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耐久性と耐荷重性を重視したFRP製デッキProDeck

2026-03-16

今回は耐久性と耐荷重性を重視したFRP製デッキProDeckのご紹介と技術的なポイントを解説したいと思います。

 

 

FRPの耐久性はインフラ適用動機に直結する

FRPには強くて軽いという従来の視点に加え、
耐腐食性や耐水性をはじめとした耐久性が高いという特性に改めて注目が集まっています。

個人的には貯水タンクなど、元々後者がFRPのコンセプトだったものの、
炭素繊維の登場によりモビリティーやスポーツ向け構造材への適用が進んだこともあり、
どちらかというと前者が主たるイメージとなったのかもしれません。

 

インフラ関係へのFRP適用例として以下のようなものを過去にご紹介したことがあります。

 

※関連コラム/寄稿

自動車技術会「高翔」への土木建築/インフラへのFRP適用に関する記事寄稿

熱可塑性FRPを用いた水素輸送用パイプ

FRP製電柱の拡大と既設電柱のFRPによる補修・補強の重要性

CF/PA12のCFRTP製パイプの天然ガスや二酸化炭素の海中輸送向けたDNV認証取得

道路トンネルの変状・異常事例集から見るFRPの活用

社会資本の老朽化対策としてのFRP適用

 

 

遊歩道を想定したFRP製デッキ ProDeck

今回FRPのインフラ関係への適用例としてご紹介するのは、
アメリカのBedfordという企業が発表したProDeckです。

この製品はガラス繊維を強化繊維としたGFRP製です。

以下のページでリリースを読むことができます。

Bedford Reinforced Plastics Introduces New FRP Decking Option for Pedestrian Bridges

内容を抜粋して述べます。

 

 

主な製品はProDeck LVと同H5の2つ

FRP製のProDeckはProdeck LVとProDeck H5の2つがあり、
前者は主に遊歩道やATV(オフロード向け4輪バギー)の車道、
後者は一般車両などが通過する橋向けのデッキ材です。

 

遊歩道向けのProdeck LVの表面には滑り止め加工済み

濡れた状態や薄く氷が張っている状態でも滑りを抑制するため、
表面にはanti-skid gritと呼ばれる微小な凹凸機構が付与されているようです。

この機構自体も耐久性があるとの記述があります。

 

一般車両通過も想定した4.5トンの耐荷重設計

ProDeck H5は一般車両の通過も想定しているため、
その耐荷重はかなり高めで4.5トン(10,000lb)と記載されています。

 

FRP製デッキは耐久性の高さと長寿命による維持管理工数・コスト削減が狙い

この耐荷重の十分な高さは、製品の長寿命化が狙いにあると書かれています。

類似の機能を果たす材料として木材もありますが、
FRPの方が木材よりも腐食や劣化のスピードが遅いため、
保守管理が楽になる、より具体的には点検頻度の削減や交換期間の延長が可能になる、
という趣旨の記述が認められます。

 

 

材料の特性概要

ProDeck LVについて、BefordのProDeck LVのサイトを参考に見てみます。

 

断面形状は隔壁を有する中空矩形型形状であり、
幅11.25″(285.75mm)、高さ2.5″(63.5mm)、外郭厚み0.1875″(4.7625mm)形状に対し、
3.5″幅ごとに同厚み0.1875″で隔壁が設置されています。

中空形状にしているのは軽量化しつつも断面剛性を高めるのが目的です。

耐荷重は構造材の”長さ”に依存します。

棒を持つ根本付近で変形させるのは難しいですが、
そこから離れたところであれば変形に必要な荷重は低下します。
いわゆる”てこの原理”です。

集中荷重を想定した場合、最も長い96″(2.4384m)長さの場合、
最大耐荷重は1956lb(886kgf)とのことです。

私が見逃しているのかもしれませんが、片持ちか両持ちかといった拘束条件については不明です。
用途を考えれば両持ちではないかと感じています。

この辺りの基本情報は前出のページで見ることができます。

 

 

使用されていると考えられる材料仕様

こちらについては、Bedfordの以下のページをご覧いただくと情報がもう少し多いかと思います。

ENGINEERING SPECIFICATION PULTRUDED PROForms(R) FIBERGLASS STRUCTURAL SHAPES

 

後述する引き抜き材で成形したGFRPの仕様が書かれています。
本仕様中から材料データについて、材料試験項目/試験規格/数値/単位の順で抜粋したものを以下に示します。

  • Tensile Strength / ASTM D-638 / 30,000 (206) / psi (MPa)
  • Tensile Modulus / ASTM D-638 / 2.5 x 106 (17.2) / psi (GPa)
  • Flexural Strength / ASTM D-790 / 30,000 (206) / psi (MPa)
  • Flexural Modulus / ASTM D-790 / 1.8 x 10E6 (12.4) / psi (GPa)
  • Flexural Modulus (Full Section) / N/A / 2.8 x 106 (19.3) / psi (GPa)
  • Short Beam Shear / ASTM D-2344 / 4,500 (31) / psi (MPa)
  • Shear Modulus (Full Section) / N/A / 4.5 x 10E5 (3.1) / psi (GPa)
  • Coefficient of Thermal Expansion / ASTM D-696 / 7.0 x 10E-6 (12.6 x 10E-6) / in/in/°F (cm/cm/°C)
  • Flame Spread / ASTM E-84 / 25 or less / N/A

Full Sectionと書かれているのは、恐らくデッキの形状をしたものを直接評価しているものと推測します。
形状因子が入っているため、準拠規格が無いという記述となっています。

数値としては、GFRPの引き抜き材としてはこんなものなのかな、という印象です。
何かが突出した印象は受けていません。

 

引き抜き材のGFRPのVfは28から37%程度

上記の仕様中には

“All structural shapes are to be manufactured by the pultrusion process with a glass content
minimum of 45%, maximum of 55% by weight. ”

という記述があります。

これに基づけば、引き抜き材のGFRPのVfはおよそ28から37%となります。
上記仕様中で示されている数値はwt%、Vfはvol%であることにご注意ください。

 

※参考コラム

はじめてのFRP 材料仕様を示す 目付 、 Vf そして RC

 

炭素繊維を想定したプリプレグなどと比較し、
Vfがかなり低いという印象を受けるかもしれませんが、
射出成型のGFRPはさらに樹脂に対する繊維量が低い(例:30wt%等)ことも珍しくありません。

 

層間せん断強度は条件を加味すればやや高い印象

一点、感じたのはVfとGFRPであることを考慮した場合、
層間せん断(Short Beam Shear)が比較的高いということでしょうか。

デッキのような使い方である場合、
層間せん断特性は破壊有無の分かれ道となる材料特性であるため、
この数値は重要なのは間違いありません。

長手方向に連続繊維(ガラスロービング)が配向していることが一因でしょう。

 

曲げ試験の位置づけを改めて考える

なお、何度も述べている通りFRPの設計では曲げ特性は使いません。
複合荷重モードであること、試験片形状因子で数値変動するのがその理由です。

一方で今回の仕様では実体の曲げ特性が記載されており、
こちらは当然ながら設計値として活用します。

決定された形状因子を込みで評価しているからです。

そして実体評価では強度ではなく”弾性率のみ”記載されている意味を理解することも、
構造設計の基本理解には必須です。

 

※関連連載

「 機械設計 」連載 第四回 「 曲げ試験 」は意味がない?!

 

 

板材の作り方は引き抜き成型

同一断面形状ですので、その作り方は引き抜き成型です。

Bedfordの動画の中に、引き抜き成型について触れているものがありました。

これを見ると引き抜き成型のイメージがわくかもしれません。

あくまで同一断面形状を有するという前提はありますが、
連続的に成型をすることが可能です。

クリールに固定された連続繊維であるロービングと、
引き抜き成型される形状物の表面形状賦形とロービング保護に用いるガラスマットが、
ガイドに沿ってロービングをガラスマットで包みながら、
後述する主剤と硬化剤が混錬されたマトリックス樹脂を含む槽内に引き込まれて通過します。

樹脂が付いた強化繊維はそのまま金型内に入り、
入口に比べて出口の寸法を小さくすることで継続的な引張荷重をかけることで、
圧力をかけて樹脂を含浸させつつ、型内を加熱することでマトリックス樹脂を硬化させます。

引き抜き成型ではこれら一連の工程を連続的に行います。

 

マトリックス樹脂は低粘度の不飽和ポリエステルや、
耐腐食性が求められる場合に選定するビニルエステルを用いることが一般的です。

ガラス繊維の表面に付与されるサイジング剤がビニル基を有する化合物を想定しているとが多いこと、
そしてスチレンで希釈して低粘度しやすく、価格が構造材に用いる熱硬化性樹脂の中で安いということが、
これらの樹脂を用いる背景にあると考えます。

 

 

今回の内容を踏まえ、考えるべき技術的ポイントを述べます。

 

 

滑り止め機構の付与は後工程で行われている可能性が高い

今回ご紹介したProDeckは表面に滑り止め機構が施されていることを述べました。

作り方は恐らく引き抜き成型だと思いますが、
引き抜き成型を行いながら表面に滑り止め機構を付与することは、
かなり難しいと思います。

前出の通り引き抜き成型の方は出口側を入り口側に比べて小さくすることで圧力をかけており、
その型に一定の溝であったとしても凹凸形状をつけることは、
そこを通過する材料に過大な圧力がかかって表層付近のガラスマットが引っ掛かり、
結果としてロービングの損傷につながる恐れがあります。

そして何より、微小形状を連続的に型で付与しようとすれば、
型自体に多大な応力がかかり、”型”の微小形状賦形領域が損傷する可能性が出てきます。

そのため、ProDeckの表面の滑り止め機構はサンドブラストなどの後工程で付与されているものと考えます。

表層は構造材としての寄与がロービングより低いガラスマット材なので、
サンドブラストのレベルでの表面材料除去は、
GFRP全体への影響としては軽微であると考えて問題ないでしょう。

 

 

FRPも摩耗し、微小ガラス繊維が飛散する恐れがある

FRPは確かに耐候性や耐水性をはじめとした耐久性が高いです。
しかし、マトリックス樹脂の経時劣化は不可避です。

マトリックス樹脂が劣化や摩耗することでガラス繊維が露出すると、

「ガラス繊維の飛散」

という別の課題が生じます。

ProDeckのように引き抜き成型で成型するものについては、
表層はロービングではなくガラスマット材であることが多いため、
より飛散しやすいといえるのではないでしょうか。

飛散したガラス繊維は自然分解することなく、
水中や土壌中に蓄積し、
場合によってはそれを人間や動物が吸い込む可能性があります。

現段階で微小ガラス繊維の吸引による直接的な健康被害の情報には接していませんが、
過去のコラムでも取り上げた通り、生体内に蓄積することは確かめられています。

 

※関連コラム

カキやムール貝の組織内からFRP由来と考えられるGF微細繊維を検出

 

山中や湿地帯の遊歩道に用いる材料は、
耐久性が劣るとしても個人的には木材を用いるべきと考えます。

元々日本人が得意とした地産地消の考え方は、
手間がかかったとしても、最終的には正解ではないかと感じています。

 

ご参考になれば幸いです。

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