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軍需における守備で活用されるFRP

2022-03-02

今も続く東欧での軍事衝突。これまでの常識が通用しないような急激な変化と理不尽さに、悲しみ、恐怖、怒りといった感情が今世界で蔓延していると感じています。

結局のところ、このような戦争で最も被害を受けるのは何の罪もない一般人の方々かと思います。このような方々の安全が一刻も早く確保され停戦、そして終戦になることを祈るばかりです。

今回はこのような厳しい状況において、技術的観点からFRPが戦争前線に置かれている方々に何ができるのかということを考えたく、軍需における守備という役割でFRPが果たせることについて振り返ってみたいと思います。

 

 

FRPが戦争時に人命を守るのに活躍できる第一のアプリケーションは防弾

防弾はFRPが活躍できる第一のアプリケーション

FRPは繊維と樹脂を組み合わせた複合材料です。それ故、強化繊維とマトリックス樹脂の界面という異種材境界が多く存在する特殊な材料といえます。

そのため、FRPは何かしらの強い衝撃を受けた際、以下で示すような極めて複雑な破壊形態を示します。

・マトリックス樹脂の破壊

・マトリックス樹脂と強化繊維の界面の剥離

・強化繊維の破断

このように、破壊形態が複雑になればなるほど、急激な衝撃エネルギーを熱として拡散させるということが可能になるため、結果として弾丸のような殺傷能力のある衝撃物から人を守ることが可能となります。

FRPを用いた防弾評価の動画もあります。

弾丸は7.62 × 39mm(30口径)、弾速は708.11 m/s。被弾したのはFRTP(熱可塑性繊維強化プラスチック)ですが、この材料に関する細かい仕様は不明です。

繊維が白く見えているのは強化繊維がガラス繊維であるためです。耐衝撃性を重視する場合はほとんどの場合ガラス繊維を用います。また、ある程度自らも変形して受け止めることで、衝撃エネルギーを吸収しようとするため、強化繊維は平織を用いていることもわかります。

マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いているのは、塑性変形を示すためです。熱可塑性樹脂はろうそくのロウのように温めると粘性液体の状態になり、冷やすと固化するという性質があります。このように熱による可逆反応を示すことができるのは、熱硬化性樹脂のように、基本構成分子(高分子)が三次元架橋して剛直な状態ではなく、熱可塑性樹脂はあくまでひもが絡み合うような状態であることがその所以です。

熱可塑性か熱硬化性かということについては、「FRP戦略コラム – FRPのマトリックスは熱硬化性樹脂か熱可塑性樹脂か」というもコラムでも取り上げたことがありますのでそちらも合わせてご覧ください。

 

このような防弾目的で熱可塑性FRP、つまりFRTPを用いる場合、繊維に樹脂を含浸させすぎないことがポイントです。防弾目的のFRPは構造部材ではなく、あくまで自らが破壊することで人を守るというのが役割であるため、衝撃が加わった時に自らが破壊しやすい状態にすることがポイントになります。FRPの鉄則は複合材料化することで、繊維と樹脂をいかに一体化させるかが一般的なポイントですが、防弾のアプリケーションに限っては、この考えを捨てるというのが盲点といえるかもしれません。

 

防弾へのFRP適用については、以下のようなコラムでも触れたことがありますので合わせてご参照ください。

LightArmour project でのFRP適用

損傷検知をサポートするセンシング機能を有する繊維を用いた 宇宙服

 

 

緊急のシェルター構造部材へのFRP適用

もう一つ考えられるのがシェルターです。

COVID-19の感染拡大初期、病床が足りなくなったことを踏まえFRPを用いた医療シェルターが活用されました。

過去のコラムである「FRPを用いた医療向け シェルター Tupelo Flat Pack Shelter」でも取り上げましたが、FRPを用いるメリットは剛性や強度が高いが、軽いということです。比強度/比剛性が高いということです。

500 X 250 X 250 mmというFRP製パネルサイズを標準とし、これらを組み合わせることで柔軟な寸法にてシェルターを作ることができます。もちろんFRP製なので軽いため、輸送しやすい。さらに組み立てによって迅速にシェルターを構築できるというのは、医療向けはもちろん、今戦争で急増している難民の方々を受け入れる暫定住居として活用するにあたり、大きな強みとなります。

また一般的なプレハブと比較し、R値(熱抵抗)が8程度と高めの断熱性があります。上記のコラムでも取り上げましたが、Core Compositesは軍事用シェルターも取り扱っており、断熱性と強度/剛性のバランスのいいガラス繊維と、断熱性の高い発泡材を組み合わせているのがその理由と考えられます。

 

上記のような人を構造物内に入れて保護するという場合に重要なのが難燃性。上記のシェルターではマトリックス樹脂に難燃性のあるフェノール樹脂を用いている可能性があります。

FRPは基本的に燃えやすいという性質があるため、人が内部に入る構造物にFRPを用いる場合、難燃性に注意する必要があります。難燃性については様々な技術や製品があり、過去には以下のようなコラムで取り上げたことがあります。

難燃性を有する熱硬化性プリプレグ GMS EP-540

バサルト繊維とポリイミドを組み合わせた 超耐熱FRP

 

このようなシェルターにFRPが活用されることで、迅速に戦争前線にいらっしゃる一般の方々が避難し、または必要な治療を受けるための場所を提供するということも、寒さの厳しい東欧においてFRPが貢献できる役割の一つなのかもしれません。

 

 

軍需というと攻撃を思い浮かべる方も多いかもしれません。

しかし必要なのはそれよりも、一番の被害者となる一般の方々をどのように守るのかという「軍需における守備」という観点ではないかと考え、できることを実行に移すことだと思います。今回のコラムが、戦争という状況下でFRPをどのように一般の方向けに活用すべきか、ということを考える一つのきっかけにしていただければ幸いです。

 

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