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X線によるリアルタイムFRP製品検査 Vol.169

2021-03-22

FRPの非破壊検査手法の一つとして様々な検討が継続されるX線。

その中でも最も一般的なアプローチはやはりX線CTだと思います。

X線CTは被検査体に関する様々な角度におけるX線透過画像を連続的に撮影し、
それをアルゴリズムによって三次元形状として立体画像化します。

密度差による透過性の違いでコントラストをつけることで、
上記で三次元化された画像中の任意の断面における内部欠陥や異物を検知します。

また、当該検査技術の進歩によりFRPの繊維配向も画像化することも最近は珍しいことではなくなりました。

この辺りは以下のコラムでも述べたことがあります。

※ X線CT を用いたFRPの機械特性予想と損傷検知
※ はじめてのFRP- 非破壊検査 1

 

また一般的なX線CTは被検査体を回転させることが一般的であるため、
寸法制限ある遮蔽室のサイズでは例えば長尺の平板等は検査しにくいという限界があるため、
Computed Laminography ( CL )という検査手法も検討されています。

※ Computed Laminography (CL)によるFRPの非破壊検査

このような中、アメリカにある Air Force Research Laboratory (AFRL)という研究所が、

「リアルタイムで製造中のFRP製品の欠陥を検知する」

というX線検査技術のコンセプトを構築したというニュースがでました。

以下のページで概要を見ることができます。

※ AFRL partners with Cornell to use micro-beam scanning technology

ここでいうFRP製品は無人航空機などに使われる部品で、
主に3Dプリンタで積層された製品の事を想定していると書かれています。

 

 

今回のリリースの技術的なポイント

今回リリースされた内容で注目すべき点は、

・phase contrast imaging と micro-beam scanning の技術

ということに尽きるでしょう。

どちらも Cornell High Energy Synchrotron Source (CHESS) というコーネル大学の研究組織が技術開発に一役買っているようです。
以下のページに関連する情報が記載されています。

※ Focusing on microbeam: Initial installment of CRLs at CHESS

残念ながら phase contrast imaging (位相コントラスト画像)については詳細がほとんど述べられてはいません。
当該技術はX線の屈折現象による濃度差で画像化するもので、
以下のようなページに概要が書かれています。

※ 位相コントラスト技術

micro-beam scanning についてはいくつか要点が述べられています。

ここを軸に見ていきたいと思います。

 

まず理解すべきなのは

「極めて狭い範囲において詳細を観察しようとしている」

ということです。

2種類のX線を用いているようで、
1つは製造中のFRP積層時のリアルタイム検査、
もう一つは積層後の全体検査になるようです。

検査対象としているのは3Dプリンタで作られる製品をイメージしていることから、
前者は積層直前と直後の検査をリアルタイムで行うことになると思います。

 

後者については、直径1から5μ程度のマイクロX線を使っていると述べられています。
こちらはFRP積層体全体を検査するため、X線画像取得と再計算は2、3時間かかるものの(被検査体サイズは不明)、
前者で計測したリアルタイムの詳細結果をマッピングするということに技術的な要素があるとのこと。

これにより、

・リアルタイムで積層時に問題が無かったかをモニタリングできる

・検査後は全体のマッピングと内部欠陥や積層配向に問題が生じた箇所をナノスケールの高解像度で検証できる

という極めて高レベルでバランスを実現した検査技術である、と述べられています。

 

このニュースから考えるべきことは何でしょうか。

 

 

複数の検査技術を組み合わせ、役割分担をさせている

昨今の情報処理媒体の高速化により、大容量の画像データを高速で処理することが可能になったというのは大きいでしょう。

参考までに5から10年ほど前に同じことをやろうとすると、
今は数時間の検査終了までの作業が、6カ月はかかるだろうと述べられています。

もちろんサイズが不明である上に、何を対象としているのかはわかりませんが、
この表現は私も大げさではないと感じています。

本基本的な技術の底上げに加え、今回の検査技術のポイントは、

「役割を明確化し、分けている」

ということです。

3Dプリンタで積層するにおいて重要なのは、

「積層の直前直後で問題が無いかを迅速に把握する」

ということです。

FRPはハンドレイアップの時代から原理原則は変わらず、
内部欠陥の主原因である「空隙」を抱き込むのは、

「FRP材料を積層するとき」

です。

そのため、この積層時に生じる欠陥をリアルタイムで見る、
ということは積層時の異常有無をモニタリングすることにつながり、
特に3Dプリンタのように無人で断続的に工程が進む場合、
必要に応じた積層のやり直しを早い段階で判断するといったことにも活用できます。

ここはできる限りスピーディーにかつリアルタイムで検査する、
というのは妥当な考え方です。

恐らく後述する全体検査よりも解像度や視野の範囲を限定的とし、
画像取得のスピードを最優先にしているかと思います。

そしてかなりの高エネルギーのタイプを使っていることから、
検査中は遮蔽室に一切人は入れないとも書かれています。
(個人的には強いX線によりマトリックス樹脂である高分子が損傷を受けることを懸念してしまいますが….)

もう一点はマッピングです。

積層が終わった後に、さらに詳細を検査するということをある程度時間をかけ、
また欠陥として検知されるものの位置をマッピングするという、
X線の最も得意とするアウトプットの一つである三次元での欠陥位置を見える化する、
ということを後追いで行います。

恐らく、全体マッピングでは積層時のリアルタイム検査よりも詳細のX線画像取得を行っており、
それ故、マッピングに時間がかかるものと考えます。

 

いかがでしたでしょうか。

一般的には検査はできる限り一括で終わらせたいというのがコンセプトになりがちです。

しかし得意不得意、または目的によって装置の仕様を変え、
全体のシステムとして必要な情報を取得するという設計コンセプトは、
様々なとがった技術が求められる昨今、不可避の流れなのかもしれません。

また、上記の研究開発プロジェクトは COVID-19 の影響を踏まえ、
各研究者や技術者がオンラインでの打ち合わせや、
プログラム言語 python で書かれたソフトを使いながら、
遠隔で検査パラメータの設定やデータ取得を進めたと書かれており、
人が集まることが困難なこれからの時代に即した取り組みの方法とも言えます。

 

ご参考になれば幸いです。

 

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