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ASKJA Audio が 3D プリンティングで作製した音響機器を発表 Vol.107

2018-11-05

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   FRPのプロが注目する「業界最新ニュース」Vol.107 2018/11/5

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<目次> ━━━━━━━━━━━━━━━━

・「FRP業界最新ニュース」

・お知らせ

・編集後記

<今週の「FRP業界最新ニュース」> ━━━━━━━━━━━━━━━━

今日の「FRP業界最新ニュース」では、

「 ASKJA Audio が 3D プリンティングで作製した音響機器を発表 」

ということについて述べてみたいと思います。

FRPとも関係の深い 3D プリンティング。

過去にも以下のような記事で関連したものを述べたことがあります。

– Stratasys Additive Manufacturing が A350 XWB の3Dプリント部品提供元に選択
http://u0u0.net/Nd3C

– CFRTP を用いた 3D print 電気自動車
http://u0u0.net/Nd3H

– 3Dプリンタ向け 熱可塑性エラストマー
http://u0u0.net/Nd4j

上記の過去の記事でも述べていた Stratasys Additive Manufacturing の材料をつかったのが、
今回紹介する音響機器のお話になります。

今回ご紹介する音響機器を販売する ASKJA Audio という企業は、
Didier Kwak というCM編集者として業界で活躍した方が立ち上げた企業です。

この Didier Kwak という人は化学者であった両親の元、
幼いころからフェラーリ関連の仕事でハイエンドの業界とふれあいがあり、
フェラーリ創業者である Enzo Ferrari から、

「機能の寄せ集めではなく、部品点数を減らし、その一つ一つを完璧にデザインすることで、
全体がより良くなるように考えるべき(エンジンに関する話の引用)」

という言葉を投げかけれれ、
それが自分の人生に影響を与えたと述べられています。

個人的には、私の哲学である

「技術は極力シンプルであるべき」

というものにも共通するものがあると感じており、共感できました。

この辺りは以下のHPを実際にご覧になるとより詳細がかかれています。

https://www.askja-audio.com/EN/askja-dna-history.html

さて、そのような経歴を持つ Didier Kwak の立ち上げた ASKJA Audio で取り組んでいるのは、

「究極の音響機器」

のようです。

HPは以下でご覧になれます。

https://www.askja-audio.com/EN/index.html

因みにこのHPを開けると少しして、
ドビュッシーのベルガマスク組曲、第三番「月の光」が静かに流れますのでご注意ください。

音響機器の構成は「アンプ」、「スピーカー」、「フィルター」、「電源」の4つのコンポーネントです。

この音響機器を開発する経緯としては、
近年の音響機器の質の低下に危機感を覚えたのが出発点とのことです。

その後、様々な複雑形状により目指すべき音に近づいた一方、
詳細については試作を繰り返すため従来の金型ベースのつくり方では計画的にも、
予算的にも行き詰ったとのこと。

そこで適用することを決めたのが 3D プリンティングとのことです。

3Dプリンティングであれば形状の微修正は可能であることに加え、
顧客の様々なカスタム要望にも応えられるとのこと。

中にはスピーカー全体にダイヤモンドを散りばめてほしい、
といったこともあり、それも表層構造の見直しで達成したとのこと。

この辺りの概要については以下の所で述べられているので、
興味ある方はご覧ください。

https://www.askja-audio.com/document/cs_fdm_cn_askja_0918a-07f7.pdf

上記の中でも書かれていますが、
使用した材料は ULTEM 9085(TM)。

減衰特性と剛性のバランスが極めていい材料であったと述べられています。

この材料について少し見ていきます。

カタログは以下の所で見ることができます。

http://usglobalimages.stratasys.com/Main/Files/Material_Spec_Sheets/MSS_FDM_ULTEM9085.pdf

このデータを見た時、どのように感じられたでしょうか。
私は正直驚きました。

何が驚いたかというと「熱的特性」です。

熱可塑としては普通はあまりあり得ないガラス転移温度で186℃(DSCベース)。

HDTも150℃を超えています。

スーパーエンプラの中でもほとんどない領域の世界です。

これはいったい何者なのだろうと少し見ていましたが、
引張の降伏伸びと破断伸びを見た時に、
恐らく「液晶ポリマー(LCP)」だろうと予想ができました。

熱可塑性樹脂としては圧倒的に伸びが低いからです。

裏を返すと圧倒的に伸びが低い剛直な高分子なので、
高耐熱性が実現されているのだろうという話です。

その他の引張、圧縮、曲げといった各主特性の値もLCPらしい値となっています。

上記の音響機器に強化繊維が使われたのか否かは正直不明確ですが、
製品が生まれた歴史紹介の中で、CFRPの設計受託企業と話をした、
と書かれていたので短繊維が入っている可能性が示唆されます。

強化繊維を入れることで剛性が変化し、
当然ながら固有値も変化します。

それらの特性変化を上手く活用し、
音を発生するときの「音響特性」のいい落としどころを見出したものと推測します。

この音響機器の設計にはF1の設計技術が応用されているようで、
ザウバーとも協業しているようですね。

いかがでしたでしょうか。

今回ご紹介したようなハイエンドのものづくりというのは、
日本ではなかなかメジャーになれない一方、
特定の業界でのみ世界的にメジャーな日本企業もいるのは事実。

FRPは特に業界があまり大きくなく、
市場規模も堅調な一方で急激な成長も見込めないというのが大方の見通しです。

数と量で勝負するだけでなく、
独自性とこだわりで利益を確実に生み出す。

そのようなビジネスモデルがFRP業界において、
今後メジャーになっていくのかもしれません。

<お知らせ1> ━━━━━━━━━━━━━━━━

今後の登壇予定のセミナーを以下の通りご紹介させていただきます。
合わせて参加をご検討ください。

– 2019年 2月21日(木)
10:30-16:30

会場:日刊工業新聞社 東京本社 セミナールーム(東京・日本橋)

※材料規格に関する講演を行う予定です。詳細決まり次第再告知します。

<お知らせ2> ━━━━━━━━━━━━━━━━

2019年1月号から、月刊専門誌「機械設計」の連載を担当することになりました。

※「機械設計」のHP
http://pub.nikkan.co.jp/magazine_series/detail/0001

現段階では13回の連載予定なので足かけ1年以上の連載となります。

FRPに関する最重要の基本部分と関連する最新技術動向等をわかりやすく解説していく予定です。

年20回以上の登壇、国内外企業や研究機関へのサポートを通じ、
世界中で不足し、かつ重要と実感しているポイントを述べていきます。

連載が始まりましたら再度告知いたします。
尚、2019年1月号は2018年12月に発売予定です。

<編集後記> ━━━━━━━━━━━━━━━━

昨日は子供3人(6歳から10歳)を連れてハイキングに出かけました。

電車で40分も乗れば自然豊かな小山が見える地域に到達できるのが我が家の強みです。

お祭りをやっている商店街を抜け、
まずは最初のお寺に到着。

紅葉は本当に一部が始まったレベルでしたが、
とてもきれいでした。

予め植物図鑑のページをタブレットで撮影しておき、
子供たちと一緒に植物が何なのか、
ということを調べながらお寺から裏に広がる小山へと進みました。

ここで想定外に比較的強い雨が降り始め、
あらかじめ用意しておいた雨具を装備。

気温も下がり始め、体力の消耗を懸念して、

「そろそろ帰る?」

と言ったところ、子供たち全員がもっと進みたいとのこと。

300m程度の小山でしたが、2つ登り切って昼食時間含めて足かけ6時間半。

ほぼずっと歩いていました。
色々観察しながら歩いていたので想定の倍近い時間がかかりました。

それと新たな発見。
最近の山のトイレはすごいですね。

いわゆる「バイオトイレ」でした。

※参考URL

そもそもバイオトイレとはどんなものなのか?

私が使ったトイレは地元で栽培されるそば殻を使ったタイプのものでした。

臭いがほとんどないことに驚きです。
手洗いの水はありますが、雨水を炭で浄化しているため、
タンクが空になると水は出ません。
自然の中では水が簡単に手に入らないのは当たり前ですので、
気になりませんでした。

自然に負荷をかけない形で実現したトイレに感動です。

尚、6時間近く歩いた翌日に足が筋肉痛になったのは言うまでもありません。
次の日、何事もなかったように元気に幼稚園や学校に行く子供たちを見て、
その回復力に脱帽しました。

・ 著書情報━━━━━━━━━━━━━━━━

『CFRP製品設計の前提知識 ?CFRP業界の特殊性を踏まえた重要ポイント?』
 http://www.johokiko.co.jp/ebook/BC170601.php

『CFRP ?製品応用・実用化に向けた技術と実際?』(共著)
 http://www.johokiko.co.jp/publishing/BC160301.php

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