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新世代の超高弾性ガラス繊維H3 Vol.175

2021-06-15

ここ最近、大きな動きの見えなかったガラス繊維関連技術。

製造拠点や製品ラインナップの集約(連続繊維/ロービングを辞めてチョップ材のみにするなど)はよくききましたが、改めて新しいガラス繊維を開発しようという流れは停滞していたという印象でした。

そういう意味では久々に新しいニュースといえそうです。

OWENS CORNING が H3 Fiberglass という、超高弾性のガラス繊維を開発し、
2022年から本格的に製品展開を開始すると発表しました。

 

これは先週開催されていた JEC Composites Connect 2021 で発表されたものです。
以下のページで情報を取得することができます。

H3 GLASS MEET THE NEXT GENERATION
https://dcpd6wotaa0mb.cloudfront.net/mdms/dms/CSB/10024774/10024774-H3-Glass-Sell-Sheet.pdf?v=1618247510000

公開されている情報をベースに内容を見ていきます。

 

 

最大の特徴はずば抜けた弾性率

H3 Fiberglass 最大の特徴はその卓越した弾性率でしょう。

概ね100GPa程度あるとのこと。

これがどのくらい高いのかというと、
一般的なEガラスで72.5GPa程度、高強度・高弾性といわれるSガラスで84.3GPa程度です。

1.5~3割程度は高い弾性率ということになります。

 

その為、Vfで70%程度であればFRPとして弾性率67GPa程度、同55%でも当該値について54GPa程度は実現できるというのが、リリース記事中のグラフで示されています。

 

 

想定しているアプリケーションは風力発電ブレード

H3 Fiberglassは今年後半からサンプル提供を開始し、
2022年から本格的な製品供給がスタートするため、
まだ具体的に何に使われるかまではわからない状況にあります。

しかし、OWENS CORNING が風力発電をアプリケーションとして強く意識していることは伝わってきます。

洋上風力発電をはじめ、ブレード材の大型化が進むと想定される状況にあって、
高弾性率は不可欠な方向性です。

大型になるほど自重も大きくなり、また遠心力も大きくなるため、
変形を抑えるには高い弾性率が不可欠になるためです。

高弾性の代名詞ともいえる炭素繊維ですが、
これを使ってしまうとその導電性という特性がリサイクルをより複雑なものにするため、
できれば風力発電ブレードの強化繊維はガラス繊維だけで統一したい、
という要望が市場であるのではないかと想像します。

 

 

生産販売の中心地は中国

ここも今の流れでいえば妥当といえます。

風力発電について異次元に巨大市場を有する中国を本拠地とし、
ここで生産を行うようです。

中国の風力発電への取り組みの熱心さは、過去に少し触れたこともあります。

※中国華能集団が 洋上風力発電 を本格的に開始

OWENS CORNING は既に WINDSTRAND(R) 3000A 等の高弾性タイプの材料を中国で展開しており、
H3 Fiberglass はそのさらに次の世代を指しているものと考えられます。

WINDSTRAND(R) 3000A
https://www.owenscorning.com/en-us/composites/product/winstrand3000

 

 

適切な方法で材料を使用してもらうことを目的とした設計技術支援

OWENS CORNING も遅ればせながらですが、
FRPを用いた設計支援という業務を本格的に開始したようです。

この辺りの紹介は、最近の JEC Composites Connect 2021 のセッションでも述べています。

※ OC HP & PINKTANK(TM): Higher performance. Improved design

製品形状モデリングと材料データを組み合わせ、
最適な形状提案を行う、ということを含めた設計業務の支援を行う、
というのがその趣旨です。

やはりユーザーを丁寧に誘導しながら材料の適切な使いかたを解説しないと、
きちんと使ってもらえないという危機感が根底にあるのかと思います。

FRP業界において、
材料メーカーがユーザー側である設計業務に入り込んでいくというのはもはや真新しいものではなく、
むしろ常識になりつつありますが、
比較的腰の重かったガラス繊維業界でもこの辺りの動きが表立って出てきた、
ということが時代の流れやニーズの多様化を象徴しているという印象です。

 

 

炭素繊維と比較したガラス繊維の強みについて OWENS CORNING のコメント

最後に JEC Composites Connect 2021 のオンライン講演において、 OWENS CORNING の担当者が話していたことについてご紹介したいと思います。尚、この講演は上記の動画とは別のものです(現在は非公開です)。

オンライン講演においても、 OWENS CORNING は設計技術支援とH3 Fiberglass を紹介していました。その話の最後に、

「複合材料において、ガラス繊維が炭素繊維と比べた際の強みは何か」

という質問が出ていました。アドリブというよりも、すでに用意された質問だった印象です。この質問に対し、 OWENS CORNING の担当者は以下の3つのポイントを述べています。

・生産量

・価格

・持続性

生産量というのは、既に私も述べていますがそもそも炭素繊維と比較して、世界でのガラス繊維の生産能力がけた違いに大きいということです。当然、生産能力が高いということは材料供給安定性でメリットがあります。

価格は言うまでもありません。炭素繊維も大分下がってきましたがまだガラス繊維のそれに比べれば数分の1程度です。もちろん製品を作るという一連の工程を踏まえた場合、強化繊維の価格は言うほど高いとは言い切れないケースが多いことも念頭に置いておく必要があるでしょう。大量生産が一般的でないFRPにけるものづくり全体でいえば、人件費の競争の方が激しくなると考えています。人件費の高い日本にとっては不利な状況かもしれません。

持続性というのは炭素繊維に比べ、生産に必要なエネルギーが少ないということが述べられていました。 High Energy Performance という言葉で表現されていましたが、要は単位生産辺りに必要なエネルギー量が少ないということが主張の趣旨でした。

 

上記の主張に大きなずれは認められず、個人的には概ね合っているかと考えています。いずれにしてもこのような見方を知っておくことは、FRPということを考える際には必要な観点というべきかもしれません。

 

 

 

FRPで用いられる強化繊維は、
現段階では間違いなくガラス繊維が主役です。

流通量の桁が2つ違うことを考えれば当然といえるかもしれません。

しかしそれ故、最近は新しい材料が出てきていなかったこともある中で、
今回の OWENS CORNING の取り組みは大変興味深かったといえます。

 

ガラス繊維の新たな取り組みの一つとして、
ご参考になれば幸いです。

 

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