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パイナップルの葉を 3D printing 向けの強化繊維に適用

2022-11-28

植物はセルロースを中心とした繊維質で構成されることが多いです。

このような繊維は適切に取り出して表面処理を施せば、
FRPに対しても自然由来の強化繊維として活用できることが知られています。

天然繊維や天然素材をFRPの強化材として用いることについて、
以下のようなコラムで取り上げたことがあります。

 

・関連コラム

Graphene および Carbon nanotube で強化された超高強度天然繊維の研究

天然繊維複合材料の 回転成形

射出成形ができる 次世代ウッドプラスチック

天然繊維を用いたBPREGの熱可塑性プリプレグ

 

最近、Polymer Compositesでも発表されました、
パイナップルの葉を原料とした3D printing向けの強化繊維ということについて述べてみたいと思います。

 

 

パイナップルの葉を繊維として使用する取り組みは既に始まっている

パイナップルの葉を3D printing向けの強化繊維として適用される可能性が出てきた

Photographed by lanite Koppens

私は知らなかったのですが、
パイナップルの葉を繊維として用いることは既に一般的なものになりつつあるようです。

その先頭を走っているのはファッション業界とのこと。

Piniatex(R)(ピニャテックス)というパイナップルの葉由来の繊維を展開する、
ANANAS ANAM という企業はその先頭にいるプレーヤーの一社です。

ピニャテックスについては、以下のような動画も公開されています。

元々は農業廃棄物でしかなかったパイナップルの葉の有効活用に加え、
農家の新たな収入源の実現を目指し、
皮革製品の専門家で上記の ANANAS ANAM 社の創業者が開発したとのこと。

繊維を取り出した後のパイナップルの葉は肥料に有効活用ができるため、
循環型農業実現の一助になると考えられています。

取り出されたパイナップルの葉由来の繊維は、
その後の特殊工程をベースとした仕上げ加工によって着色や皮革に近い質感のもの、
更には樹脂のトップコートや箔の熱プレスしたものもあるようです。

1平方メートルのピニャテックスを製造に、
パイナップル16本分にあたる約480枚の葉が必要というのも、
大変興味深い情報です。

これらの情報の詳細は以下の参照元ページをご覧ください。

・参照ページ

農業廃棄物を活用して生まれた不織布

天然由来のマイクロファイバー パイナップル繊維

 

 

3D printing向けのパイナップルの葉の繊維とは

概要は以下の記事に書かれています。

A method to recycle pineapple leaf fibers into filaments for 3D printing

技術の詳細は論文に述べられているようですので、
その論文のAbstractを参考に述べてみたいと思います。

 

パイナップルの葉を3D printing向けに適用する際のポイント

参照した論文は以下のものになります。
内容は現段階で見ることができないため、Abstractの内容を基本とした内容記述となっています。

Comprehensive characterization of raw and treated pineapple leaf fiber/polylactic acid green composites manufactured by 3D printing technique
Shan Xiao, Shibao Wu, Zhonghai Xu, Yusong Yang, Chunxing Hu, Shanyi Du,
Polymer Composites, 43, 9, 5977 (2022)

 

内容を見ると3D printing 向けのFRPについて、
マトリックス樹脂はポリ乳酸(PLA)で、
そこにパイナップルの葉由来の繊維(pineapple leaf fiber / PALF )を組み合わせたもののようです。

PLAに関連するものとして、以下のようなコラムを書いたことがあります。

・関連コラム

炭素繊維やポリ乳酸繊維を用いた 圧電ファブリック

 

さらっと書かれていますが恐らくポイントの一つはPALFの表面処理だと思います。

詳細はわかりませんが、アルカリ処理と書かれています。

 

強化繊維のPALF、マトリックス樹脂のPLAは共に粉末状態で、
これらを混錬して繊維として溶融紡糸することでフィラメント形態にして、
3D printingに適用すると書かれています。

上記の通り出発原料の状態では、PALFは粉末形態であることに加え、
その添加量はマトリックス樹脂に対して3wt%ですので、
本格的な強化繊維というよりもフィラーに近い扱いだと考えられます。

詳細のデータは確認できませんが、
引張や曲げ試験においてPALF添加量に応じて特性が向上したと触れられています。

また、アルカリ処理が無いPALFだとその補強効果が劣る傾向が見られ、
表面処理が重要なキーになることも示唆されています。

FT-IRによる官能基の確認や、
X線回折分析による結晶サイズや結晶化度の分析を実施していることから、
化学的な構造解析による材料特性発現メカニズムの考察も行っていると予想されます。

更には熱分析であるTG(熱重量測定)によって、梱包材として十分な耐熱性があることが示されたとの記述があります。

 

具体的な結果がどのようなものなのかについては、
論文が手に入りましたら読んでみたいと思います。

 

 

天然繊維を基本としたFRPは材料として将来当たり前の選択肢になり得る

今回はパイナップルの葉という天然素材を強化繊維としたFRPについて、
その概要をご紹介しました。

 

今の時代の流れを踏まえれば天然素材を何かしらの形で活かしていこう、
ということの必要性に疑いの余地はありません。

そしてその実現には化学的な知見も必須で、
今回でいえば表面処理という部分がそれに該当したと考えます。

 

強化繊維と樹脂の組み合わせによって無限ともいわれる材料のバリエーションを持つFRPは、
今後、このような天然素材を一つの選択肢として取り入れていくことが当たり前になっていくのかもしれません。

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