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東レと豊田通商による 炭素繊維リサイクル技術 共同開発

2016-02-24

東レと豊田通商が 炭素繊維リサイクル技術 の共同開発(「革新省エネルギー熱分解法による高効率リサイクル炭素繊維製造技術」)をするという話がプレスリリースに加え一般紙でも1週間ほど前からニュースになっています。


東レプレスリリース
http://www.toray.co.jp/news/carbon/detail.html?key=E47C2461D74C2A5449257F5C001E7D11?OpenDocument

豊田通商プレスリリース
http://www.toyota-tsusho.com/press/detail/160218_002953.html

J-net21
http://j-net21.smrj.go.jp/watch/news_tyus/entry/20160219-10.html

Yahoo(ニュースイッチ)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160220-00010004-newswitch-ind

日刊工業新聞
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00375260


上記の中ではYahoo(ニュースイッチ)がいい記事を書いているのではないでしょうか。

Torayの躍進劇を表現するのに Delta Tech の55%株式取得と子会社化の話(http://www.delta-tech.it/flash-news-2015.php)、Saatiのプリプレグ事業買収(http://eu-japan.com/2014/12/toray-saati-prepreg-carbon-fiber/)、三菱レイヨンのドイツバイエルン州でのSMC工場設立(http://business.nikkeibp.co.jp/atclemf/15/238719/101500393/)といった話をいれこみながら炭素繊維事業の拡大を述べています。

 

良く調べられている、というのが第一印象です。


Zoltekを初めとした買収劇で世界的な基盤拡大を進める東レと自社グループ内で進めようとする三菱グループとの違いを感じられる方もいらっしゃるかもしれません。

 

三菱レイヨン、東邦テナックス、東レの日本が誇る3大炭素繊維メーカーが手を組み、2006年から経済産業省の補助事業である「炭素繊維リサイクル技術の実証研究開発」により実証プラントの建設、
リサイクル基礎技術開発を進め、2012年からは炭素繊維リサイクル技術開発組合を設立して、
3社共同でリサイクル技術開発を進めてきましたが、去る2015年3月末をもって解散をした、
という話は以前、こちらの記事でもご紹介しました。

 

その後、三菱レイヨンは100%子会社である株式会社新菱(本社:福岡県北九州市)と共同で炭素繊維リサイクルの事業化を共同で推進すると昨年4月に発表し、グループ内でリサイクル事業を進めると書かれています。

https://www.mrc.co.jp/press/detail/20150402112856.html

 

豊田通商は、豊田ケミカルエンジニアリング株式会社(本社:愛知県名古屋市中村区、社長:荒木 俊雄)の半田工場内にパイロット設備を建設することで、熱分解法による炭素繊維リサイクルにおいて最も消費エネルギーの大きい熱分解工程で、マトリックス樹脂の可燃性分解ガスを燃料に用いることにより、消費燃料の大幅な低減を目指すというコンセプトのリサイクル事業を展開するとのこと。

 

いわゆるサーマルサイクルの一種です。


燃料としてエネルギーを回収するという王道のやり方といえます。


このようなリサイクル事業の必要性や最近の傾向は以前、以下の記事でも述べていますので合わせてご覧ください。

炭素繊維の リサイクル 事業動向

長繊維タイプのCF リサイクル アプローチ

EuCIA が FRPの与える環境影響評価ツールを開発
 

上記のような大企業の話はどうしても入りにくい部分があるかもしれませんので、今日はもう少し規模の小さな事業で炭素繊維のリサイクルに取り組んでいる企業をご紹介したいと思います。


その企業は以下の Ai-carbon (アイカーボン株式会社)という会社です。

http://www.aicarbon.co.jp/


わたしが昨年、SAMPEでブースをまわっている時にお会いした企業です。

Ai-carbonは非常に面白い技術を持った企業で、プリプレグからスラリーとして炭素繊維をウェットの状態で回収するという技術を有しています。


ベースとなっているのは電解酸化法という技術です。
アルカリ水溶液中で電気分解を行い、炭素繊維を脆くして分離、回収することで、炭素繊維のスラリーを得ることができます。

こちらは上述で紹介したサーマルサイクルとは異なり、材料そのものを再利用するためのマテリアルサイクルになります。

このようにして得られた炭素繊維は物性は落ちてしまいますが、ウェットであるため扱いが楽であり(舞うことがない)、その後の工夫次第で様々な製品へと生まれ変わらせるポテンシャルを持っていると考えます。


例えばリサイクルされた炭素繊維を製品に用いる場合に、このような企業とうまく協力していくというのも一案かもしれません。

 

将来必ず必要になるリサイクル技術。

先行してこのような取り組みを進めるというのも、FRP業界への参入戦略として有力ではないかと考えます。

ご参考になれば幸いです。
 

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