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はじめてのFRP – FRPの 補修 工程の必要性と注意点

2015-02-14

今日は強化繊維が炭素繊維である CFRP (carbon reinforced plastics) を中心に、その 補修 工程とその注意点についてご紹介します。

 


CFRPに限らず、FRPというのはニアネット、つまり金型などで成形して脱型したものはそれほど精度や外観がよくありません。


精度不足に対する対応としては、大きめに成形してトリム(バリをとる)する、
機械加工を仕上げとして行う、といった二次加工を行います。

また、強化繊維の方向に由来する異方性も強いため、
積層構成を疑似等方にするなど気を遣ったとしてもひずみが出やすいのが普通です。


外観の問題については、樹脂が流れきらない材料のショート、繊維が充填できていない樹脂リッチ、
熱硬化性樹脂をマトリックスとしたFRPで出現するスターブ(表層の凹凸)、
熱可塑性樹脂をマトリックスとしたFRPで出現する表層への樹脂含浸不足、
複雑形状でよく見られるピット(穴)などが起こります。


このような状況のため、FRPを用いた製品の製造工程においては「補修工程」を検討しておくことが重要です。

 

まず、寸法精度不足についてはより大きくできてしまったものについては「削る」ということにより補修するのが一般的です。

その一方で、小さくできてしまったものについて樹脂などで肉盛りすることはその持った部分の強度発現が難しいためあまりおこなわれません。

つまり、設計の段階でどちらかというと少し大きめに作る(バリなどを出す)という設計思想を持っておくことが重要です。

 

外観問題についてですが、樹脂リッチについてはそうなりやすい場所に型のパーティングラインを持ってくることで、樹脂リッチエリアを可能な限りキャビティの外側になるよう材料を流すという思想が効果的です。
こうすることで、樹脂リッチエリアをバリの除去という後工程で取り除くことができます。


表層の凹凸や樹脂含浸不足、小さなピットの補修については使われているFRPのマトリックス樹脂に相当する耐熱性を有する樹脂を塗ることなどが行われます。
この補修用の樹脂についてはFRPとの接着性も当然ながら考慮しなくてはいけません。

FRPとの接着性を上げるために、補修前工程として表層を軽く研磨することも多いです。


外観補修は強度の主体である強化繊維が含まれませんので、欠陥が強度的な問題につながらないということを事前検証します。

 

 

この補修工程を検討するにあたり重要なのは以下の点です。


1.補修工程については可能な限り細かく指示をする

あいまいな指示は現場のオペレーターへの誤解につながることが多々あります。
具体的かつ明確に指示書を作成してください。

 


2.補修が可能である領域を明確化する

補修をしていい所については境界含めて明確にしてください。
可能な限り図示することをお勧めします。
これによって、補修を許可されている以外の箇所を補修されるということを防ぎます。

 


3.工程を行う人間に関する資格を作る

FRPの補修というのはある程度の技術が求められるため、
可能であれば作業できる人間を制限することをお勧めします。

特に海外で補修を行う時はこの考えは必須です。

 

 

そして、最後に注意点を述べたいと思います。


FRPのなかで最も多く市場に出回っているものの一つであるCFRP。


CFRPの強化繊維は炭素繊維です。

 

先日の記事でもご紹介しましたが、炭素繊維は導電性があります。
 


このためCFRPの場合、上記の補修を行った後にむき出しになった炭素繊維を絶縁体である樹脂などでシーリングするという工程を行わないと、CFRPと金属を組み合わせて使う場合、導電性のある炭素繊維と金属が接触することによる「電食」が発生します。


これは、金属側の強度を低下させる大きな問題につながる可能性があるため、
補修工程では必ず炭素繊維の研磨粉の除去を行う洗浄とむき出しの炭素繊維を絶縁するための樹脂によるシーリングを行うようにしてください。

 

 


補修工程なしにはなかなかFRP製品の歩留まりあを上げることは難しいと思います。

FRP製の製品製造をご検討の場合、補修工程の導入を検討するのも一つの選択肢です。

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