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高速加工を実現するFRPディスクミリングカッター Vol.171

2021-04-19

チェコのCompoTechという会社が、
ディスクミリングカッターのディスク部分をCFRP製に変更し、
軽量化によるディスク枚数の増加とビビリの減少により、
高精度かつ高速加工が実現になったとのことです。

以下に、CompoTechのFRPディスクミリングカッターに関するリリース記事が出ています。

この記事は JEC Composite Magazine #139 にも掲載されていました。

同じ内容の記事は Composite World にも掲載されています。

Title: Hybrid metal composite four-disc milling cutter reduces machining times by 78%
https://www.compositesworld.com/products/hybrid-metal-composite-four-disc-milling-cutter-reduces-machining-times-by-78

 

ディスクミリングカッター とは

ディスクミリングカッター のイメージを持つには、
以下の動画がわかりやすいです。

ディスク形状の加工刃物を高速回転させ、
加工刃物の側面を用いて加工しているのがわかるかと思います。

当然ながら加工刃物が厚い方が、加工量が多くなります。

一方で加工刃物が薄い方が細かい加工が可能となります。

今回 CompoTech がリリースしたディスクミリングカッターは、
比較的厚いものであることが画像からわかります。

尚、このディスクミリングカッターの刃物や、当該カッター全体の仕様は HOFMEISTER という会社が対応しているとのことです。
HOFMEISTER は加工刃物だけでなく、各種治具やフィルタリングシステムなど様々な製品の製造販売をしています。

https://hofmeister.cz/en/

 

 

FRPを採用したディスクミリングカッターのメリット

ディスクミリングカッターのディスク材にCFRPを適用することで加工速度と加工精度の向上が実現できる

(Image by CompoTech

CompoTech はディスクミリングカッターのうち、ディスク部分をCFRP製に変更しています。

これによって得られる最大のメリットは、

「軽量化による加工速度の向上」

でしょう。

具体的にはディスクミリングカッター一枚当たりの重量を、
全金属製からディスクをCFRPに変更することで、

7.93kg→4.06kg

と約半分に削減することに成功しています。

これにより、加工機に取り付けられるディスクミリングカッターの枚数が増加することで、
加工能力の大幅な改善が望めるというのが、加工効率向上の基本となっているようです。

加工刃物の写真を見ると、4枚のディスクミリングカッターが串刺しになっている様子が見えます。

比較に用いている金属製のディスクミリングカッターの枚数が2枚であるのに対し、
同FRPとのハイブリットのカッターでは4枚となっていることから、

・切削速度 Vc :120 m/min→180 m/min (50%向上)

・テーブル送り Vf : 260 mm/min→400 mm/min (54%向上)

ということが可能となるようです。

 

もう一つが

「減衰による精度向上」

と書かれています。

 

使用している炭素繊維が Ultra-High Modulus Carbon Fibers とのことですので、
恐らく高弾性のピッチ系炭素繊維と想像します。

ピッチ系炭素繊維は減衰率が高いことが有名であることから、
今回のようなアプリケーションには最適と判断されたかと思います。

減衰特性が高いため、加工時の「ビビリ」が少なく、
高精度の加工が可能のようです。

尚、投資金額は金属製のそれと比較し5倍くらいとのことですが、
3カ月くらいで投資は回収できるだろうと書かれています(細かい算出方法については不明)。

 

今回のリリースを踏まえ考えるべきことについて概要を述べます。

 

 

定量的な技術評価数値が不十分

例えば減衰特性や加工精度(加工品質)については、

「全金属製のものより、FRP製ディスクを使用した方が良い」

と書かれているものの、具体的にどのくらい優れているのかがわかりません。

 

減衰特性であれば半値幅法等で減衰特性を数値化すべきですし、
加工精度は形状測定による偏差の算出、
品質でいえば加工面のプロファイル(輪郭度)や表面粗さ等、
数値にして評価できる内容になります。

ここは数値としてきちんと述べた方が、
より説得力が増すかと思います。

 

 

最終的は刃物の廃棄をどうするか

耐久性もFRPをディスクとして用いることで5倍くらいに伸びると書かれているものの、
最終的に加工刃物は廃棄となります。

金属であれば様々な改修方法がありますが、
FRPと一体化してしまうと廃棄の前に徹底した分別が不可欠となります。

この辺りの道筋をつけることもこの手の製品には求められる考え方でしょう。

 

 

いかがでしたでしょうか。

後半はいくつか課題も述べましたが、
ピッチ系炭素繊維を用いた加工刃物というのは大変興味深いアプローチであり、
コンセプトも優れていると感じます。

FRPの特性を活かしながら、
今の製品に無い性能を出現させる、または性能をより改善するという、
複合材料のコンセプトである観点を忘れずに取り組んでいるところが良いと思います。

 

FRPのアプリケーションの一案として知っておいていただきたい内容といえます。

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