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FRPの高品質、かつ高速での加工を実現するHufschmiedのT-Rex(R) tool

2024-04-06

FRPは材料を裁断し、それを積層の上で、
熱と圧力をかけて成形することで形にします。

この成形工程で不可避なのが、

「加工」

です。

 

今回はこの加工に関連する話題として、
FRPの高品質、かつ高速での加工を実現すると言及されているHufschmiedのT-Rex tool(R)について触れ、
FRP加工における技術的ポイントを述べたいと思います。

 

 

FRP成形後は何故加工が不可欠なのか

本点を最初に理解する必要があるでしょう。

一昔前のFRPはブリードタイプと呼ばれ、
強化繊維に対して樹脂を多めに入れ、
成形時に過剰な樹脂を積極的に押し出すことで含有されがちな気泡も外に出す、
というのが主流でした。

しかしこの手の材料は設計上の形状輪郭よりも一回り大きい領域に、
この過剰な樹脂が”バリ”として存在するため、
バリ取りとしてトリミング加工が必要でした。

ここ20-30年くらいでブリードタイプはほぼなくなり、
今は樹脂を強化繊維に予め含浸させたプリプレグもノンブリードタイプと呼ばれる、
過剰樹脂を積極的に外に流さなくていいものが主流となりました。

これが繊維単位体積含有率(Vf)といった成形物の材料仕様設定を可能としています。

しかしノンブリードと言えども多少の樹脂をバリとして外に出すことは必要であるため、
バリ取りの加工を行うことが一般的です。

加えてバリ取りだけでなく、穴加工等を後加工として行うことも多く、
結果としてFRP成形は加工とセットとなることが多いといえます。

 

 

Hufschmiedの加工刃物について

T-Rex toolはFRPの加工を高品質かつ高速にするといわれている

Image above was refered from Hufschmied

Hufschmiedは加工刃物を販売するドイツ企業です。

今回は以下の記事を参考に概要を述べ、
近年のFRP加工に関する技術動向を考えたいと思います。

Optimizing machining for composites: Tool designs, processes and Industry 4.0 systems

 

 

FRP加工で注意すべきは層間剥離、マトリックス樹脂溶融や炭化、そして強化繊維のほつれ

FRP加工で注意すべきは、

・層間剥離

・マトリックス樹脂の溶融や炭化

・強化繊維のほつれ

の3点です。

この3点をきちんと明確化できることから、
Hufschmiedという企業はFRP加工で苦労した経験があるのかもしれません。

適切な加工が行われないと、
後工程での補修が必要になるとのこと。

仮に高速加工ができても補修が必要な状況では、
加工が完了するまでの時間はそれ相応に長くなると予想されます。

Hufschmiedは高速加工を目指しながらも、
上記3点の問題を抑制することが使命だと考えているようです。

 

 

GF/PA6のGFRTPの穴加工向けにT-Rex(R)を適用

いくつか事例が述べられていますが、その一つであるHufschmiedのT-Rex(R)について述べたいと思います。

T-Rex(R)で目指したのは年間45,000個のGF/PA6で構成された厚さ2mmのGFRTP穴あけ加工です。

成形物の生産量に加え、穴数が多いため高速加工が必須で、
かつ層間剥離等の品質問題を抑制することが前提だったようです。

事例で述べられている高速加工はFRP加工の世界でいうとかなり早い、

回転数:8000rpm

送り速度: 2m/sec

というものでした。

そして加工対象はガラス繊維や炭素繊維のような無機繊維を強化繊維としたものだけでなく、Flax(麻)やHemp(亜麻/リネン)といった有機天然繊維を強化繊維としたNatural Fiber Composites (NFC)も、その加工対象として検討が進んでいるようです。

一例としてBcompの材料を用いた、
加工の動画が公開されています。

Bcompはスイスに本社を置くNFC材料供給と関連する設計、成形加工に対応する、
その業界では最も熱心にNFC関連業務に取り組む企業の一つです。

 

※参考情報

BcompのHP
https://www.bcomp.ch/

 

 

T-Rex(R)で目指したのは複数の加工工程を一つの刃物で完結させること

加工速度を高めながらも、品質を維持したい。

加工の世界では永遠の命題とも言えますが、
これを実現したT-Rex(R)のコンセプトは、

「複数の加工工程を一つの刃物で完結させる」

事にあるようです。

具体的には以下のような内容が参考にした記事で述べられています。

(前略)…pulling and pushing action and roughing and finishing functions in one tool.

引張、圧縮、研磨、仕上げを一つの刃物で行うというイメージでしょうか。

このようなコンセプトを狙うことで、
加工中の熱と振動の発生を抑制することができたとのことです。

加工と一言で言っても複数現象の集合体であることを理解する必要があります。

 

 

T-Rex(R)の特徴

刃物形状については特許技術と書かれているだけで、
詳細は述べられていません。

参考にした記事に書かれているのは、

「four cutting edges(刃先は4つ)でダイアモンドコーティングされている」

ことだけです。

 

T-Rex(R)は高速加工が可能であることが強みということもあり、
従来形状の刃物との加工比較が動画で示されています。

 

またHufschmiedのカタログのp.130を見ると、
T-Rex(R)の一例となる刃物が掲載されています。

 

これを見るとドリル径はもちろん、溝長も複数の設定があるのがわかります。
形状詳細はわかりませんが、エンドミル固有のギャッシュのような溝が先端にあるように見えます。

刃物の溝は、位相によって異なる方向を向いていることから、
これが加工における複数工程を一つの刃物で完了させる重要な要素だと推測します。

 

この特徴的な形の刃物による加工では、
繊維を引き抜いてからマトリックス樹脂を切削する、
ということの繰り返しでFRP加工が行われるようです。

 

 

モニタリング技術を用いて加工の異常や刃物の摩耗を検知

Hufschmiedはドイツの企業ということもあり、
Industry 4.0への取り組みも熱心です。

SonicShark technologyという技術を用いて振動や音に関するデータをリアルタイムで収集し、
加工の異常に加え、刃物の摩耗状況をAIも活用しながら検知するという取り組みを行っているとのこと。

摩耗の検知精度はかなり高いようで、
閾値に対して概ね±3%程度の誤差で判定可能のようです。

これらの取り組みにより品質管理業務を削減し、
製造コストの低減(25-30%程度)につなげることに貢献できると述べられています。

 

 

クラウド上で刃物に関するデータを企業間で共有

HufschmiedはCutting Edge World (CEW) cloud platformを構築し、
刃物の適切使用に向けたデータ共有を行っているとのことです。

そしてHufschmiedは刃物の設計形状と出荷した各刃物の形状について、
それぞれDXFデータを顧客に提供しているようです。

これは恐らく出荷品の設計形状との違いを照合計算によって相対比較し、
出荷品に以上があるかないか、どの程度の形状差異があるのか、
といったことを顧客側で検証できるようにするのが目的だと考えます。

 

刃物の使用状況については企業間でも共有

CEW cloud platformではさらに踏み込んだ取り組みもあるようで、
刃物の最適利用に向け企業間でもクラウドを経由したデータ共有を行うとのこと。

より具体的には各刃物に紐づけられたQRコードを用い、
刃物製造メーカ、材料メーカ(恐らく加工対象である材料メーカ)、加工設備メーカ等と、
刃物の寿命と使用履歴に関するデータを共有するようです。

当然ながらデータ管理や共有についてのルールも重要で、
どのデータを共有対象とするか、どの範囲の企業間で共有するかといった議論が続いている模様です。

 

今回ご紹介した内容を踏まえ、FRP加工における技術的ポイントを述べたいと思います。

 

 

コーティングは刃物寿命を延ばす一方、切れ味を落とす傾向にある

これは私自身も苦労した点ですが、
コーティングは確かに刃物摩耗を減らす効果がある一方、
刃物先端を厳密にいうと丸めてしまうことがあります。

CFRPやGFRP等、私から見ると比較的加工に対して素直な材料はまだいいのですが、
アラミド繊維のような強化繊維だと加工も一苦労です。

適当に加工すると加工断面が花が咲くように膨れ上がってしまい、
それに伴うほつれも大量に生じます。

刃物に対してコーティングを行う際は、
上記のような負の側面が出る可能性を予め理解する必要があるでしょう。

 

 

層間剥離を抑制するには切削力を一定にするのが最重要

刃物で加工するということは、
周期的に刃物が被加工物に接触することになります。

仮に高速であったとしても、
この規則的な接触が振動発生につながることは想像に難くありません。

更に加工時は刃物が被加工物を”えぐる”ような状態となるため、
刃物は被加工対象物に引き寄せられます。

穴あけ加工の場合は中に引き込まれるイメージです。

上記のような挙動で生じるのが、

「切削力の変動」

です。

 

この変動は得てして

「層間方向(面外方向)に発生する」

ため、結果として層間剥離が生じるのです。

 

多軸加工機等、切削力を一定に制御できるものではなく、
ボール盤等の手加工という当該力制御が困難な場合、
特に注意が必要です。

 

当然ながら切削力変動抑制には、
被加工物がびびらないよう、
適切に固定する必要があることを加筆しておきます。

 

 

まとめ

FRP加工を主題に、HufschmiedのT-Rex(R) toolの概要、
並びに近年の加工業界の取り組みであるモニタリングやプロセスデータ共有についてご紹介しました。

加工というのは一見シンプルですが、
大変奥の深い技術です。

加工対象がFRPの場合、
繊維と樹脂を組み合わせたその特異な材料構成故、
層間剥離、マトリックス樹脂の溶融や炭化、そして強化繊維のほつれといった、
均質材や金属材料とは異なる観点での注意が必要です。

そして刃物へのコーティングの加工への影響や切削力に配慮することが、
FRP加工理解への一歩になることをご理解いただければ幸いです。

 

 

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