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CFRP表面へのめっき技術 Vol.162

2020-12-14

FRPの中で炭素繊維を強化繊維としたCFRPは、
強化繊維そのものにある程度の導電性があるのが特徴です。

しかしそれでも金属と比較すると電気抵抗は100?1000倍は高いため、
CFRPとしての導電性は高いという表現は難しいのが現状です。

FRPの導電性については、過去に以下のコラムでも述べたことがあります。

※ はじめてのFRP-炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の 導電性 について

このような状況において、日本企業が産総研と一緒にCFRPのめっき技術に取り組んでいるというニュースが、
地方紙に掲載されていました。

 

この技術は埼玉県にある吉野電化工業という企業で検討が進められているようです。

吉野電化工業については以下のページで概要を見ることができます。

http://www.yoshinodenka.com/index.php

 

この企業はめっきを生業としている企業で、
例えば以下のような電磁波シールドめっきなど、
機能材としての軸を見据えた製品も世に出しています。

http://www.yoshinodenka.com/plating/technology/03.html

それ以外にも、

・硬質六価クロムめっきに代わる微粒子分散複合めっき

・ゲルめっき

・高耐食性高光沢黒色めっき

・湿式法による光触媒性能を有する酸化チタン

といった興味深いテーマに取り組んでいる企業です

この辺りは以下のページに概要が書かれています。

http://www.yoshinodenka.com/r-d/02.html

 

CFRP導電性を付与したい動機

めっき技術 をFRPに応用したい一番の理由は耐雷性

(Photographed by Johannes Plenio)

CFRPに導電性を持たせたい動機として、

「落雷対策」

が挙げられています。

FRPへの落雷対策については、過去のコラムでも取り上げたことがあります。

※ FRPの 落雷 対策を考慮した 自動積層
https://www.frp-consultant.com/2015/04/17/lightening-damage-solution-automated-dynamics/

上記の話は、積層材であるテープに銅メッシュ等の導電性材料を予め一体化させ、
それを積層するというものでした。

また、以下のコラムではこのような導電媒体のFRPとの一体化により、
線膨張係数の違いによる熱変形と応力の発生についても触れたことがあります。

※ FRPと金属、塗装 複層構造 の熱変形シミュレーション

このような背景も踏まえ、めっきにより表面に導電性を持たせ、
CFRPの破損を防像というのがその狙いにあるといえます。

 

CFRPへの めっき技術 概要

CFRPへのめっき技術としては、
産総研とも連携しながら進めているようで、
以下のような情報も過去には出されています。

※ 炭素繊維強化樹脂(CFRP)への密着性に優れためっき方法を開発
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2017/pr20170309_2/pr20170309_2.html

 

上記の情報によると、今回の技術の主体となるのは、

「プリプレグに対する無電解めっき」

とのこと。

 

このような狙いは元々あったようですが、
従来の無電解めっきではCFRPのマトリックス樹脂がめっき液に溶けだし、
その結果としてめっき液が失活するという課題がありました。

この課題を踏まえ、プリプレグ表面を湿式処理して安定化させ、
さらにパラジウムコロイド触媒のナノ粒子を樹脂表面に固定化させたことにより、
上記のマトリックス樹脂の拡散を抑制したとのことです。

湿式処理については、

「樹脂成分によるめっき液の失活を防ぐため、数分間の水溶性液体による安定化処理を行う」

と産総研のページには書かれているものの、詳細はわかりません。

上記のプリプレグに銅をメッキした結果、
落雷試験でも母材への損傷が著しく低下したようで、
その妥当性も裏付けられたとされています。

このようにして形成された金属膜はエッチングなどの下処理をしなくても密着性が高く、
保護層としての役割は果たせると期待されているようです。

さらに延性材料である銅が母材であるため、
形状追従性が高いというのも強みかと思います。

吉野電化工業のHPによるとまだ開発中で、数年後に詳細のプレスリリースを行うと述べられています。

 

FRPへのめっきについて

今回紹介した技術は大変興味深く、
FRPの今後の新たな展開へのヒントを与えるものであると考えます。

今回の取り組みに対する背景としては、

「航空機や自動車、エネルギー分野(風力発電用の風車のブレードなど)では耐雷性が必要」

という観点が書かれています。

自動車の外板にFRPが使われることはあまりないと私個人的には考えているため、
耐雷性を必要とした自動車用途というのは今一ぴんと来ていませんが、
航空機や風力発電は確かに不可欠な要件の一つです。

以下の産総研のページによると、

「30 kAの直撃雷インパルス電流で試験したところ、
銅箔を貼ったCFRP板では約30 mmの大きな穴があき、
大きな損傷を受けたが、表面に銅めっき膜を形成したCFRP板では損傷範囲は、
数mmにとどまり、耐雷性が向上していた。」

※参照元
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2017/pr20170309_2/pr20170309_2.html#d_1

と書かれており、耐雷性の向上は認められていると考えます。

ただFRP表層に金属を用いる場合に気を付けなくてはいけないことがいくつかあります。

まずは、

「金属の腐食」

です。

FRPは基本的に金属より耐薬品性に優れるケースが多く、
腐食環境にさらされやすい化学工場等ではあえて金属を避けてFRP等の有機系材料を使うのが、
その背景にあります。。

屋外使用の場合は酸性雨などの関係で酸環境にさらされることも多く、
FRPはこのような環境下での使用に適していると考えます。

しかし最外層を金属でめっきすると、その金属自身が腐食をすることもあります。

部分的な腐食であれば問題ありませんが、
その範囲が大きくなると腐食した金属が脱落する可能性もあります。

このような事象を避けるためには塗装等の対応が必要になります。

 

さらに、金属とFRPでは線膨張が違います。

この線膨張の違いによって、
冷熱サイクルがかかるとFRPと金属の界面で応力が発生する可能性もあります。

銅などの金属は破断伸びが大きいため形状に追従するかもしれませんが、
一度、塑性域である降伏まで力がかかると、
冷えて再度縮んだ際にめっき部分がしわになったり、
最悪の場合剥がれるという可能性もあるかもしれません。

 

それ以外にも航空機や風力発電では、高速の空気が通過するためエロージョンが発生します。

このような外的環境に対する対応も求められると考えます。

 

恐らく、この辺りは重々承知の上で各種検討が進められていると想像しています。

 

 

いかがでしたでしょうか。

今回紹介した事例では、今まであまりFRPに関わってこなかった企業が取り組んでいるという特徴があります。

FRPとこれまであまり関係が無かったからこそ、
斬新な目線での取り組み、そして新しい技術の創出ができるのではないでしょうか。

今一度、自社の取り組み領域を振り返りながら、
異なる視点で何か考えられないか、
という意識が重要になっていると考えます。

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