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日本繊維機械学会の 秋季セミナー の発表、聴講を経て-2

2016-12-28

前回のコラムに引き続き、日本繊維機械 学会の 秋季セミナー の発表と聴講を踏まえた記事を書いてみたいと思います。


私が聴講した講演(抜粋)に関する感想と、私の発表における会場での雰囲気などについてお伝えしたいと思います。

 

あらたなデザインを生み出す流行の周期と日本語の感性

この発表は最も印象に残りました。
一言でいうと、とても楽しかったです。

技術系の学会なれど、繊維が主な商材であるためファッションとつながりが強いのですね。

言われてみれば「なるほど」ということの連続の発表でした。


発表を行っていたのは株式会社感性リサーチの手塚祐基先生。
時計のデザイン開発出身の方です。


開口一番、

「付加価値ではなく、本質を考えてみませんか」

という会場に対する問いかけがありました。


このプレゼン技術の高さもファッション系の方は人を引き付ける力がありますね。


そしてその次に述べられたのが、


「良いものだからといって売れるわけではない」


そして、

脳の「何となく気持いい(無意識の快、不快)」は性別、年齢、時代、ことばによって違う

とのこと。


だからこそ、

脳の無意識の快、不快の「周期」と時代背景で新しい「流行」を作りだす

と。


これはなかなか心に響く言葉でした。


心理学的な部分も多いですが、腑に落ちる内容でした。

脳の認識回路の説明から入りましたが、これがまた言われてみればその通りでした。

それは、


アナログ気分:長い神経線維を介して複雑な事象を認識する
– 直感、つかみ、情を作りだす


デジタル気分:短い神経線維を介して、近い概念の高速処理を行う
– 計算や空間認識、そして損得勘定のような合理的思考を作りだす


という大きく分けて2つに分類される気分とのこと。


アナログ気分の時はあまりできが良すぎるよりも少し問題があるくらいの方がいい、
複雑なものが比較的受け入れられるようです。

一方のデジタル気分はその逆で秩序を重んじ、簡潔な形状や機能的なメカ、
勝ち負けへのこだわりなどが見られ、簡素なものが受け入れられやすいとのこと。


そして今回の手塚先生の話で最も面白かったのは、

「大衆の気分はデジタルとアナログが一定周期で入れ替わっている」

というものでした。


急激に入れ替わるというよりもsinカーブのイメージのようです。

その周期がおよそ56年。


一つの傾向がデジタルとアナログが入れ替わった1999年。

それまで英語の造語であるウォークマン、やカロリーメイトといった子音主体の内容から、
ドルチェビータ、やわらか肌水といった母音主体へと変わり始めたこと。

子音はデジタル的、母音はアナログ的とのこと。

同じように仮面ライダーも最近は名称が母音ベースのものが多く(鎧武、キバ、電王など)、
ストーリーも複雑なものが多いそうです。

私も子供と一緒にたまに仮面ライダーをみていますが、
敵が味方になったり、敵同士で争ったりと、
やや複雑感が出ており言われてみればアナログ的であると感じます。

因みに今はアナログ期のピーク(2013年)を超え、デジタルに向かっている頃のようです。

 

そしてここからが重要なところなのですが、今後の流行はどのような流れになっていくのかということ。

1985から2012年まではアナログへ向かう時期であり、

多様化、自分本位、ハードよりソフト(コンテンツ重視)

が重宝されました。


自分らしさが重視される時代であり、ユーザーニーズの掘り起こしがマーケティングの使命だったとのこと。


その一方、2013年から2040年はデジタルへ向かう時期であり、

模範か、社会本位、自分より対象(かっこいいものにあこがれる、自分に何ができるか真摯に考える)、かっこつけるためには多少の不便さ、不自由さは許容する

とのこと。


これからの20年超の時代は、トップバリュー、オーソドックス(伝統)、プロ指向、技術やデザインによる憧れの提示が重視され、ユーザーニーズ思考が終わり、技術革新思考へと変わっていくようです。

もちろん憧れの提示には説明も必要ですが、今後は高い技術力やカリスマ、そしてわかりやすさが評価されやすい時代へと突入していくようです。

確かに昨今の北米の大統領選挙の結果や欧州の脱EUの流れもこれを示唆している、
と言われると何となくイメージが沸きやすいかもしれません。

混とんとした中でわかりやすいものに走りがちなのです。

本講演の話をもっと紹介したかったのですが、かなりのボリュームの話ですので概要紹介はこの辺りまでにして、今回の話をFRPに置き換えてみます。


上記の時代の話をベースに考えた場合、FRPの業界にとっては追い風であると考えています。


何故かというと、FRPというのは非常に扱いが難しく、きちんとした製品化にはかなりの技術レベルが必須だからです。
本を読んで、勉強してというだけでなく、自分の枠組みを外し、多くの異業種との協力を得ない限り具現化は困難です。

FRPを取り扱うのは優秀な人材を多く抱える大企業にとってもそれほど簡易な仕事でないことは、何となくはイメージしていただけるのではないかと考えます。


その一方でFRPをある程度扱うことができると、金属では出ない機能性を発現させることも可能です。


これは

「オンリーワンというトップバリューを指し示すための一つの手段」

になりえるのです。


多くの企業ができない中で自社が製品化できればそれは間違いなくトップバリューです。
もちろん、ここで示される機能性についてユーザーを納得させられるものである、というのは前提といえます。

では具体的にどうすればいいのか。


これは顧問先でもよく話をすることですが、


「自社の技術を強みとして顧客を教育、誘導できるようにする」


ということではないかと思います。


本コラムでも何度か述べていますが、FRP業界はまだまだ未熟な業界であり、ある程度大きな声で発言したことが一つの指標となる傾向があります。

そのためこの業界での成功の秘訣は後追いではなく、自社技術を最上位に置いた「けん引」です。


リスクを取りたがらない上層部が大企業を中心に多いですが、この業界で力をつけてきているのはリスクを取ってけん引することを始めている企業です。


手塚先生の話にもあるようにデジタルへの流れが始まっている今、蓄積してきた自社技術をベースにした情報発信をすることこそが市場で求められているといえます。


FRP業界の展示会や学会でも複雑な機構の設備や評価技術に関する言及の割合は低下し、小粒でピリリと辛い企業がどんどん出てきています。

その一方でデジタル時代は生き残りの時代でもあります。

FRP業界で自社はどのような色を出せるのか。


その戦略を明確に打ち出せるか否かがこの先20年までの大きな分かれ道になるかもしれません。

 

CFRP業界に必須の設計スキルと業界参入戦略

こちらは私が発表したものですので、会場の雰囲気についてご紹介したいと思います。

全体的には会場にいらっしゃった方は熱心に聴いていただいていたみたいです。


会場での質問、個別での質問で多かったのはやはり、

「FRPの自動車への適用はどのようになるのでしょうか」

といったものでした。


この辺りは気になる方も多いようです。


もちろん戦略的には色々ありますが、残念ながら万能な正解はありません。

何故かというと自動車といっても4輪なのか2輪なのかでも違いますし、
日本なのか、アジアなのか、欧州なのか、北米なのかによっても違います。

当然ながら企業の体質や文化によっても違うのです。


ただ強いていうのであれば、

「顧客要望に従う」

のではなく、

「顧客を誘導する」

ということが重要である、ということは抽象的ながら万能かもしれません。上記の話にやや被る部分もありますね。


とはいえもちろん言うは易し、行うは難しで、誘導できるだけの知見が自社(または自分)に無くてはいけません。


そしてこの知見は本やインターネット、セミナーだけでは理解できず、

「実践経験」

でしか担保されません。


この実践経験をできる人はFRP業界では極めて限られており、試作や少量生産で終わってしまっているはずです。


まず商品開発の段階で図面の作り込みを十分に行った上で、
材料の開発や基礎評価を行い、材料規格を作成して疲労を含めた設計データを取得し、
そのデータと応力解析や振動解析の実施と単体テストとの合わせ込み、
製品成形加工の試作や検査と、それを踏まえた工程規格の作成、
そして口頭ではなく文書をベースとした工程と管理のシステム構築、
その上で製品(サイズにもよりますが)を1000個以上作る。

 

実践経験の一部を述べると上記の内容になります。
これを理想的には私のように一人で経験することが重要です。
この経験によって業種の垣根を超えられるようになります。
(もちろん、自分ですべてやるのではなく、お願いする部分があってもいいのですが、自分が主担当としてやることが重要です)


そしてさらに重要なのは上記のような産業的な経験だけでなく、
ある程度以上の学術的知見を証明することも重要です。

日本だけの学会ではなく、海外のジャーナルに認められるような論文を書き、掲載させるのです。
第三者である専門家に認められたことを証明するためです。


FRPは理論と実践が強く結びついているものですので、
現場での実践経験を積み重ねながらも、学術業界で認められるような専門性も必要なのです。

そのためメーカー系の顧問先でも指導するのは、

「産業的実践」

に加え、

「学術業界での評価」

をもつこと(非製造業の顧問先は別の戦略を導入しています)。


そして顧問先企業では事業範囲の制限上、経験できない部分を私がサポートする、ということを心がけています。

講演の後に10名近い方が挨拶に来てくださったことを見ると、この業界に対する期待というものを感じます。

残念ながら上記の手塚先生の話などを聴きたかったため、他のFRP関連の講演を聴いていませんが、
盛況であったとうかがっています。


あとはこのような時間とお金をかけて聴きに来てくださるような方々に対し、
何らかの貢献ができるよう自らも精進しなくてはいけないと再認識しました。

 

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