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リサイクル 性を考慮した自動車バックドアへのFRP適用

2018-09-17

自動車部品サプライヤの大手の一社である Magna が熱可塑性樹脂を主体とした リサイクル 性を考慮した製品に関するプレスリリースを行いました。

Magna のプレスリリースはこちらのページで見ることができます。


リリースに関連する動画もアップされていますので、
興味ある方はそちらもご覧ください。

 

同様のプレスリリースは JEC や Composite World といった業界主力紙にも掲載されていました。


上記の動画を見てみるとわかりますが、
部品構成がシンプルになっている一方、
一つ一つの部品が大型化しています。

 

中国の GAC Component Co., Ltd. と 熱可塑性材料を中心とした Lift gate 生産に対応するため Joint Venture を始めた成果が徐々に出始めているのかもしれません。2018年4月にリリースされた本内容の記事はこちらからご覧になれます。

 

自動車業界では材料供給安定性の観点から樹脂単体の部品に加え、
ガラスの長線維ペレットであるLFTが主軸です。

LFTについては以下の記事で過去に述べたことがありますので、
合わせてごらんください。


Solvayが提案する高機能ポリアミドの LFT
 

ただMagnaの担当者のインタビューを色々と調べてみたところ、現段階では強化繊維としては炭素繊維を用いているという見方が自然かもしれません(実際はよくわかりませんが)。

 

Magna は今をさかのぼること4年前のリリースの時点で、
BMW i3 のバックドアをFRPで作ったということを公開していることは知られています。

その時のリリース内容は以下で述べられています。

https://www.compositesworld.com/news/magna-international-producing-composite-liftgate

当時は熱硬化性のマトリックス樹脂を主体としたものであったと推測しますが、
それなりの時間をかけて実績を積み上げてきたことがわかります。
(後述しますが、同じくらいのタイミングで熱可塑性材料を用いたバックドアの適用を開始しています)


では今回リリースされたものはどのようなものなのか。
そして、それを踏まえどのようなことを考えなくてはいけないのか、
ということについて述べてみたいと思います。

 

好調なSUV向けのバックドアに熱可塑性樹脂とFRPを適用


四輪自動車には様々な種類がありますが、
近年は原油価格の下落と安定化(不安定要素は当然まだありますが)を背景に、
SUVが好調です。

自動車というのは一般的に上の部分ほど、
また最前部や最後部を軽量化するほど走行安定性が向上するということが知られています。


そのためFRPをはじめとした軽量化材料は上記の領域に使おうと取り組まれているのが一般的です。


その中で特に適用先として注目されているのがバックドアです。


比較的大型のものが多いため軽量化効果が大きいこと、
そして安全性をはじめとした各種要件が比較的厳しくないものとして選ばれていると聴いたことがあります。


バックドアにFRPを使うという話はいくつか過去にご紹介したことがあります。

 

プリウス PHV に採用されたCFRP製バックドア
 

Mercedes SL Roadster のラゲージドアへの SMC 採用
 


前者のプリウスPHVでは軽量化を主体として炭素繊維強化のSMCが主材として選択されており、
Mercedes SLでは電波透過性の観点からGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)のSMCを用いています。

 

このように自動車業界においてバックドアにFRPを適用する、
というのは本命路線の一つといわれており、既に適用が始まっています。

特に欧州ではこの手の取り組みがかなり盛んである印象です。

 

Magnaの熱可塑性バックドアの適用先

適用先の車種としてはSUVが中心であり、
熱可塑性の材料を基本とした Magna のバックドアが初めて適用されたのは 2014 Nissan Rogue とのことです。

( The image is referred from https://www.kbb.com/nissan/rogue/2014/ )


恐らくここを皮切りに様々な課題の抽出とその解決、
それらを踏まえた製品設計の最適化を踏まえ、
冒頭のリリースにつながったものと考えます。


その後、本年リリースされる新車種 2019 JEEP(R) CHEROKEE 、2019 Acura RDX への適用が公開されています。


– 2019 JEEP(R) CHEROKEE


( The image above is referred from https://www.jeep.ca/en/cherokee/2019/galleries/exterior )


– 2019 Acura RDX

( The image above is referred from https://www.acura.com/rdx/gallery )


 

当然ながらどちらの車種の紹介でもバックドアについて特筆されているわけではありません。

JEEP(R)はエンジンとサスペンション、Acura RDX は駆動制御といった技術に関する話が述べられていますね。

 


上記で述べてきた今回の発表を踏まえ、どのようなことを考えなくてはならないのでしょうか。

 

 

自動車業界適用に向け不可避な リサイクル という考え方とその盲点

最大のポイントはここだと思います。

自動車というと量産性やコストという方がいまだに多いですが、それ以前に

「リサイクル性」

が求められているということについて理解していない方が多いのが現状です。

マテリアルライフサイクルをトータルで考慮するのは大量の製品を世の中に出す企業においては必須の考え方であり、自動車業界はその意識が特に強い業界の一つです。

熱可塑性樹脂は既に重合が終わっている高分子が架橋点を経ずに絡み合った構造であるため、
溶融と固化という可逆的相転移が可能です。


特に溶融するということが重要で、
様々な形状や形態への変更が比較的容易なのです。


ただしリサイクルというのは言うほど簡単ではありません。


例えば材料を材料として再利用するマテリアルリサイクル

全く同じ材料で全く同じ色合いのものが大量にあれば非常にリサイクルしやすい一方、
熱可塑でも低融点であるオレフィン(PP等)から耐熱性のあるエンジニアリングプラスチック(PA6等)まであります。

さらに高耐熱になればスーパーエンジニアリングプラスチック(PEEK等)も出てくるでしょう。


このような材料を分離しながらリサイクルするというのはかなりの手間であり、
アロイにしようと思って適当な材料配分にすると溶融や成形が困難になります。

もちろんリサイクル前後で全く同じアプリケーションへの適用ということは難しいとしても、リサイクルするアプリケーション先を低グレードに変更する、
といった対策により乗り越えることは可能です。

言ってしまえば熱可塑性材料のマテリアルリサイクルの理想的な形はPETボトルですね。

パッケージをはがせば構成材料はPETのみです(飲み口の白い部分もPETです)。このくらいまで材料をシンプルに分離できればリサイクルも現実的となってきます。

 

一方で燃やすことによるサーマルリサイクルも課題があります。

温室効果ガスの一種であるCO2の排出はもちろん、
それ以外のガス発生の可能性もある焼却処分はあまりイメージが良くないかもしれませんが、
エネルギーを上手く取り出せることができれば立派なリサイクルです。


しかしFRPの場合、ガラス繊維などの無機繊維が入っています。

これらは当然ながら異物として存在してしまう上、
焼却炉内の残留物になる可能性もあります。

こうなるとサーマルリサイクルも難しくなってしまいます。

このようなことに対応するため、薬剤や加熱処理によりマトリックスと繊維を分離しようという試みが世界で進められています。


いずれにしても上記の通りリサイクルは重要である一方、
取り組みはまだ道半ばなのです。


尚、リサイクルに関して炭素繊維強化プラスチック( CFRP )のリサイクルが注目されていますが、
私個人的には圧倒的にガラス繊維強化プラスチック( GFRP )のリサイクルの方が重要と考えています。


Strathclyde University (https://www.strath.ac.uk/)での、ReCoVeR(Regenerated Composite Value Reinforcement)をはじめとした海外の取り組みなどは、以前以下のコラムでもご紹介したことがありますので合わせてごらんください。


GFRPに近い将来求められる リサイクル
 

 

 

いかがでしたでしょうか。


今日は熱可塑性材料/FRTP性のバックドアを一例に リサイクル の観点の重要さについて述べてきました。

売り上げ規模の大きな自動車業界はFRP業界では常に適用先として注目されています。

しかしその際にポイントとなるのがリサイクル性。

本観点も十二分に考慮しながら適用を進めるということがFRP業界としても重要だと考えます。

 

ご参考になれば幸いです。

 

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