新年のご挨拶 令和3年
FRP Consultant 株式会社のHPをご覧の皆様におかれましても素敵な新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
昨年は COVID-19 に世界が翻弄された1年だったと思います。ただ、当社の顧問先であるクライアント企業に限定してみてみると、すべてが悪い方向に動いているというわけではなく、新しい取り組み、そして何より危機感を持っての本当の取り組みが際立ってきているという印象です。
業界全体でみると、そもそも2018年後半から下り坂の状況が続いており、航空機の低迷によってそれがより加速したという印象はあります。特に、FRPで比較的堅調だった航空機業界に大きく依存していた企業は、ここに来て戦略転換を求められるというスピード感と柔軟性が強く求められる状況に置かれていると考えます。
ただ、上記のような下り坂状況は概ね底が見えてきていること、そして、この状況がかなりの長期間続くということがわかってきたこともあり、少ないチャンスをものにして上を目指そうという取り組みが増えてきているとも感じています。
更には日本政府が現政権でかかげた「グリーン成長戦略」は、FRP業界において一つの分かれ目になるかもしれません。洋上風力発電が重点分野の一つとして指定されているからです。
洋上風力発電のようにかなり大型の風力発電ブレードにおいては、極めて高い遠心力がかかる上に、支える支柱を簡略化する、風力によって得られた力をできる限り効率よく回転運動に変換する必要があることなどから、軽量・高剛性のFRPの適用動機が極めて明確なアプリケーションの一つです。特に大型なものについては、剛性の担保の観点から炭素繊維でなければ持たないというのが一般的な考え方です。
※洋上風力発電に関する関連コラム
風力発電ブレードの長寿命化を目指す DURALEDGE project
しかしながら風力発電については中国の独壇場となっており、Goldwindをはじめとした世界的な風力発電機のメーカーが乱立し、中国内での風力発電自体のウェイトも高まっています。2019年には中国国内だけで4000億kw/hに達しており(参照元:AFP BB news)、その規模はけた違いといえます。
このまま海外から風力発電設備を購入するだけになると、メンテナンスなどのアフターサービスの観点から不安が残ることからも、これを機にある程度内製化するという取り組みも必要になってくると思います。
内製化において特に重要なのは、異方性を理解した構造設計と、発電効率を高める発電機、必要に応じて電力を保管する蓄電、さらにはそれを適材適所に配電する送電システムです。日本のFRP関連企業としてはものづくりというよりも、冒頭の構造設計の部分をきちんと理解し、適切なものを適正の価格で製造するという司令塔としての立ち位置を確立できるかが勝負だと考えます。
人の移動や接触が制限されるということが当たり前の現代で、どのように産業として存在価値を示していくのか。
そのような高い視点での取り組みが法人や組織単位だけでなく、個人レベルで求められていることを理解の上、日々精進することが必要になっていると思います。
本年も何卒よろしくお願い申し上げます。
令和3年 元旦
FRP Consultant 株式会社
代表取締役社長
吉田州一郎