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CFRPが適用された アコースティックギター LAVA ME PRO Vol.173

2021-05-17

FRPは構造部材という印象が強いかもしれませんが、
複合材故、振動応答や音響透過等に様々な特徴が出ます。

過去にはそのような特性を活かし、
音響装置やピアノにFRPが使われている事例をご紹介したことがあります。

※ CFRPを用いた電子ピアノ EXXEO

※ ASKJA Audio が 3D プリンティングで作製した音響機器を発表

今回は、CFRPが適用された楽器の一例として LAVA ME PRO というアコースティックギターを紹介し、
そのポイントを見ていきたいと思います。

 

 

LAVA ME PRO とは

LAVA ME PRO はFRPの特性をうまく活用しようというコンセプトが強い

The image above was referred from https://www.lavamusic.com/jp/lava_pro

以下のサイトがシンプルに書かれていてわかりやすいですね。

https://www.okada-web.com/lava-music/lava-me-pro

FRP以外のポイントとしては、
プリアンプシステムがすごいですね。
おそらく、このアンプシステムがこのギターの一番の売りといえるかもしれません。

通常はエフェクター等の外付けのアンプを使って様々な音を出しますが、
LAVA ME PRO では高性能なアンプが初めからついているのです。

どのような音のバリエーションがあるのかについては、
以下の動画を見ると良いかもしれません。

製品の仕様概要は以下のように書かれています。

トップ板 :  AirCarbon カーボンファイバー
ボディ材 :  AirSonic カーボンファイバー
指板 : HPL(High Pressure Laminate)
エレクトロニクス(プリアンプ、ビルトインエフェクト、ピエゾピックアップ、エアーマイク) : L2 PRO

また、本製品のカタログは以下のページで見ることができます。

https://www.okada-web.com/wordpress/wp-content/uploads/2020/09/LAVA_catalog.pdf

 

以下、FRPに関するポイントを見ていきたいと思います。

 

 

AirCarbon は carbon-negative であることがポイント

ここは技術的というよりも、コンセプト的に面白いですね。

AirCarbon については NEWLIGHT TECHNOLOGIES, INC. のHPにその概要が書かれています。

carbon-negative がポイントとのことですが、要は、

「AirCarbon は生分解材料であり、作られてから最終的に分解されるまでの温室効果ガス総排出量はマイナスになる」

ということです。

微生物が温室効果ガス(恐らく主に二酸化炭素などの酸化炭素の事を指すと考えます)を原料として、
PHBという物質を作り、これが AirCarbon の原料のようです。

PHBは恐らく polyhydroxybutyrate の略で、ポリヒドロキシ酪酸だと思います。構造式は以下のようになります。

PHBは polyhydroxybutyrate の略で、ポリヒドロキシ酪酸 である。

The image above was drawn by FRP Consultant

当然ながらFRPのマトリックス樹脂として溶融、成形するにはエネルギーが必要である一方、
微生物によって生分解するときに温室効果ガスを燃料として消費するので、
上述した carbon-negative であるという話になります。

AirCarbon に関する技術的なデータはほとんど述べられていませんが、

「軽量に加え、高剛性であるということがポイントとなり、ダイナミックな音が出る」

という定性的ではありますが、特性の説明がされています。

 

 

外的環境の影響を最小化する AirSonic

もう一つポイントとして述べられているのが、

「-20から80℃の幅広い環境で安定的に演奏できる」

ということです。

情報元によっては-25から95℃とも書かれています。

低温側はともかく、高温側は演奏者の生命に関わるような温度帯ですが、
どのような温度環境でも安定した演奏が可能であるということが言いたいようです。

これを可能にしているのが AirSonic というものだとのこと。

こちらについても情報があまりないのですが、
AirSonic については動画が存在し、概要を見ることができます。

短繊維化された炭素繊維を、ペレット状にした材料のようですね。

上記で紹介したカタログ上では、p.10に

「AirSonicカーボンファイバーは、粘弾性率でブラジリアンローズウッドよりも20%から40%上回り、気象条件の影響も受けない」

とだけ書かれています。

それを同カタログp.14で示したようなハニカム構造に射出成形したものが、
LAVA ME PRO のボディーであると考えます。

CFRPの剛性や重量に加え、面外にも三次元的に形状変動するハニカムの形状が、
温度環境による音響効果の安定化ということに寄与しているものと推測します。

この構造を Phantom 構造と呼んでいるようです。

 

作り方の基本は射出成形

基本は一体射出成形で作ると書かれています。

一体成形にすることにより、接着剤などの減衰の原因となるインターフェースを最小化し、
音響効果を向上させるという狙いがあるようです。

既に述べた通り AirSonic も射出成形に使うペレット形態でした。

上記で紹介したカタログにも書かれていますが、
重量6t越えの極めて剛直な方に1000tの圧力(荷重のことかもしれません)で射出成形し、
一体成形したとのことです。

 

 

 

では、今回ご紹介した内容で注目すべきことは何でしょうか。

 

やはり、一番は

「環境問題に取り組んでいるという姿勢とFRPの剛性を活かした音響特性という複数軸を組み合わせている」

ということだと思います。

 

昨今の時代の流れを踏まえると、環境問題への取り組みは不可避です。
実効性への検証が必要なことは言うまでもありませんが、
そもそもそのようなコンセプトが入っていないと、
なかなか市場で評価されにくい時代になっています。

少なくとも製品が地球環境の保全や改善、維持等にどのような効果が期待されるか、
という考えは常に念頭に置いておく必要があるといえます。

もう一つは音響特性です。

FRPは高剛性である上に異方性があるため、振動特性が金属と異なるという重要な特性を示します。
この分野はあまり知られておらず、研究もそれほど進んでいません。

FRPが有する剛性や異方性を振動特性に結び付けることは、
FRPを使用する明確な動機付けにつながるため、
わかりやすいコストだけの話に陥るリスクを低減することもできます。

 

このように複数軸を組み合わせて製品のコンセプト骨子を決めることが、
様々な新しい製品を生み出す際の重要なポイントといえるかもしれません。

 

 

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