FRP戦略コラム FRP業界固有の障害克服のために
先週は化学メーカー向けにセミナーをやらせていただいた次の日から顧問先の依頼により海外の最前線企業での種々の打ち合わせや交渉に参加するため、海外出張中です。
評論家にならずこのように常に最先端の所で顧問先と共に戦えることを幸せに感じることが最近多いです。
このような最前線で顧問先や相手企業と話をしているといつも感じるのが、
「FRPには固有の文化がある」
ということです。
FRP業界の成長を阻害する固有文化とは
具体的には、
「形を作るという試作に主軸を置いてきた」
ということです。
この文化が今のFRP業界の成長を阻害しているといっても過言ではありません。
世界中の様々な企業とお話をすることがありますが、FRP、特にCFRPについて間違いなく言えることです。
ものづくり業界にいる人間の性として、
「形を見ないと安心できない」
というものがあるようです。
熱硬化でいうとエポキシ樹脂の化学構造がどうで、熱可塑でいえば分子の結晶構造がどうで、繊維基材の構成がどうで、機械特性物理特性がどうで、という設計としては極めて重要な知見が何故か評価されないのです。
というのも評価する人(特に社内や川下の顧客の評価)がそういう話がわからないからです。
そうすると評価してもらうためには形を作った方がいい、ということで形を作ることを急ぐのです。
形を作るというのは本当に形を作るということだけです。
最近も驚いたことがありました。
世界的なFRP業界関連企業(材料メーカー、成形加工メーカー、ユーザー等)が
- 非破壊検査を全く行ったことがない
- 材料規格や工程規格を書いたことがない、または読んだことがない
- 熱硬化と熱可塑の違いがよくわかっていない
- 成形の記録(温度、圧力等)が全くない
- 材料の出荷記録が無い
ということを私から指摘されるまで先方企業の当事者がわかっていなかったのです。
そしてこのような話は世界中でよく聞く話です。
もちろん、日本も例外ではありません。
このような事実に直面するごとに量産をターゲットに見据え、本当の意味でFRPを一つの産業にしようという基礎があまりにも脆弱であるということを再認識します。
FRP業界で20年、30年やっている、という方にお会いすることもあります。
しかしFRP業界はそもそも未熟なため、経験の長さは量産産業構築に必ずしも役立つとは限りません。
むしろ、試作で培った職人気質の頑固な文化が業界の成長(量産を見据えたものづくりへの飛躍)を阻害しているとさえ感じることがあるくらいです。
FRP業界固有の課題を解決するために
ではどうしたらFRPでの量産が可能になるのか。
簡単なことです。
上記で紹介したFRP業界の世界的な企業でもできていないことをできるようになればいいのです。
そしてこれをやろうとすると、
金属材料ベースに構築された現在の産業構造ではなかなか難しい
ということに気がつかれるかもしれません。
ここがポイントなのです。
本障害に直面した時に、
「経験が無いので無理だ」
と思うのか、
「新しい取り組みにこそチャンスがある」
と思うのか。
私の顧問先は程度の差はあれ圧倒的に後者の考え方をしている企業が多いです。
言い換えると現状を打開しようとする危機感があるからこそ私のような外部の力を活用し、自社の強みを高め、前例のない取り組みを行うことで自分たちの後ろに道を作るというモチベーションをお持ちなのだと思います。
やはりこのような新しい取り組みについては年齢が若い方(特に40歳前後前まで)の方が危機感が強いです。
どのような企業の方(業界や会社の規模に関わらず)でも、私に話をききに来る若手や中堅の方々は皆様似たような危機感をお持ちです。
その若手から中堅の危機感に耳を傾け、権限委譲(特に予算とプロジェクト推進の権限委譲)できた企業からこの業界で成功していくことは間違いなさそうです。
本コラムをご覧の皆様の企業はいかがでしょうか。
今一度、FRP業界で勝つためには何が必要なのか考えるときなのかもしれません。