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水素社会 を目指した取り組みとFRP適用の可能性 1

2018-05-24

先日、弊社が本社を置く埼玉県の産業技術総合センターで開かれた

「 水素社会 と再生可能エネルギー」

という題目の講演に行ってきました。


講演をされたのは、千代田化工建設株式会社 水素チェーン事業推進部
シニアアドバイザー(工学博士)の中田真一先生です。


興味深い内容が多かったのと、
FRPの新たな展開を目指す領域としてポテンシャルを感じたことから、
本コラムでも2回に分けて述べてみたいと思います。


第一回目の本コラムでは日本のエネルギー戦略を中心とした概況を述べたいと思います。

 

日本のエネルギー戦略の現状と課題


まずは日本における現状に関するお話がありました。

ポイントはいくつかありますが、
特に私が印象に残ったお話を中心に抜粋して私の意見も取り入れながら述べてみたいと思います。

 

日本のエネルギー戦略に多大な影響を与えた東日本大震災

記憶に新しいこの未曽有の大災害がかなり大きな影響を与えているようです。
より具体的には温室効果ガスの一種である二酸化炭素の排出量。

震災前の2010年と2014年を比較すると、
1304から1364 (t-CO2)に増加しているとのこと。
そして増加分の実に90%近くがエネルギー起源の排出量を占めている現状です。

様々な要因がありますが、その一つとしては制御不能に陥った原子力発電所の稼働激減といえます。


個人的には制御不能になる上、その後遺症が大きいような技術は、
技術としては価値が無いと考えています。

いずれにしても日本は東日本大震災以降、以下のような課題にぶつかっているのが現実とのことです。


A. エネルギー自給率の低下(2010年:19.9%→2014年:6.0%)

B. 電力コストの情報

C. CO2排出量の増加


自給率の低下は顕著で、石油、石炭、天然ガス等の化石燃料で海外依存度は88%に達しているとのことです。

その一方でエネルギー問題にはトリレンマである 3E 仮題というものがあります。
3E追いうのは Economy、Ecology、Energyのことで、
環境性能だけでなく経済性も考慮しなくてはいけないという観点です。

現実路線といえばその通りですが、
この観点が後述する日本の戦略に大きな影響を与えているようです。

 

日本が示すエネルギー基本計画

経産省の旗振りによるエネルギー情勢懇談会によると、

エネルギー情勢懇談会 提言(案)のポイント 

というものが公開されています。

以下のURLから見ることもできます。

http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/ene_situation/009/


下記の点がポイントのようです。

可能性 ➡ 野心的シナリオ 「エネルギー転換、これによる脱炭素化への挑戦」 
不確実性 ➡ 複線シナリオ 「あらゆる選択肢の可能性を追求」 
不透明性 ➡ 科学的レビューメカニズム 「最新情勢で重点をしなやかに決定」 

複雑で不確実な環境でのエネルギー転換 ➡ 「3E+S」の要請を高度化 

福島事故 ➡ 再エネは経済的に自立し脱炭素化した主力電源化を目指す
その中で、原子力依存度は低減 

エネルギー転換への総力戦 ➡ ①内政・外交 ②産業強化・インフラ再構築 ③金融 


正直言葉が独り歩きしているように見えなくもありませんが、
個人的に興味を持ったのは「3E + S」についてです。
SはSafety、つまり安全性ですね。

結局安全でなければ意味が無いという観点が入ったことは極めて妥当であり、
私も強く同意できるところです。


可能性、不確実性、不透明性というのは一般的な観点であり、
もう少し踏み込んだ話があってもよかったのかもしれません(今後出てくると考えています)。


話に参加されている方々の顔触れはなかなかですが、もう少し広い分野の方がいらっしゃってもいいかなと思いました。

上記の科学的ビューメカニズムを議論したいのであれば大学の先生だけでなく、
その技術を応用して最前線で使っている技術者の意見もきくべきでしょう。

3Eで述べられる経済性を言うのであれば、
サラリーマンとして守られながら経営者となった方ではなく、
自ら事業を創業し、その事業の最前線で戦っている中小企業や、
短期間でベンチャーから大企業になっている企業の創業者(社長ではありません)が入っているべきではないでしょうか。
ビジネスの最前線は自らリスクを背負って事業をやらないかぎりわからないというのが私の考えです。


同じく3Eの環境を言うのであれば、林業、農業、漁業などに携わっている現場の人間の声も取り入れる必要はあります。
現場をきちんと理解し、ある程度全体を見られるような立場の方の考えが重要ではないでしょうか。


またエネルギー基本計画の電源構成では原子力をベースロードとし、
全体の20%にするという提言もされています。

この辺りは福島で何が起こったのかをご存知な方(住人の方など)の意見もきくべきではないでしょうか。
福島で起こったことが今後他の所で起こらない保証はどこにもありません。


上述の通り本当の現場を知っている方の意見を取り入れる柔軟性があると、
提言もより踏み込んだ内容になると思っています。

 

再生エネルギーの可能性と課題

この話もとても興味深かったです。

再生可能エネルギーとして述べられているのは、
太陽光、風力、バイオマスです。

それ以外にも雪氷熱、地熱、中・小水力発電も述べられていました。


バイオマスの一つとしては下水ガス発電というのもあるようですね。
月島機械等が行っており、以下のURLでも述べられています。

https://www.tsk-g.co.jp/tech/water-environmental/digestion-gas.html

 

バイオマスや環境性能という観点では過去のコラムで

バイオマスポリアミドの研究

糖類 由来の機能性材料研究

EuCIA が FRPの与える環境影響評価ツールを開発

炭素繊維の リサイクル 事業動向

GFRPに近い将来求められる リサイクル

といったことを述べたことがありますので合わせてごらんください。

 

その一方で課題も多いと述べられていました。
主な課題は以下の5点です。

1. エネルギー密度が低く、局在化していることが多い。

2. 大規模発電が難しい。

3. 発電電力が天候や時間等によって左右されるので、系統連系時に不安定になる。

4. 設備コストや発電単価が高い。

5. 一般にいまだ発電効率が低い。


例えば風力に向いている地域は日本でいえば北海道、
それ以外だと南米大陸太平洋側南部、イギリスとグリーンランド周辺などです。

太陽光であればサハラ砂漠やオーストラリア大陸北部など、
いずれも向いている土地柄があるというのは興味深いお話でした。


私も個人的な家族旅行で南の島に行きましたが、
そこでは風力発電と太陽光発電、それに加えて蓄電池システムを組み合わせた、
自然エネルギーを基本とした電力安定供給システムの実証実験を行っていました。

規模もそれなりに大きく、試行錯誤しながらも供給電力の安定化に向けた取り組みは着実に進めているようです。

その島は日照時間も多く、そして風がとても強い地域です。
まさに適材適所で実証実験を行っていることを感じました。

それ以外にも送電網の制約を解除し電力会社間で電力融通を行う、
といった柔軟な対応に向けた取り組みが進んでいるとのこと。

日本も危機感を持ってエネルギー問題に取り組んでいるということを示していると考えます。


またそれ以外にも興味深いのがデマンドレスポンスという考え方。


ピーク電力に対応するために巨額な設備投資をする、
というのではなく需要に応じた電力供給をするという考え方です。
上述した電力融通の柔軟性を高める、
というのもこの取り組みを後押しする動きの一つといえます。

 

エネルギー問題に対する取り組み方は省庁によって異なる

ここも私は知らなかったことなのでとても興味深く聞かせてもらいました。

上記までの話は主に経済産業省の視点からの話です。
ただ取り組みのスタンスは省庁によって若干異なります。


まず外務省は気候変動対策に取り組むという民間企業の力の重要性を軸に据えています。
非国家主体の役割に注目しているというのが特徴です。

リコー、パナソニック、千代田化工建設、XSOL、ソーラーフロンティア、くにうみアセットマネジメント、JAGシーベル、清水建設、LIXIL、ANA、富士通、三菱UFJモルガンスタンレー証券などなど、様々な業界の企業が取り組みをしている、ということを情報発信しています。

以下に一例を示します。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page25_000864.html

http://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page25_001316.html

 

一方で環境省はグリーンな経済システムの構築というスローガンで、
再生可能エネルギーの最大限の導入を明言しています。

具体的には水素や地域バイオマスの利用、営農型太陽光の推進などを述べています。


上記の話が第五次環境基本計画です。

以下のURLでも見ることができます。

https://www.env.go.jp/press/105414.html


パリ協定の採択を踏まえ、
「21世紀後半に温室効果額排出を実質ゼロ」、
「新たな文明社会を目指し、パラダイムシフトが必要」
といったかなり前衛的な話が出てきています。

私個人的には共感できる内容ですね。


6つの重点戦略ということも書かれています。
詳細は上記のURLから見られるpdfをご覧いただければと思いますが、
以下の6点です。

1. 持続可能な生産と消費を実現するグリーンな経済システムの構築
2. 国土のストックとしての価値の向上
3. 地域資源を活用した持続可能な地域づくり
4. 健康で心豊かな暮らしの実現
5. 持続可能性を支える技術の開発・普及
6. 国際貢献による我が国のリーダーシップの発揮と戦略的パートナーシップの構築


上記の中で最も興味があった(共感できた)戦略が、4でしょうか。
持続可能な消費行動、食品ロスの削減、テレワークの働き方改革、
地方移住・二地域居住推進等です。

例えば私の場合、テレワークについては実践している一人です。
本社に行くこともありますが、行かないで仕事をすることも多々あります。
移動を減らし、混雑を緩和するという観点では貢献できているかな、と思っています。

二地域居住推進というのも興味深いです。
これだけ自然災害の多い国ですので、
一つの場所に定住するということはどうしてもリスクが大きい。
そのため離れたところに拠点をもう一つ持っておくというのも大切な考えだと思っています。
(もしかすると二地域居住推進というのには別の意図があったのかもしれません)

 

 

いかがでしたでしょうか。

 

水素社会 を目指した取り組みとFRP適用の可能性ということに関するコラムの第一回目として、日本のエネルギー戦略を中心とした概況を述べました。

次回のコラムで本題である水素を基本としたエネルギーに対する取り組みの概要と、
FRPへの展開について考えてみたいと思います。

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