人類の月での居住)を目指す、
アメリカ合衆国の組織といったイメージです。

この組織の原点にあるのは冷戦時代のアメリカの宇宙戦略で、
本部がハワイにあるのは、地球外惑星の地殻成分と活火山であるハワイの地殻成分が類似している、
というのがその背景にあるようです。

歩みについては以下の所で見ることができます。

https://moonbasealliance.com/history

今回の宇宙服のセンシングの最重要機能は、

「損傷が起こった時に宇宙服を着ている宇宙飛行士に知らせることで、空気の漏れを防止する」

ということです。

宇宙空間では小さい石などが秒速17kmというものすごいスピードで飛び交っており、
これは一般的な弾丸よりも早いようです。

そのため、宇宙服が損傷する可能性もあることから、
センシングという考えが重要との判断になったようです。

 

用いられているのはアラミド繊維

センシングをつかさどる導電性ワイヤと組み合わせるのはアラミド繊維で、
Teijin の Twaron (R) とのこと。

そのため、上記の記事に関連する内容については、Teijin のHPにも掲載されています。

https://www.teijinaramid.com/en/new-partnership-to-develop-an-innovative-spacesuit-layer-provided-with-twaron/

こちらの記事を読むと、
非常に細いフィラメント製品を有することが、
今回のセンサーと同化させるのに一役買ったと書かれています。

Twaron(R) Ultra Micro というその繊維は、
宇宙飛行士の快適性向上にも役立っているとのことです。

損傷については導電性の変化、
より具体的には導電性の低下によって損傷を検知するとのことですので、
通常は通電させており、それが損傷等によって破断すると電気抵抗が増加する、
という事象で損傷を検知するようです。

また損傷位置を特定できると書かれていることから、
複数の電気回路を使っていると想像します。
(抵抗が変化した回路がどれなのかがわかれば、損傷を受けた領域がわかるため)

尚、アラミド繊維を組み合わせるのは防弾チョッキにも用いられる

「防弾性」

がその動機にあることは明らかといえるでしょう。

 

宇宙空間で必要な技術の方向性

個人的には大変興味深い内容なのですが、
難しい部分もありそうです。

個人的には動力源が限られる宇宙空間では、
いかにして電気を用いずに事故を防止できるか、
というのが重要だと考えています。

例えばですが、
万が一宇宙服に損傷が生じた場合、
センシングで伝えるというよりも、
損傷を起こした場所に対して内面にあるエラストマーが差圧で膨れて、
緊急的にパッチ(シーリング)をするような仕組みの方が重要かなと感じています。

もちろんセンシングは重要ではありますが、
電気回路最大の欠点は短絡する、電力供給が切れる、
対外的な影響(宇宙で言えば太陽風などのプラズマ風)による故障など、
リスクが高いと考えます。

当然ながらこの手の対策はした上でのセンシング、という話だとは思いますが、
できる限りシステムをシンプルにして本質に着眼する、
というのが今の技術全体に求められる姿勢ではないかというのが、
私の考えです。

 

 

地球外で人が住めるようになるというコンセプトは、
個人的に興味を持っています。

これは、地球という惑星を外から見ることで、
地球の偉大さ、ありがたさ等を俯瞰して見えると考えているからです。

閉塞感漂う昨今、最も求めらている視点の一つといえるかもしれません。

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