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2025年 FRP業界最新ニュース総集編

2026-01-05

2026年 FRP業界最新ニュース総集編

2025年の一年間に発行したメールマガジンの総集編として、発行済みメルマガの内容を抜粋して概要を述べます。

 

各見出しはメルマガのバックナンバーへのリンクとなっています。

 

不織布によるFRPの破壊靭性向上と繊維分散予想へのポアソン分布の応用

FRPのエネルギー開放率を高める代表的な取り組みの一つである、
層間に不織布を入れることと、それによる特性の改善について解説しました。

不織布の概要からエネルギー開放率の単位違いの換算法、
さらには不織布の挿入によるMode IIのエネルギー開放率が6倍に増加した、
といった点についてご紹介しました。

不織布の存在確率にポアソン分布を用いたことを踏まえ、
本点について数学的な基本も併せて解説しています。

不織布を挿入するということ自体は真新しいことではありませんが、
それに伴う評価に、FRPの主な荷重伝達モードであるMode IIで行うことについて、
知らない方もいらっしゃったかもしれません。

 

 

JEC World 2025概要とInnovation Award Finalistから見る近年の技術動向

昨年はトレンドが変わったと感じました。

やはり強く感じるのは、ガラス繊維への注目の高さです。

用途もそれに合わせてインフラへの適用に関するテーマが増え、
FRPが人目に付かない縁の下の力持ちの材料としての役割が改めて見直されたと感じました。

ご紹介した中でいえば、GFRP止水扉、熱硬化性FRPの街灯といったテーマがそれに関連するものです。

炭素繊維一本勝負でハイエンドという用途は華やかで、
一時期は自動車への適用がもてはやされました。

しかし、制御ソフト、バッテリ、センサ、モータといったところに原価が集中し、
素材はいかに安く、そして安定供給できるかというFRPが苦手とする土台での勝負を強いられ脱落した印象です。
個人的にははじめから勝負になっていないと思っていますが。

もちろん、まだごくわずか一部にFRPも使えるハイエンドの用途はありますが、
地面を動くものにはあまり向かない(コスト勝負に勝てない)と思います。

それに比べガラス繊維で強化されたFRPの適用範囲にはまだまだ可能性があります。
そして、実際に適用拡大する状況を私自身も体感しました。

ただここでも立ちはだかるのはFRPを念頭に置いた設計知見の不足です。

設計というとモデリングや応力解析だけを考える方も多いようですが、
より高い視点で俯瞰的に見られ、かつFRP材料に対しても基礎的知見と実体験を有することが求められます。

JEC Innovation awardを見ていてもわかりやすさが主であるものの、
技術の本質に迫るものは見当たらなかったと感じています。

今年はここが少しでも改善することを期待したいですね。

 

 

船舶の燃費改善に効果があると期待されるFRP製 Rotor Sail

個人的に好きな内容でした。

Magnus effectという円柱形状物の回転によって生じる負圧を推力に変換する、
という船舶向けの技術で、個の当該形状物の構造材にFRPが使われるというお話でした。

圧力係数で10倍ともいわれる高速の回転に耐えるべく、
FWによって周方向に強化繊維を配向させるなど、
FRPの特性を活かした用途だと感じます。

船舶による輸送は地理的なリスクを受けやすいですが、
重量物の物流の基本であることには変わりありません。

Rotor Sailが今以上に一般的になり、FRPが活躍されることを期待したいです。

記事中では上記の圧力係数に関する基本も解説しています。

 

 

eVTOLのシートにも用いられるFRPとその評価

AAM、いわゆる空飛ぶ車で最も受注数が多いといわれるEVE。
この機体にも搭載予定のFRP製シートを引き合いに、
航空機向けのFRPを含むシートのLS-Dynaによる衝撃解析を中心とした評価例をご紹介しました。

破壊現象発生の閾値の一つであるChang-Chang criterion、
本閾値の限界である引張モードのみの評価にせん断モードを取り入れたNASA文献で用いられた閾値など、
衝撃解析における肝となる発生有無を判断する基準設定についても触れました。

衝撃解析はシミュレーションの中で特に難しい部類に入ります。
その対象構造材がFRPだと、異方性をはじめとした固有特性故、さらに難易度が上がります。

ソフトオペレートなどの実作業も重要ですが、
上記のようにどのような考え方で破壊事象をとらえようとしているかを把握することが、
FRPのような破壊形態の複雑な材料の理解に近づく近道であると考えます。

 

 

熱可塑性FRPを用いた水素輸送用パイプ

新たなエネルギー源として注目の集まる水素について、
その輸送に用いられる配管に熱可塑性FRPを適用するという取り組みをご紹介しました。

FRPは金属に比べて元々耐腐食性が高いですが、
水素は金属種によっては水素脆化が生じるため、
耐脆化性という意味でもFRPの適用は注目されています。

水素の輸送、または保管で技術的ポイントとなるのはガスバリア性。

本特性をISO 15105-1で評価しているようですが、
最内層のライナーにHDPEが用いられていること、
複層構造であることが触れられているだけで、
どのようにして水素の漏洩を防止しているかについては開示されていません。

熱可塑性FRPを用いる動機の一つとして長寿命も触れられており、
もし代表的な温度時間換算モデルだとライナーが結晶性高分子であるため、
WLF型のモデルが使われたのではないかといった点についても触れています。

 

 

非破壊検査技術の動向とFRPへの応用展開

10年ぶりに参加した非破壊検査総合シンポジウムの内容を基本に、
当該検査技術の近年動向についてご紹介しました。

機械学習に関する発表数の増加、赤外線サーモグラフィーを軸とした新しい検査技術の提案、
既存非破壊検査技術の複数組み合わせ、円管形状物の検査などがトレンドとして感じたキーワードです。

個人的には面外方向の検査を想定したX線応力測定が大変興味深く、
その実例として紹介されていたトンネル内の天井部のコンクリート検査と、
当該応力測定によるモールの応力円による補正による引張応力の計測は初めて聞く技術だったこともあり、
大変勉強になりました。

FRP関連だと、超音波励起サーモグラフィーが一つの選択肢になりえます。
ただ、これについては顧問先でも試したものの励起力を高めるのが困難で、
オンサイトでの活用には難がありそうです。

技術自体は大変興味深いので、実運用に耐えうる手法が出てくれば、
個人的には深掘りしてみたいテーマと感じています。

 

 

金属被覆バサルト繊維を用いた電磁波シールド

FRPの強化繊維として今も関心が高いバサルト繊維。

ご紹介したのはバサルト繊維に金属被覆を行い、
電磁波シールドとしての機能を発生させるという技術でした。

この繊維を充填材としてPMMAをマトリックス樹脂としたFRPにすることで、
8から12GHzの電磁遮蔽機能を発現させることに成功しています。
遮蔽率は-40dBに到達しています。

遮蔽性能は吸収、反射、多重反射という主に3つの基本現象にあるという、
シェルクノフの式もご紹介しています。

軍事用途はこのような技術の主たる展開先の一つですが、
宇宙衛星の太陽風からの保護、といったことも行われたのではないか、
といった私見も述べさせていただきました。

 

 

ガラス繊維強化プラスチックによる怪我抑制に関する技術的対応

マスメディアでも取り上げられた内容であったため、
技術的な誤解が無いよう、補足する意味でメルマガとして発信しました。

製品によってはFRPは非常に身近に存在しており、
それを知識なく扱うことで怪我をするということは、
ものづくりに関わる者として何としても避けなくてはいけません。

マスメディアで取り上げられたこともあってか、
多くの方にバックナンバーをご覧いただいたようです。

FRPを知っている方から見れば当たり前という部分も含め、
今回でいえば傘の骨に使われるFRPの一般的な製造方法や技術的なポイントなどを解説しました。

またこの手の情報発信で最も重要な対策案まで記載しました。
ここでの情報が何かしらの参考になり、FRPによって怪我をする方がこれ以上でないことを強く希望します。

 

 

FRPのRepairに注目するiLAuNCH Trailblazer programと当該工程の要点

FRPを長期にわたって使用するのには保守点検と必要に応じた補修が必要です。

補修工程に関連するものとして、
FRPの損傷状態を調べた非破壊検査結果からトポロジー、
つまり要素の接続に関する情報を生成してCADモデルに落とし込むことで、
どの個所に剥離等の損傷が生じているかを可視化することで、
補修工程の最適化を図るというのがご紹介した内容の要点となります。

主に航空宇宙産業を想定したiLAuNCH Trailblazer programと呼ばれる、
オーストラリアの産学連携プロジェクトで上記のような取り組みが行われており、
複数の企業や大学がコンソーシアムという形で連携して取り組んでいます。

メルマガではさらに一歩踏み込み、FRP Repairに特化した治具もご紹介しました。
スカーフ加工を主とした治具はよく考えられており、
手順解説を行いながらFRP補修のイメージをお伝えしました。

 

 

低誘電エポキシ/ガラス繊維織物を用いたRadome試作品

FRPの着目すべき特性の一つに誘電特性があることは、
知らない方も多いかもしれません。

Redomeのように通信機器の構造部材は軽くて丈夫に加え、
通信の邪魔をしてはいけないという要求があり、
誘電材料であるFRPは適しています。

誘電特性を想定すれば強化繊維に炭素繊維を用いることは無く、
石英ガラスなどを用います。

マトリックス樹脂もできる限り疎水性を示すものを使うのが一般的で、
この辺りがFRP材料設計の肝となります。

当該材料特性は信号伝送に対する性能、強度、品質を軸に評価され、
周波数領域分析と時間領域分析といった、
機械特性評価と全く異なる評価軸となることは興味深い観点の一つです。

 

 

最後に

いかがでしたでしょうか。

昨年も比較的幅広い領域のFRP関連技術や製品をご紹介できたと考えています。
総括的な観点でいえば、ガラス繊維を軸にインフラをはじめとした用途への展開が、
改めて注目され始めた年といえるのかもしれません。

 

そして本ページやメルマガをご覧いただいている方に意識いただきたいのは、
基本理論の重要性です。

ご紹介したもの、関連したものでいえばポアソン分布やシェルクノフの式、圧力係数、
ガウスの法則を基本とした比誘電率の算出などが一例です。

複雑な数式を用いず、しかし現象の基本を理解するにはこのような理論を丁寧に見る癖をつけることが重要です。

しかしながらFRPのような複合材料は様々な現象がその名前のごとく複合で起こるため大変複雑で、
感覚論や定性的な経験則だけで語られることも多いようです。

これでは必ず技術は行き詰まるというのが私の意見です。

 

こうならないためにも様々な専門書や専門家の方の動画やサイトを参照しながら、
自分なりに式を一つひとつ確認するという泥臭さが重要で、
これができて初めて”実践できる”レベルとなります。

 

同時にシミュレーションや文献等の情報に依存しすぎず、
ましてやAIの情報を鵜呑みにすることなく、
現象確認は必ず試験で見るといった手間暇を惜しまない愚直な姿勢も重要です。

理想的には理論以前に、”逃げ道の無い緊迫した実体験”を蓄積することが最重要です。

勉強して、準備してから経験で技術力をあげよう、
といった余裕のある状態では本当の意味での力はつきません。

当事者意識をもって必死に目的を達成しようという実体験こそが、
本当の意味での技術理論の重要性とその実践力の土台となります。

 

 

今年も上記のように本当の意味での技術を理解したい、高めたいという方向けに、
特定の産業や技術の領域に偏ることなく自分なりの考察を加えながら、
本メルマガをご覧いただいている方々に参考となる情報をお伝えできればと思います。

本年も引き続きご愛読のほどよろしくお願いいたします。

 

※参考リンク

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