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JEC Innovation Awards Atlanta 2016 vol.2

2016-05-25

今月初めに開催されていた JEC america における JEC Innovation Awards Atlanta 2016 受賞技術を紹介し、それぞれの特徴並びに私から見た課題について言及し、それを踏まえた業界動向をみていくというコラムの2回目です。


JEC Innovation Awards Atlanta 2016 の内容は既に以下のHPで公開されています。

http://www.jeccomposites.com/events/innovation-awards-atlanta-2016/2016-winners

 

1.Automotive ( 自動車 )

A moulding process that utilizes two-sided steel compression

Winner: Magna Exteriors (Canada)
Partners: Polycon Industries (Canada), Barrday Composite Solutions (Canada), Century Tool & Gage Co. (USA)


色々な所でよくきく系列の話です。

Class-Aの表面を実現し、また125℃の塗装工程も耐えられるという成形工程に関する技術です。

従来のせん断エッジによる成形を主体にしながらも外観を大きく改善させ、高速硬化もできるとのこと。

これにはシミュレーションによるプリフォーム形状の最適化や金型形状(特に、キャビティやコアの形状)の改善が効果的だったようです。


詳細はかかれていませんが、最外層に樹脂コーティング層を入れるなどの工程が含まれているのではないかと想像します。


繊維体積含有率があまり高くないとも考えられ、適用範囲が限られる可能性もあります。


私個人的に、この手の話はあまり評価していません。


そもそもFRPを最外層に使うということ自体がコンセプトとしては優れているとは言えないからです。


特に見本にあるようなボンネットは事故の時人がぶつかる恐れの高い個所です。

FRPは衝撃が加わって破壊すると、その部分に鋭利な炭素繊維が飛び出してきます。


これは人に対する殺傷能力向上につながるという恐ろしい事態です。


通常は最外層に有機繊維を取り入れる、または不織布のようなものでコーティングするといった対策が取られるようですが、どれも万全とは言えません。

形を作ることに注力し、FRPを機能材料として扱うことを避けてきたFRP業界の問題の根幹の一つであるとみるべきでしょう。


このような技術が最近でも評価されている時点で、まだまだFRP業界も昔の試作文化から抜けきれてはいないのではないでしょうか。

 

2.E-mobility ( 電気乗り物 )

Innovative design for thermoplastic support frame structures: Implementation of function-integrative hollow structures

Winner: Institute of Lightweight Engineering and Polymer Technology, TU Dresden (Germany)
Partners: Rehau AG + Co (Germany), Storck Bicycle GmbH (Germany)


ドイツでも飛ぶ鳥を落とす勢いの中西部の研究開発機関と比較し、やや出遅れ感の目立つ東側の研究機関の巻き返しといったところでしょうか。

Dresden大学は軽量化技術に1997年から本格的に取り組んでいるため、それなりの歴史があるとみるべきでしょう。

https://tu-dresden.de/die_tu_dresden/fakultaeten/fakultaet_maschinenwesen/ilk


受賞したのは熱可塑性樹脂の射出成形による部分補強を主軸とした、凹形状の構造部材成形技術の開発です。


一言でいうと Over molding technology の一つです。


FRPを部分補強として割り切って使い、熱可塑性樹脂の射出成形による形状賦形と断面形状の最適化による断面係数設計を主軸にしています。


FRPを部分補強として扱うというのは最近のトレンドであり、今回の受賞もその流れを表していると考えられます。

ポイントとしてはどのくらい汎用性、特に柔軟性があるか、と考えられます。


今回議題として挙げられているのは電動アシスト自転車ですが、今回の技術は自転車のような二輪だけではなく、四輪はもちろん、産業機械やスポーツレジャー系にも応用できる可能性があります。


各種業界の設計コンセプトを理解した上で、今回の Over molding technology をどのように応用するのがいいのかを習熟した設計思想をベースに考えられれば適用範囲はさらに拡大していく可能性があります。

 

3.Sports & Leisure

Automated production system for 3D complex, fully recyclable bicycle components

Winners: Cross Composite AG (Switzerland) & C8 Sports (Switzerland)
Partners: Institute of Polymer Engineering FHNW IKT (Switzerland), Toho Tenax (Germany)
 

ランダムリサイクル材料という意味では ThermoPlastic Composites Research Center (The Netherlands) が航空機の部門で受賞したものと同類という位置づけとも考えられます。


欧州、北米では徐々にFRPのリサイクル技術の重要性が認識されてきていることの裏返しでもあります。


この技術でのポイントはFRPリサイクルにおける


「粉砕技術」


のようです。


これまでの機械的な粉砕ではなく、電気的な分解技術をつかっているところです。


このようにして得られたものは機械的なストレスをかけずに繊維を細かくするため材料物性の保持率が高いとも述べられています。


材料の適用例として述べられているのが自転車部品。


自動成型技術をベースにニアネットで成形した自転車のサドルやクランクなどの部品は、金属部材を用いずに十分な強度や剛性を保持しているとのこと。


本技術の課題は航空機部門の受賞技術紹介の時にも述べましたが厚み等のばらつきをどのように管理するかということです。


そして、上記のような電気分解技術を主軸にした炭素繊維のリサイクルは日本でも Ai carbon という企業が電解酸化法で炭素繊維を回収するという技術で事業を行っています。

スポーツレジャーは量は出ないものの、継続してニーズのある業界であることも事実です。


この業界の小さなニーズにきめ細やかに応えていくということも戦略としては必要であると考えます。

 

4.Testing ( 試験 )

"Continuous Peel Test Equipment”: optimizing the tape winding process of thermoplastic composites

Winner: CETIM (France)
Partner: LF Technologies (France)
 

熱可塑性FRPの自動積層における接着剥離強度を連続的に評価できるという手法です。

Cetimは AFPT のヘッドを使った以下のような自動積層技術の研究開発を行っています。


この自動積層された素材の接着(溶着)剥離強度を計測するという技術が今回 innovation award を受賞しています。


これは連続的にかつ簡易的に接着(溶着)剥離強度が計測できるというメリットがあります。


積層工程の最適化という観点からこの手の技術を評価することの重要性に疑いの余地はなく、
しかもその評価を簡易的にできるというのが非常に優れていると考えられます。


量産工程でのパラメータ最適化にはこのような相対比較が可能な評価技術を編み出すことが肝でもあります。


細かいことを気にし過ぎて公的規格レベルの評価法でないと認めないという方もいるようですが、設計段階では合理的であるものの量産のパラメータ最適化には細かいことを評価できるほど工程を細分化することは困難であり、複数技術を包括的に評価するという姿勢が重要となります。


その一方で課題としては、


「接着評価は剥離とせん断の両方を見なくてはならない」


というところです。


今回はあくまで剥離のみです。

しかし、実際の接着破壊モードは剥離とせん断の組み合わせによって進展するということを理解している方はまだ少数のようです。


そして多くの方はせん断だけを見るケースが多く、剥離を見ていません。


今回は剥離のみの評価となっていますが、せん断を評価できていないという限界をきちんと理解しておく必要があります。

 

 

2回のコラムにわたり JEC Innovation Awards Atlanta 2016 受賞技術をご紹介しました。

 

今回目につくのは、


「リサイクルを主軸とした環境性能」


ではないでしょうか。


一部を除き、形を作るという主軸の考え方が変化し、より長期利用を目指した技術がトレンドになりつつあります。

また、少しではありますが設計シミュレーション技術も進展を見せ始めていることもFRP業会発展の追い風かもしれません。


FRP業界最大の祭典である JEC の Innovation award は業界の動向の一部を把握するには適したものであることは間違いありません。


ただし、実際の動きは違う所で多々あるということも理解しておくことのほうが重要です。


想像しない地域で想像しない動きが最近多くなっていると感じています。


この辺りの流れを把握しながら、しかしあくまで自社技術を主軸に置いたビジネス戦略を立てられるのか。

潮流に流され過ぎない自社主軸をぶらさない先を見越した姿勢が肝要です。

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