FRP成形向け副資材のVacuum bagとPeel ply複合品の新たな製品をAEROVACが展開
オートクレーブ、インフュージョンなど、
FRP成形の中には基本使い捨ての”副資材”を用いる成形方法もあります。
今回は副資材では老舗企業のAEROVACがVacuum bagとPeel ply複合品を、それぞれ新たに展開したことを踏まえ、これらの概要とFRPの考えるべき技術的観点をご紹介したいと思います。
FRPは大型成形の名残から副資材を用いた成型法は今でも主力の一つ
前述の通り今回紹介するような副資材を用いる成型方法には、
オートクレーブ、インフュージョンなどがあります。
これらの工程はFRP業界では定石ですが、3D形状のFRP成型物を作り続けるのは簡単ではありません。
オートクレーブを一例に過去のコラムを参照しながらその理由を改めて述べます。
副資材を用いたFRP成型準備
以下のコラムで、オートクレーブでFRPを成型する場合の基本”準備”手順をご紹介しました。
※関連コラム
工程の中には今回ご紹介するVacuum bagやPeel plyが登場しています。
Vacuum bagは成型する材料を外側から押さえつける形状追従型のフィルム、
Peel plyは余剰樹脂の吸収や樹脂を後含浸させる際のメディアとして使います。
前出のオートクレーブ成型では成型材料として樹脂が予め含浸されているプリプレグが成型対象材料ですが、
インフュージョンでは樹脂が含浸されていないドライの強化繊維を使い、
それを真空引きした状態でマトリックス樹脂をキャビティー内に引き込むという成型方法です。
こちらについても過去にコラムでご紹介したことがあります。
※関連コラム
インフュージョン成形の効率化に貢献するメディア G-FLOW
オートクレーブ・インフュージョンどちらの成型も、
成型”準備”手順は類似していることが分かると思います。
副資材を用いた成型にはある程度の”熟練”が必要
副資材を用いた工程を一通り見直してもらったとして、
どのような感想をお持ちでしょうか。
実際に成型をしている方、経験のある方は普段のことという認識かもしれません。
一方でこのような経験があまりない方から見ると、
大変そうだと思うに違いありません。
手順と留意点の多さ、そして厚物や3D形状物を想定すると”準備”工程の難易度は上がっていく
大変だと感じた理由の一つが手順と留意点の多さかもしれません。
例えばシーリングがうまくいかずに空気漏れを意味するリークをしてしまうと、
バックまで終わらせたとしてもやり直しです。
また成型物の厚みや形状の影響も大きいです。
厚さ数mm程度の平板形状はいいでしょう。
これが同じ平板でも数十mm以上と厚くなる、
さらには一般的な成型体である3D形状を有するとなると、
その難しさは各段に上がります。
真空引きした際にVacuum bagが突っ張らないようミミ(マチのようなもの)を作る、
インフュージョンであれば樹脂が特定の場所に溜まらないよう、
キャリアの置き方を考える等は一例です。
メディアや強化繊維の形態によっては、
チャンネルと呼ばれる樹脂の流れ道をしかるべき方向に向けることも必要です。
試作であれば試行錯誤で都度乗り越えればいいという話かもしれませんが、
安定的に成型し続けようとなると想像以上に大変なのです。
量をある程度作るには人海戦術を想定せざるを得ず、
しかし同様の熟練技術を浸透させるのは容易ではありません。
特に海外では日本以上に想定外のことが起こります。
このように、念頭に置くべきは少量多品種の試作ではなく、
一定量を継続して作り続ける量産でなければなりません。
当該観点がFRP業界全体でやや欠けがちではないか、と個人的には考えています。
次にAEROVACが発表したVacuum bagとPeel ply複合品について概要を述べます。
Vacuum bag: STRETCH-VAC(R) 4000
Vacuum bagはSTRETCH-VAC(R) 4000という製品です。
材質はポリアミド(ナイロン)系であり、
ポリエステル、ビニルエステル、エポキシなどに使えるのことで、
この辺りの情報はVacuum bagでは一般的なものです。
開発に数年をかけたことで後述する材料の特性に加え、
ポリアミドの課題である吸湿性の抑制を実現したと述べられています。
最大の特徴は破断強度と伸び
この製品の特性の概要を以下の通り引用します。
- Max Use Temperature:212°C (414°F)
- Color:Pink
- Tensile strength at break (ASTM D882) Transverse direction / Machine direction : 95MPa 13778PSI
- Elongation at break (ASTM D882) Transverse direction / Machine direction: 550%
- Yield: 17.78sqm/kg (50μm) – 9.62sqyd/lb (0.001”) / 11.85sqm/kg (75μm) – 6.41sqyd/lb (0.002”)
最後のYieldは一瞬降伏特性のことかと思いましたが、単位を見ると恐らく重量当たりの平米数でしょう(目付の逆数)。
最高使用温度は212℃とのことで、ポリアミド系でいうと一般的です。
少し違う印象を受けたのが引張特性です。
引張り破断強度は、ロールの長手方向(Machine direction)、短手方向(Transeverse direction)によらず、95MPaを示すと書かれています。
そしてこの数値自体、個人的には同様のナイロンバック製品よりも高い数値という印象です。
さらに注目すべきはその破断伸びです。
破断伸びは550%とのことで、一般的なナイロンフィルムはもちろん、
従来のナイロンバックよりも2割程度は高い印象を受けています。
異方性が無く、かつ強度が高いことから二延伸かと思いましたが、
破断伸びが高いことから延伸をしていないと考える方が妥当かもしれません。
樹脂の基本化学構造を見直すことで、延伸しなくても引張強度を高めることに成功した可能性もあります。
高い破断伸びはVacuum bagとして用いる際の形状追従性に直結する
既に述べた通り、Vacuum bagとして用いる場合にポイントとなるのは複雑形状にバックが追従できるかです。
複雑な3D形状だとミミをつけたとしてもバックが突っ張るリスクがあり、
バック自体がゴムのように変形できることはそのリスク低減につながります。
多少の突っ張りをバック(フィルム)自身の変形で吸収できるからです。
これがバックによる密着不足で樹脂リッチの発生や形状が想定より大きくなる、
またはオートクレーブのように外圧をかける際にフィルムが破れるといったリスクを低減できます。
次にPeel ply複合品について述べます。
Peel ply、メディア、リリースフィルムを一体化:Vac-Ply Combi 1
次に紹介するのはPeel ply単体というよりも、
それとメディア、リリースフィルムを組み合わせたVac-Ply Combi 1という製品です。
Vac-Ply Combi 1は複数の材料を組み合わせている
Vac-Ply Combi 1に関する特性の概要を以下の通り引用します。
- Max Use Temperature: 120°C (248°F)
- Color: Blue mesh, red release film and white with pin stripes peel ply.
- Fiber: Polyethylene (PE) and Nylon (PA)
- Weight:235g/sqm | 6.93oz/sqyd
材料はポリエチレンとポリアミドの構成です。
Peel plyはPeel Ply A100 ECOというポリアミド製品で、
ストライプ柄が付いています。これはPeel plyの存在を視覚的に分かりやすくさせることが目的にあるとのこと。
さらに樹脂の通り道となる青色メッシュ(メディア)と離型フィルムを組み合わせています。
目付は235g/sqmです。耐熱温度120℃はポリエチレンに由来した数値と考えます。
Peel plyの役割と活用法
改めてPeel plyについて少し触れておきます。
Peel plyは一般的に樹脂を後含浸させるインフュージョンやVaRTM、またはハンドレイアップといった成型法で用いますが、冒頭紹介した通りプリプレグの成型でも用いることがあります。
Peel plyの元々の目的は樹脂を後含浸させる際に生じる余剰樹脂、
ならびに表層に発生しやすいボイドを吸収し、
成型後に除去するための媒体としての活用にあります。
ハンドレイアップを想定した場合のPeel ply活用法については、
ガラス繊維、炭素繊維についてそれぞれ以下のような動画で見ることができます。
Vac-Ply Combi 1の使い方とメリット
本点については製品概要が掲載されているHP中(参考情報)の動画が分かりやすいです。
Vac-Ply Combi 1はPeel ply/離型フィルム/青色メッシュという構成になっています。
Peel plyが直接樹脂未含浸の強化繊維に接触するイメージで使用します。
下型があり、その上に強化繊維を乗せさらにその上からVac-Ply Combi 1をかぶせてバックをして使用すると考えられます。
その状態でインフュージョンの要領でメディアである青色メッシュに樹脂を流し込むことで広範囲に浸透させ、
さらにそれが離型フィルムを通過してPeel plyに到達し、
最終的には強化繊維に樹脂が含浸していきます。
離型フィルムはPerforatedとのことで微小な穴が開いているため、
層間に樹脂が浸透させることが可能となっています。
副資材の積層工程を簡略化できる
通常はこれらの副資材を”それぞれ”積み重ねる、つまり積層する必要があります。
一体化されていることで、
この積層工程を大幅に簡略化できることは想像しやすいのではないでしょうか。
まずはここがメリットの一つといえます。
Vac-Ply Combi 1の各層は分離できる
これも面白いコンセプトです。
一例として示されているのが、インフュージョン成型により硬化物となったFRPから、
青色メッシュと離型フィルムだけを除去してPeel plyを残すというものです。
何が目的なのかというと、残された最外層のPeel plyを暫定の”保護層”にすることにあります。
積層材料であるFRPは最外層の傷は大した問題ではありませんが、
例えば空力性能が重視される航空機などでは問題になるかもしれません。
さらに言えば何かを接着する、塗装するとなった場合、
最外層が油やほこり等の汚染があると問題が生じやすいでしょう。
これらの工程の直前までPeel plyを残しておけば上記リスクを低減できます。
そしてPeel plyが樹脂含浸された状態で残ると外観では区別をしにくい可能性があるため、
既述の通りストライプの柄を入れているということも併せて触れられています。
最後に
今回はFRP成型に用いられる副資材をご紹介しました。
副資材と一言で言っても様々なニーズや課題があることを感じていただいたかもしれません。
恐らく今後も大型成型物をFRPでやろうとした場合、
この手の副資材は不可欠であり、今後も更なる進化が期待されます。
同時に、この手の成形手法で避けられないのは解放面の凹凸。
今回でいえばPeel plyをはがした後の微小の凹凸は絶対に不可避です。
この凹凸は構造物の内側等で問題にならないケースでは良いですが、
アプリケーションによっては表裏両面の凹凸をなくしたいという要件があるケースもあるでしょう。
最近も紹介した比誘電率特性とそれに関連する伝送損失はその一例です。
※関連コラム
このようなことを念頭に金型成型を常に選択肢として持っておくことが重要です。
複雑形状で小型のものは金型がFRP成型では適していますが、
その型設計には様々な技術的知見が必要となります。
射出成型の様なクローズドモールドではなく、
材料を投入して型を占めるオープンモールドがFRPでは主となるためです。
”FRP成型法はこれしかない”といった決めつけではなく、
適材適所で幅広い視点を持つことが肝要です。
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新しいFRP短時間成形工程として期待される Dynamic Fluid Compression Molding



