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FRP製風力発電ブレード驚きの廃棄量予想と求められる取り組み Vol.174

2021-05-31

FRP製風力発電ブレード驚きの廃棄量予想には注意が必要。いつかは廃棄物となる。

FRP製風力発電ブレード驚きの廃棄量予想と求められる取り組み、ということについて述べてみたいと思います。

これまで何度か取り上げてきた風力発電。以下のようなコラムはその一例です。

※ Nordex社とCarbon Rotec社によるFRP製風力発電ブレード開発提携

※ Vestas が2040年までに廃棄物ゼロの風力発電ブレードをリリースすることを発表

※ FRP学術業界動向 – NCF を用いた 風力発電 ブレード製作自動化検討

風力発電機で最も大きいブレード材は1970年代からFRPが使われてきています。

これは大型のほどトルクが大きくなり、
発電容量が大きくなるという原則から、
FRPの軽量、高剛性という特性が適している、
という設計思想に由来するものです。

しかしながら、長寿命のFRPと言えどもいつかは寿命がきます。

この寿命を迎えたFRP製風力発電ブレードによる廃棄物問題が、
地球規模の問題となるのではないか、という指摘が今回取り上げる題材となります。

Re-Wind Network team が Composite World という、
FRP関連のメディア向けに執筆した内容になります。

 

以下でその記事を読むことができます。

Defining the landscape for wind blades at the end of service life
https://www.compositesworld.com/articles/defining-the-landscape-for-wind-blades-at-the-end-of-service-life

 

上記の内容は私が過去に何度か触れた危険な現状を、
より明確にかつ提案も含めて述べられた内容となっています。

上記の記事の概要を解説し、
技術の観点からやるべきことについて考えてみたいと思います。

 

急増するFRP製風力発電ブレード廃棄物

仮にFRP製風力発電ブレードの寿命( EOL : End of Life )が15年、
1MWの発電量に対して用いられるブレード重量が14トンと想定した場合、
現在年間100万トン程度の廃棄物は2034年には900万トンと10年強で9倍に激増するというシナリオが想定されています。

これはかなり厳しめの想定らしく、
一般的には EOL は20年、発電量あたりの廃棄物量は 10トン/MW とのこと。

しかし仮にこの後者の想定だとしても、2019年において全世界で稼働している風力発電機による発電量は、652,190MW であり、純粋に今稼働しているものが少なくとも20年後には廃棄されるとすると、総計で 6,521,900トンという莫大なFRP製の廃棄物が生じることになります。

遅かれ早かれ風力発電由来だけで、数百万トン単位のFRP廃棄物がでるのは避けられないのです。

 

これに近い話は4年以上前に以下のコラムでも述べたことがあります

※ GFRPに近い将来求められる リサイクル

 

風力発電ブレードで考慮すべきポイントについて

前出の Composite World の記事を参考に、ポイントとして述べられている点について言及します。
この記事では以下のことがポイントとして述べられています。

– What does end of life (EOL) mean?
→FRP製風力発電ブレードの寿命とはなにか?

– What does recycling mean?
→FRPのリサイクルというのは何を指すか?

– What time frames should we consider?
→どのような時間軸でFRP製風力発電ブレードの廃棄を考えるべきか?

– How to calculate blade mass or volume?
→FRP製風力発電ブレードの量や体積はどのように計算すべきか?

– What are the units, where is the blade?
→FRP製風力発電ブレードの単位何か、また当該ブレードの廃棄場所は?

– How to move forward?
→今後進むべき方向性は?

どれも興味深い内容ですが、
私が特にポイントとして考えたことについて概要を述べたいと思います。

 

What does end of life (EOL) mean?

個人的にはここが最も重要なポイントかと思います。

世界的にはEOLを15年から30年と決める例が多いらしく、
また多くが20年として設定しているようです。

機能性が担保されるのであれば場合によっては40年まで延長する、
より規制の緩い他国などに転売するという動きもあるとのこと。

一方で、発電能力を高めることを目的にブレードのサイズを大きくするという流れもあり、
使えるブレードを更新のために廃棄するということもあるようです。

さらに全体の2-5%くらいは落雷をはじめとした外的要因や、
材料劣化、腐食、設計不備等により設定寿命よりも短い段階で廃棄せざるおえないものもあるとのこと。

会社によっては、より低コストでリサイクルできるまで倉庫などで保管している例もあるそうです。

 

What does recycling mean?

現段階ではFRPの燃焼によるサーマルサイクルはリサイクルとは見なされていないようです。

風力発電ブレードに用いられるFRPが含有する体積分率で50%程度の繊維に限れば、粉砕の上、セメントに混ぜるというマテリアルサイクルが主体であり80%近いリサイクル率(データ背景の詳細不明)が達成しつつある一方で、マトリックス樹脂の産業レベルでのリサイクルは実現していないと述べられています。

ただし、この工程では強化繊維が炭素繊維の場合、
セメント製造設備に悪影響を与えるため、
分別することが求められるとのことです。
ブレード材の主な材料であるガラス繊維は問題ないようです。

まだ一部ですが建築業界やインフラ業界では、
FRP製ブレード材をそのまま再利用するケースがあると述べられています。
ただし、詳細に関する記述は無く、恐らく追加工をするなどして、
構造部材の一部として用いられるものと推測されます。

いずれにしても上記のリサイクルに関する取り組みは、
事業性という観点で疑問符が付くのが現状とのことです。

 

What are the units, where is the blade?

ここでのポイントは、

「FRP製ブレードは金属との複合体である」

ということです。

例えばブッシュ、ボルトなどの付け根付近には多くの金属部品が使われている上、
落雷対策としてアルミや銅も使われています。

これらの重量はブレード全体の10%にも及ぶといわれており、
純粋にFRPの廃棄量を算出するにあたっての障害となるとのことです。

 

How to move forward?

結論的な部分をいうと、

「FRP製風力発電ブレードのメーカーとユーザーが、廃棄まで含めた管理を共同で行う必要がある」

ということのようです。

上述したブレード材の廃棄量は予測精度に問題があり、
EOLの具体的な設定、ブレードに用いられている金属部品の重要の影響や実際の廃棄量はもちろん、
寿命延長や転売等のルートは追い切れていないため、
実際はより多くの廃棄物が生じる可能性もあります。

そのため、材料を販売する企業、それを使ってブレードを作る企業、
それらを販売する企業、実際に運営する企業などが連携し、
今どのくらいのブレードが用いられており、
実際に運用されているのはどれか、寿命延長されたのはどれか、
廃棄されたのはどれか、また廃棄方法は何かということを把握することが第一歩とのことです。

この辺りの自主的な取り組みが機能しない場合は、
法規制という形でルール作りが決められていくことになるだろう、
という予想で締めくくられています。

 

本記事で考えるべき技術的な観点とは

今回の記事について技術的観点に注目の上で私見を述べたいと思います。

まずEOLについてですが、技術的背景が脆弱ではないかというのが個人的な考えです。

FRPの取り扱い経験のある多くの企業で、
動的疲労試験等の寿命評価を中心とした技術評価知見が皆無である、
というのがその証拠とみています。

遠心力のかかるブレード材の寿命評価においては、
経験則はもちろんですが、使用するFRPの繊維とマトリックス樹脂、
積層配向、繊維体積含有率等で指定した動的疲労試験は必須です。

この際の応力比設定も重要でしょう。
何も考えずに0.1に設定するのはあまりにも短絡的です。

材料データによる疲労寿命曲線を作成した上でCAEによって想定される定常応力を算出し、
20年や30年という長期サイクルに対してどのくらいのマージンを有するのか、
ということを考えるのが設計の基本ですが、
この辺りはあまり顧みられることなくFRPブレードは作られ続けているのではないでしょうか。

 

またリサイクルについても、その最終形態といわれる繊維と樹脂の分離は大変難しい技術です。

冒頭に紹介した記事でも述べられている通り、事業性に疑問符が付くものが多く、
それ以前に技術的にもパイロットスケールを脱していません。

この辺りは以下の紙面での連載で詳細を述べているので、
ご興味ある方はそちらをご覧ください。

※ 「 機械設計 」連載 第十六回 FRPリサイクル の現状と課題、そして必要な取組み
https://www.frp-consultant.com/2020/03/11/composite-recycling-forecast/

 

 

再生可能エネルギーとして注目されている風力発電。

しかしその行く末まで目を向けている人は少ないのではないでしょうか。

どうしたら持続可能な事業となるのか。

この辺りはFRP業界としても国を問わず、早急に考えるべきことであると思います。

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