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2021年のFRP業界最新ニュースの振り返り

2022-01-10

今回は、2021年のFRP業界最新ニュースの振り返りとして、昨年発行したメルマガを抜粋して概要を述べてみたいと思います。

各項目名をクリックすると該当するページに移動しますので、合わせてご覧いただければと思います。

 

The Museum of the Future の被覆材に用いられた難燃性熱硬化FRP

ドバイにある博物館の外壁にFRPが用いられたという事例として紹介しました。

FRPの特性のうち、

「成形形状の自由度が高い」

という所に着眼したのがポイントとなります。

ガラス繊維を強化繊維とNotus EPFR-609難燃性樹脂フィルムである NE11FR film と組み合せ、
建築物の表層材料燃焼評価規格であるASTM E84で Class A を達成しています。

熱硬化性樹脂でこの難燃性を達成しているのは、技術的にも注目に値します。

また破壊力学の観点から、応力拡大係数 K1cで約2.0MPa√mを示すなど、
熱硬化性高分子をマトリックス樹脂としていることを想定すれば高い靭性を有していると考えます。

このような建築物へのFRP適用は中東を中心広がり、
様々な形状の建築物の具現化に貢献していくものと考えます。

 

 

ガラス繊維のマテリアルリサイクル工場が稼働開始

FRP材料の中では近い将来最も多い廃棄物が出ると予想されるGFRP。

ガラス繊維を強化繊維とするこの材料のリサイクルに対し、Johns Manville が

「使用済みのGFRPからガラス繊維を再生させる」

という驚きのコンセプトでGFRPのマテリアルリサイクルに新たな可能性を示しました。

粉末状まで細かく粉砕したGFRPを、溶融紡糸工程にいれて新たなガラス繊維として再生させるのです。

リサイクル能力も1時間あたり3トン程度あり、
今後、このような技術がFRP産業の維持と発展に大きく貢献するかもしれません。

 

 

X線によるリアルタイムFRP製品検査

超音波探傷がFRP成形体に対する非破壊検査技術の主軸であるのが現状ですが、
情報処理技術の向上の恩恵も受け、検査の高速化と低コスト化が進んでいるのがX線CTです。

超音波探傷は最終的には A-scan によるきずの反射を検証しながら、
このきずの輪郭を調査するという地道な作業が必要ですが、
X線CTは密度差によるコントラストによってすぐに内部欠陥を画像化できる上、
必要に応じて透過断面を積層して実際の三次元形状物に再構成できる等、
その高い内部欠陥検知精度とも相まって、メリットの多い検査技術といえます。

Air Force Research Laboratory (AFRL)はFRP成形体のリアルタイムの検査を実現することを目指し、
phase contrast imaging と micro-beam scanning という複数の技術を組み合わせた、
複合技術型のX線CTの非破壊検査システムを構築しました。この検査システムでは、

・製造中のFRP積層時のリアルタイム検査

・積層後の全体検査

というように検査対象を分割しています。

積層時の検査では高精度よりもリアルタイム検査実現を優先することでシンプルにし、
FRP成形体の検査では、その検査精度を上げることにより、
検査システム全体としてのバランス成立を目指したのが特徴です。

FRP成形の内部欠陥の原因の多くは積層時にある。

このコンセプトをよく理解しているのが伝わってくる非破壊検査のシステムだと思います。

 

 

高速加工を実現するFRPディスクミリングカッター

加工するツールとしてFRPを用いる、という興味深いアプローチです。

CompoTech はディスクミリングカッターのうち、ディスク部分をCFRP製に変更し、

「軽量化による加工速度の向上」

を狙っています。

結果的に減衰効果も得られ、加工精度も向上するようです。

これはFRPが複合材料である故、異種材間の境界面が多く存在するため、
応力伝達時に振動が熱エネルギーとして発散しやすいという特性をうまく活用していると感じます。

このようにFRPは機能性をきちんと評価されれば、
加工される側ではなく、加工する側として今まで以上に使われていくのかもしれません。

 

 

CFRPが適用された アコースティックギター LAVA ME PRO

以前、FRP製のピアノをご紹介したこともありますが、こちらはアコースティックギターです。
当然ながら従来から評価されている音響効果に加え、
LAVA ME PROでは polyhydroxybutyrate (PHB)という微生物が生み出す材料を、
マトリックス樹脂として採用しています。

今は芸術の世界でも地球環境を意識したコンセプトを入れることが不可欠になっている、
ということを改めて感じることができるニュースです。

 

 

アコースティックエミッションを TypeIV の高圧タンク品質管理に採用

FRPは最終破壊する前の段階で、部分損傷に伴う微小な振動を発生する。

これはFRPの破壊事前検知の考え方としてよく知られているものの一つです。
この事象を聴診器の要領で捉えようというのがアコースティックエミッション(AE)と呼ばれるものです。

Hexagon Digital Wave はその構造部材の多くがFRPである Type IV の高圧タンクについて、
AEを用いた品質管理を行うと発表しました。

高圧タンクを上げ下ろしせずに装着したままで検査が可能であるため、
日常的な品質管理に便利、と述べられていることからも、
燃料電池車や船舶のような移動する物を想定しているのかもしれません。

検査では複数段階に分けて強制的に内圧を高め、
最終破壊を示唆するような振動発生事象(イベント)が発生するかをみる、
というのが一案です。

メルマガではその検査の状況を見ることができる動画も紹介しています。

このようなセンシングを応用した品質管理は、
電子的な情報ネットワークが今以上に社会インフラとして浸透することで、
より一般的になっていくものと考えます。

 

 

溶接を可能にするガラス繊維とCrNi Steel繊維を組み合わせたFAUSST

FRPにおける異種材接合というと、接着剤か融着が一般的です。

ここにより信頼性の高い金属間の「溶接」という概念を取り入れようという取り組みです。

ドイツのベンチャー企業である HYCONNECT は、
ガラス繊維と CrNi Steel繊維を組み合わせた FAUSST という材料をリリースしたことをご紹介しました。

この技術があれば、マトリックス樹脂を含浸させる前段階の強化繊維単体の状態で、
金属との溶接を行うことが可能となり、金属と一体化した強化繊維に樹脂を含浸させることで、
FRP化するという流れとなります。

これも元々ステンレスありきでしか認証が得られなかった船舶業界で、
MSC/Circ. 1002というものが発行された際、初めて代替材の適用が認められたという、
業界の動きも影響しているのを見逃していけません。

 

 

大気圧プラズマによるFRPの表面処理

ガラス繊維とCrNiの繊維を使って溶接するという話を上記でご紹介しましたが、
やはり異種材接合において接着はFRPでは不可欠な技術です。

この接着前(溶接前にも効果があるとされています)の表面処理として大気圧プラズマをつかうというのが、
ご紹介した内容となります。

Fraunhofer Institute のIFAM の技術を応用し、 Plasmatreat GmbH が事業として展開しています。

アプリケーションによって異なりますが、
一例として有機ケイ素を含有したプラズマを照射することで、
濡れ性や長期接合強度向上に効果があると述べられています。

このプラズマ照射の対象はFRPとなっています。

ただメルマガでも書きましたが、
一般的にはFRPよりも金属側の表面状態が異種材接合に影響を与えることが知られており、
私自身の経験でもそれは裏付けられています。

ここを理解した上で、表面処理技術とその適用法を検討することがポイントとなっていくと考えます。

 

 

射出成形シミュレーションソフト Moldex3D をRTM向けに適用

射出成形時の樹脂流れのシミュレーションで実績のある Moldex3D 。

この企業が、FRPの繊維基材のつっぱりやしわに加え、樹脂の流れの予測を得意とする Aniform と協業し、
RTM(Resin Transfer Molding)、つまり樹脂を後から含侵させるFRP成形方法の、
シミュレーション精度を上げるという取り組みです。

ポイントは、

「Aniformで予測された3D形状賦形による繊維配向の変化に関するデータを Moldex3D にインポートする」

というところでしょう。

強化繊維による樹脂流れや重力の影響など、
実際の成形予測には課題があるものと予想されますが、
強みを持つ企業がお互いの技術を組み合わせていこう、
という取り組みが興味深いと感じます。

FRP成形に関するシミュレーションは金型設計の事前検証という観点からも重要なツールと位置づけられており、
これからますます発展していくのではないか、と期待される領域の一つです。

 

 

柔軟性のあるラミネートFRPとして接着剤不要の ALUULA Vaepor

FRPというと剛直な構造部材である。

そんな固定概念を持たないようにしていただくために取り上げたニュースでした。

ラミネートは強化繊維をマトリックス樹脂であるフィルムでサンドイッチするなどして製作するため、
柔軟性がある上に丈夫で、マリンスポーツの帆などにも使われます。

当然ながら軽くて強く、摩耗しないということが求められます。

ALUULA Vaepor は競合である Dyneema、Dacron、Penta TXと比較し、
目付が小さい(使用している繊維が少なく、薄手)にもかかわらず破断荷重が高いのが特徴です。

更に兄弟製品である ALUULA Durlyte という耐摩耗性を高めた製品では、
Dacron、Cordura 1000D、X-PAC VX42といった高目付(厚手)の材料と比較し、
極めて高い耐摩耗寿命を示しています。

 

 

いかがでしたでしょうか。

一昨年はグリーンエネルギー、リサイクル、感染症対応といった内容を取り上げ、
昨年は、リサイクルは共通するものの、センシング、表面処理、シミュレーション、検査、
新規繊維製品等、より幅広く、また新しい技術や製品をご紹介しました。

今、FRP業界は一定期間で繰り返されるブームの谷間のあたりを行ったり来たりしている状況にあります。

しかし、実際にニーズや適用例が無いかというとそういうわけではなく、
FRPが主役というよりも、アプリケーションを主役としてみた場合に、
FRPがその引き立て役として適切であると判断された場合に当該材料が選ばれていると感じます。

COVID-19によって変わった新しい時代において、
FRPが活躍できる事に貢献できるよう、
技術という軸で引き続き様々な企業の支援をしていきたいと思います。

 

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