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FRP rebarを用いたコンクリート向け複合材の解析

2026-06-22

FRPの重要な特性の一つは耐腐食性であり、これがFRPをインフラに使おうという動機づけになっています。
構造部材の長寿命化につながるためです。

今回は従来金属製である鉄筋の代わりにFRP rebarをコンクリートの補強材に使用することに対する社会動向、
並びに当該構成材料を想定した構造解析について述べます。

 

 

FRP rebarをコンクリートの補強材に適用する取り組みは始まっている

後述する参考情報でも示されていますが、Harker Island bridegeはその一例といえます。

Harker Islandと大陸を結ぶ設置後50年を超える橋をコンクリート製の全長3200フィート(約975m)長さのものに更新して耐久性を上げ、
また橋の下を船が通れるよう45フィート(約1.3m)程度高くしています。

プリキャスト手法を用いて施工期間を短縮し、
橋のコンクリート補強材にFRP rebar(主にGFRP)を用いて耐久性を上げることで、
保守点検期間を延ばすといったことを実現したようです。

炭素繊維も使用されているようですが、
動画上で黒色のrebarが確認できることから被覆材として活用している可能性があります。

上記の推測が正しい場合、これはアルカリ性であるコンクリートと、
GFRPの強化繊維であるガラス繊維の接触リスクを減らす取り組みではないかと想像します。

概要は以下の動画でも述べられています。

※参考情報

Harkers Island Bridge Replacement, North Carolina / Balfour Beatty

また過去にはFRP rebar(rod)がインフラの業界で注目されていること、
そこに使用されるガラス繊維の耐アルカリ性を高めるためジルコン等の無機酸化物の存在が重要であることを述べました。

 

※関連コラム

コンクリートの補強材向け引抜成形GFRP材

ガラス繊維の耐アルカリ性

 

 

FRP rebarの適用の後押しの姿勢を示したEuropean Rebar Council

FRP rebarのコンクリートへの適用を後押しする動きが欧州で見られます。

一例は以下のEuCIAのプレスリリースです。

European Rebar Council and ASDEA announce partnership to accelerate design adoption of composite rebar / EuCIA

 

結論を端的に言えば、

「FRP rebarを用いたコンクリート構造設計に使用できる無償のCAEソフトを供給するため、
European Rebar CouncilとソフトウェアサプライヤのASDEAが提携した」

ということになります。

European Rebar CouncilはEuCIAの一部のようです。

 

FRPを含む複合材料を用いた構造設計の難しさが念頭にある

これまで鉄筋で設計してきたコンクリート業界は、
国内外問わず長い歴史に裏付けられたノウハウが蓄積されているかと思います。

しかしここで機械、物理特性が異なり、かつ異方性を有するFRP rebarを使うとなると、
従来のノウハウだけでは対応できない部分が出てくるに違いありません。

この”従来との違い”がFRP rebarの適用の”障害”となることが容易に想像できるため、
その支援としてCAEツールを提供するというのが、
前出のEuCIAのプレスリリースの背景にあると考えます。

日本同様、欧州でもコンクリート製構造物の劣化が顕著になりつつあり、
より長寿命化のものと入れ替えることで、
インフラ維持に対する費用を抑えたい思惑も透けて見えます。

欧州の経済的苦戦がやや暗い影を落としているのかもしれません。

 

このソフトウェアは2026年内に公表される予定とのことです。

EuCIAはツールを一般公開する取り組みを行っており、
過去にはFRPを含む複合材料を用いた成型・成形まで含めた環境アセスメントツールを公開しており、
コラムでも取り上げたことがあります。
以下のコラムの中ほどに、当該ツールに関する言及をしています。

オンラインで評価できるため、私自身も時折使用しております。

 

※関連コラム

Composites Sustainability Report 2024 / JEC Composites Magazineの概要

 

 

FRP rebarを用いたコンクリートの評価にも用いられる解析ソフトウェアとは

European Rebar Councilと提携したASDEAの情報から、
これから公表されるであろうソフトウェアのイメージに近いと考えられる情報を取り上げたいと思います。

参考にしたのは以下のページです。
冒頭ご紹介したHarkers Island Bridgeの話や、
実際にソフトウェアを使ってどのような評価をしたのかが記載されています。

GFRP-Steel Hybrid Reinforcement: A Revolution in Concrete Durability / ASDEA

 

すべての鉄筋をFRPに置き換えるわけではない

ソフトの話に入る前に、FRP rebarを用いたコンクリート構造について確認します。

上記ページのFigure 2をみていただくと、(恐らく)橋脚のモデルを見ることができます。

ここで補強材はすべてがFRPではなく、鉄筋を併用していることがわかります。

T字を逆さにしたような形状物いわゆるT型アングルですが、
土台に該当する部分は主に鉄筋を、
上部がFRP rebarを使用した構造となっています。

 

基礎部分は柔軟性を上部は剛性が求められる

前出のFigure 2では土台部分の厚みに該当するL_anchorageの長さについては、
補強材に柔軟性が求められるとのことです。

私は建築設計の専門家ではないので推測でしかありますせんが、
地震などの強い揺れが生じた際、
そのエネルギーを変位という形で吸収することが狙いにあると考えます。

一方で同図中のL_crと呼ばれる土台からの臨界長さ(critical length)に平行な高さ方向の構造材には柔軟性はあまり必要ないとのこと。
よって、柔軟性があまりないFRPは土台からはみ出した部分の補強材に向いているようです。

鉄筋と比べてFRP rebarの剛性がどうなのかは明確ではありませんが、
上記が本構造設計思想の基本にあるようです。

このように金属とFRPを補強材として併用することで、
耐久性、重量、強度というバランスを従来の鉄筋コンクリートよりも優れた位置で両立させられるようです。

 

ソフトウェアの基本はFEA

基本的には有限要素法による解析を行うソフトウェアです。
後述の通り塑性変形を描写するため非線形解析が基本となっています。

STKOという地震工学に基づいた評価を実現するプリプロセッサ/ポストプロセッサを実装し、
TCL (Tool Command Language) を使わずに取り扱いが可能とのことです。

基礎-柱接合部、梁-柱接合部、補強されたコンクリートの構造骨格を含む評価に関して述べられています。

 

ソフトウェアによる主たる評価内容例

参考情報中で述べらているソフトウェアを用いた評価内容に触れたいと思います。

 

コンクリート構造材の塑性変形損傷を評価可能

ASDConcrete3Dというモデルを用いて塑性変形や損傷挙動を評価し、
その結果がFigure 3に示されています。

ASDConcrete3Dは塑性変形による損傷を表現できるモデルのようで、
以下にその概要が述べられています。

 

※参考情報

3.1.6.18. ASDConcrete3D Material / OpenSees

 

ヒステリシス変形も考慮

金属のヒステリシス変形も考慮されています。

前出のFigure 3に加え、Figure 4にも複数サイクルの変形が起こった際、
どのような変形挙動が起こるのかが示されています。

変位を評価しているのは構造部材の最上部です。

Figure 4中でFRP rebarを併用した実線の線図では、
鉄筋のみの破線の場合と比べてヒステリシス挙動が変化しており、
変形時の勾配がより大きくなる、
つまりより弾性体としての変形に近くなっていることが分かります。

その一方で最大変位に大きな違いは認められません。

当該特性は従来のコンクリート構造物と比較可能なレベルにある、
ということを主張したいようです。

 

補強材の挙動描写に必要な条件も考慮

金属と異なり、FRPでは異なる要素もあります。

まず一つが

「FRPは塑性変形しない」

というもの。SS線図を丸ごと解析条件として入力することで、この表現に関する課題を解決しています。

さらに、SS線図では破壊まで考慮されており、FRP rebarの座屈も表現できるとのこと。

それ以外にもbond-slip effectsという、
コンクリートと補強材間の界面の拘束条件も考慮しており、
恐らく鉄筋とFRP rebarで異なる条件を入れているものと考えます。

このような細かい条件入力により、
構造部材全体のヒステリシスを考慮した組成変形を、
その破壊まで描写することが可能となっているようです。

 

アンカー部分にFRP rebarを用いないことで塑性変形損傷後もGFRPとしての特性を維持

Figure 5では塑性変形損傷の発生に関する結果が示されています。

地震などの大きな揺れによりコンクリートの角R部の損傷が起こっていますが、
柱を支えるFRP rebarには大きな応力は生じておらず、
FRPとしての特性を維持できるのがポイントのようです。

地震などによる外部振動エネルギーは鉄筋の塑性変形と場合によっては柱と土台の接合部のコンクリート微小損傷で吸収し、
FRP rebarによる補強効果を維持することで橋の倒壊につながりかねないコンクリートの柱部分の損傷を抑えることで、
柱部分の剛体としての特性を維持する狙いがあるよです。

 

今回の内容に関し、ポイントについて述べます。

 

 

FRP rebarの異方性の考慮

FRPでは避けて通れないのが異方性です。

引き抜き成型で作製されたであろうFRP rebarは強い異方性があるはずで、
参考情報で示されていたような一つのSS線図で描写することは無理だと思います。

引張モードですべてを語ることは難しく、
場合によっては圧縮に関する挙動を考慮することで、
今回の様な曲げ挙動による状態をより正確に予測することが肝要です。

異方性低減のため最外層を平織材で被覆する、
といった積層構成設計の考えも必要でしょう。

 

GFRPのアルカリ性環境による劣化

これも無視できないです。

FRP rebarは恐らくガラス繊維強化プラスチック(GFRP)ですので、
アルカリ性環境下であるコンクリート内部での、
強化繊維劣化は無視できないものと考えます。

金属は劣化により膨張することで時にコンクリートが破損するため劣化が分かりやすい一方で、
FRPは劣化しても膨張はしません。

イメージで述べてしまう部分があるしかありませんが、
外見上でFRPの劣化を見ることは難しいと考えます。

炭素繊維を使ってGFRPをコンクリートから守るという意味で使うという考えもありますが、
そうなると今度はコンクリート/FRP間の界面状態が変化します。

いずれにしても、FRP rebarを長期間コンクリート補強材として使用するにあたり、
FRP自体がどのような変化を示すのかについては長期利用を見据えた評価が必要になるものと考えます。

 

FRPのクリープ特性に関する情報は少ない

FRPのクリープに関するデータが少ないことは過去にも何度か述べています。

今回輪をかけて厄介なのは荷重の方向です。

インフラ構造部材の補強材は引張ではなく、
どちらかというと”圧縮”の荷重環境下で使われることが多いです。

圧縮のクリープ特性はわからないことが多く、
強化繊維は引張荷重に耐えられることを念頭に作られたことを考えれば、
圧縮で使い続ける懸念もあります。

前向きな視点として、GFRPは引張に対して圧縮特性が比較的高いことです。

ただ、どの程度の圧縮特性を示すのかについては、
FRPとしてきちんと評価をしておくことが肝要です。

圧縮評価の重要性に加え、その難しさは過去の連載でも述べたことがあります。

 

※関連連載

「 機械設計 」連載 第二十七回 FRPの薬品・溶媒劣化とその評価方法

 

 

最後に

European Rebar Councilから発表される予定であるソフトの詳細は、
今のところ分かっていません。

ただ恐らく今回ご紹介したような評価のすべて、または一部が可能であり、
どのようにFRP rebarを使えばいいのかという、
構造設計の一助となる情報を提供するツールになることは間違いありません。

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