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はじめてのFRP- FRP成形品の 寸法検査

2018-05-08

今日のコラムでは、はじめてのFRPとして FRP成形品の 寸法検査 はどうすればいいか、
ということについて考えてみたいと思います。


FRPについては得てして材料、そして成形加工に関する話題が中心になることが多いです。
これはわかりやすい、または何かをマイナーチェンジすれば新しい技術と認識されやすい、
という潜在意識が背景にあるのではないかと思っています。


その一方でFRPを使用するのであれば最終的に重要なのはやはり成形体。


そしてこの成形体の評価に必須なものは間違いなく非破壊検査です。

非破壊検査については過去に以下のようなコラムで書いていますのでご参考にしていただければと思います。

はじめてのFRP- 非破壊検査 1

はじめてのFRP- 非破壊検査 2

 


もう一つ、FRP成形品に対して重要な技術。


それは、


「 寸法検査 」


です。

 

寸法検査というのはその名の通り、様々な製品の長さ、幅、厚み、
そしてそれらの一定範囲での表面形状変動を見る輪郭度、真円度、といった
幾何公差で定義される寸法も含まれます。

まずは何故寸法検査を今日のコラムで取り上げようと思ったのか、
という背景から話を進めてみたいと思います。

 

寸法検査を行うということは盲点になりやすい


部品点数の削減や、FRP固有の異方性を活用するために様々な三次元複雑形状を設計したものの、
それをどのように計測すればいいのかわからない。


これは私が寸法検査について話をするとよく話題になることです。

多くの企業や研究機関と話をしていると、
形状計測に関する意識が薄いことに驚かされたのは一度や二度ではありません。

また量産で実績のある企業や業界にあっても、

「そもそも 寸法検査 を行うということに意識が向いていない」

ということもしばしばです。

こういう背景もあって寸法公差や幾何公差が全く入っていない、
という普通ではありえない図面が多く出回るのではないかと思います。


寸法を管理しなくていいのであればそれで構いませんが、
実際に組み立てようとすると、


「部品が歪んで組み立てられない」


ということになります。


結局のところ問題が起こってから問題を意識するという後手後手の対応となるのが現実、
というケースが多々あるのです。

樹脂と繊維の組み合わせであるFRPは、
均質材と異なり異方性もあることから、
必ずと言っていいほどひずみが生じます。

そしてひずみはその製品の断面剛性が低いものほど顕著であり、
薄肉化による軽量化を目指すほどひずみやすいことを示唆しています。


また部品点数の削減という観点からさまざまな部品を組み合わせた形状とすることで複雑形状になることも珍しくありません。


このような複雑形状の製品は、複数部品の形状機能性を一体化させるため精度が厳しいことが多く、
精度がずれることにより組み立てられないこともしばしばです。

以上の通りFRP成形体について寸法検査は意識が低く、重要視されない一方で、
FRPの異方性を主因としたひずみにより後に寸法の狂いが問題として顕在化するというケースが多いといえます。

 

寸法検査技術の概要

では実際に寸法検査技術としてはどのようなものがあるのでしょうか。
代表的な技術をご紹介し、それのFRP成形体への適用ポイントを述べてみたいと思います。

 

ノギス・ハイトゲージ・尺など

最も基本的な計測技術(計測手段)と言えます。


結論から言ってしまうと


FRPの成形体の寸法検査はすべてこのような基本的な計測技術で完結できることが望ましい


ということになります。

やはり量産でも抜群の安定感を発揮します。

さらに計測技術としても高いノウハウや設備投資が必要なく、
コストパフォーマンスも高いといえます。


やはり歴史が長くシンプルなものというのは最後の砦としての機能も発揮します。


その一方でこの手の技術を活用するためには、
計測しやすい計測面と成形品が安定的に座る基準面が必須。

言い換えるとノギスなどの古典計測技術では計測できる形状にはかなり制限があるため、形状設計者のセンスが問われるのです。

 

形状設計者がどこまで検査を見据えて形状を決めるのか、
というところがポイントとなります。

 

CMM(三次元測定機)

(The image above is referred from https://www.zeiss.com/metrology/products.html)

精度でいえば文句なしに最高峰です。

しかも冶具設計などで成形品が固定でき、かつプローブが接触できる前提であれば、
どのような複雑な形状であっても計測できる優れものです。

大手メーカーは日本でいえばミツトヨでしょう。
HP上では座標計測機器として書かれています。

http://www.mitutoyo.co.jp/


CMMは Coordinate Measuring Machine の略です。
座標という考え方を基準とした寸法検査ですね。
そのため、座標計測機器という表現になっています。


海外では例えばHexagonなどがあります。
http://www.hexagonmi.com/ja-JP/products/coordinate-measuring-machines/bridge-cmms

後述するレーザーと組み合わせているケースもあるなど、
比較的柔軟な姿勢でソフトとハードを製造販売している企業ですね。
様々な企業をM&Aしている故、技術の多様性に富むというのも強みといえます。


CMM は二点間であれば距離を測れますし、
3点以上プローブが触れられれば面も形成できます。

もちろん4点以上あれば立体形状も理屈の上では計測できます。


これにより幾何公差の計測が可能になります。


プローブの先端の大きさにより計測できる面の大きさ(最小サイズ)が異なる、
離れた場所の座標データを取得するためには製品に接触しないようにプローブのパスを設定するなど、
CMMの計測条件設定に高いスキルが必要です。

CMMの基本については以下のものを一度読んでいただければと思います。
https://www.iri-tokyo.jp/uploaded/attachment/2653.pdf

FRP成形体に限らずCMM最大の欠点は検査機器が比較的大きめであること、
そして計測に時間がかかる傾向があるということです。

大量生産するFRP成形物に適用するのは極めて困難といえます。
(ただし大型の成形体の少量生産であれば量産でも十分に機能します)


また上述の通り、

「計測する人物に高いスキルとノウハウが必要」

ということも忘れてはいけません。


CMMを扱える人のスキルは本当にばらつきが大きいです。
できる人は非常にできますが、
場合によっては素人当然でCMMを扱う人もいます。

様々な現場で議論や監査をしていると唖然とする言動をする人も少なくありません。


私も海外でこのCMM計測でものすごい大変な思いをしました。

CMMの担当者が複雑な形状に対して計測するプログラムを組み立てることができず、
またプローブが製品冶具に接触することが頻発するなどしたことで、
量産出荷に間に合わなかったのです。


検査に対して非常に注意を払うようになったのも、
このような最前線での実体験に基づいているといえます。


いずれにしても量産では使いにくいものの、
研究開発段階で寸法を把握するにあたってはCMMは絶大な力を発揮します。

 

レーザー

(The image above is referred from http://www.laser-scanning.co.uk/about-laser-scanning/laser-scanner-vs-white-light)

最近注目を浴びている計測方法の一つです。

三角測量、光飛行時間測定( Time of flight / TOF )、干渉( Phase shift )という大きく分けて3つの原理を使った測定法があります。
一般的には近距離の測定を中心に三角測量原理を応用したものが多いようです。

三角測量: レーザー光源、受光センサ、測定対象への照射接点で三角形を形成し、三角法を用いて対象物の位置を計測。

光飛行時間測定: レーザー発光を開始し、それが測定対象物に反射して帰ってくるまでの時間を計測。レーザーの往復した時間と照射方向から対象物の位置情報を算出。広範囲、大型の計測に向いている。

干渉: 変調させた複数のレーザー光を照射し、拡散反射成分の位相差で対象物との距離を計測。多くのデータを短時間で取得できるのが特徴。
(干渉法については、最近の応用物理学会誌でも「マルチチャンネル分光器の新しい波長分解能向上技術」という題目で記事が出ているホットな話題の一つです。干渉縞であるモアレを形状データに換算するようです。)

 

非接触で計測できること、データの密度によっては高速で計測できることから、
(データ密度が高いほど計測に時間がかかる)、
量産後の寸法モニタリングの本命の一つと考えられています。

FRP成形体の計測という観点からも上記の考えに異論はありません。


ただ、レーザー計測には限界があるということも知っておかなくてはいけません。


まず一つ目が当然ながら計測できるのはレーザーを照射できる範囲のみ、ということ。

ノギスで平行面を計測する、CMMで隠れた面をプローブで接触するといったことができません。

あくまで見える範囲です。


そのため、入り組んだ形状のや裏側の形状計測は難しい、または不可能です。

さらにレーザーである程度の精度でスキャンするとデータが膨大になるため、
PCの処理速度が律速になることもあります。


私はレーザー計測機器メーカーの方に話をするときにはあえてある程度細かいものを測定してもらいます。
これは設備の測定限界を見るというのもありますが、
付属するPCでどのくらいの処理速度なのかを確認するためです。

計測できてもデータの換算や積算に時間がかかってしまっては、
CMM以上の検査時間が必要になってしまうかもしれません。

 

そして基準設定も重要というのがあります。

CMMは必ずゼロ点を設定し、
そこを基準に座標空間を形成します。

レーザーは非接触で検査プローブを動かしながら計測するため、
基準が無くベストフィットベースで計測を行うケースが多いです(すべてではないと思います)。

ベストフィットで計測をするとFRPの異方性で歪んだ形状を、
よりいい寸法として計測する傾向があるのです。

 

ここが要注意です。

 

ベストフィットは検査をする際のアプローチとして極めて重要です。
ただし、これにより成形体の変形が過小評価される恐れがある、
ということを理解した上で適用しなくてはいけません。


私もレーザーのベストフィットで計測した製品が、
検査結果では問題なかったが、実際には組めなかったという実体験があります。


やはりここでも苦い経験があるのです。

そしてレーザー計測において最大の問題。

それは、CFRPの黒い面の場合、レーザーの反射がうまくいかないことがある
ということです。


CFRP製品をレーザーで寸法計測する際に、
白色の塗料で塗装しているシーンを見たことがある方もいると思います。

つまり寸法計測の大前提であるレーザーの反射に課題がある場合もあるのです。

 

最近はレーザーも青色のレーザーやより短波長のレーザーも出てきているため、
反射光率は上がってきているという印象もあります。

 

しかし、問題が起こるかもしれないという前提で物事を進めた方が良いと思います。

 

レーザーについてまとめると、
レーザーを適用する際にはレーザーがFRP成形体の面できちんと反射するか、
そして計測した寸法データはベストフィットの結果を基本としたもので問題ないのか、
といったことを事前検証しておく、ということが重要といえます。

 


いかがでしたでしょうか。

 

今日は代表的な寸法計測技術としてノギス等の古典計測技術、CMM、レーザーという代表的なもののご紹介と、FRP成形体への適用における注意点について書いてみました。

 

形のあるものを作る以上、寸法計測は必須というのが技術の基本です。

 

そして寸法検査を行うにはどのような検査技術があり、
それぞれにはどのようなメリットと課題があるのか、
ということを設計段階で考慮することが重要でしょう。

 

見逃されがちな寸法検査の検討においてご参考になれば幸いです。
 

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