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JEC Forum DACH 2023からみる欧州におけるフォーラムの特徴と関心の高い技術テーマ

2023-10-16

JEC Forum DACH が2023年10月24、25日の予定でオーストリアのザルツブルクで開かれます。

※参照情報

JEC Forum DACH HP

 

FRPを含む複合材料業界で最大の展示会イベント JEC World を主催する JEC Groupと、ドイツのFRP協会であるAVKが共同でこのフォーラム運営するようです。

今回は欧州におけるフォーラムの特徴と複合材料業界動向について概要を述べたいと思います。

 

 

 

JEC Forum DACHは企業、研究機関との間の密な交流を目指し、量を追わない

JEC Forum DACHのHPをみると、フォーラムの機能は主に以下の3点があると書かれています。

BUSINESS MEETINGS:電子的なプラットフォームを使い、買いたい人と売りたい人をマッチング

CONFERENCES:近年の複合材料業界のビジネス/技術の動向に関する会議を開催

INNOVATION:AVK AWARDSという賞を設定し、創成期にある技術の周知に協力

産業動向を含めた事業性だけにのめりこまず、
技術交流や発展、周知にも力を入れていることがわかります。

そして特徴的なものの一つが「量を追っていない」ことでしょう。

参加者は500人までと上限が決められており、多くの人に来てほしいという考えではありません。
私が以前参加しようと申し込んだときも審査があった断られた記憶があるため、恐らく今も誰でも参加できるというものではないと思います。

買いたい人(Buyer)と売りたい人(Supplier)に加え、招待客(Guest)もいますが、招待客は30人に絞られており、フォーラムの中で参加できるものに制限がついていると書かれています。
売りたい人(企業などの組織)にも50という上限が設定されています。

加えて買いたい人にも条件が課されており、必ず出席者を立てて誰もいない状態にしないこと、そして最低でも7つの事業的な観点での打ち合わせ、つまり商談することが要件として明記されています。

 

※参照情報(Suppliers/Buyerのリスト)

https://www.jec-dach.events/JFD23_suppliers-list.pdf
https://www.jec-dach.events/JFD23-buyers-list.pdf

 

そして地域もDACHと呼ばれる、ドイツ、スイス、オーストリアの3か国限定と考えられます。
内向きという見方もありますが、徹底して量を追っていない姿勢がわかるかと思います。
DACH地域というのはドイツ語が公用語として用いられている地域といえるでしょう。

冷やかしでの参加といった、フォーラムの質を低下させる恐れのある部外者を排除しようという姿勢が徹底しています。

 

 

この手のフォーラムでは事前準備が極めて重要

私自身もこのような欧州のフォーラムに、顧問先企業の要望に応じて複数回参加したことがありますが、

「事前準備が大変重要」

と感じています。

展示内容を準備するといった展示会の観点の話ではなく、

「どの組織が売りたい人、買いたい人として参加するのかを事前調査し、フォーラム開催中の打ち合わせスケジュールを決める」

ことが重要です。

JEC Forum DACHでもこのような打ち合わせスケジューリングのプラットフォームを採用しており、事前に話をしたい相手の選定と商談申し込み、商談を申し込まれた側はそれを引き受けるか否かについて早急に返信をすることを求めると触れられています。

この事前のマッチングは必ずしも精度が高いとは言えず、例えばフォーラム開催初日の朝に気になるブースがあれば、直接訪問し、その場で商談の確約を取り付けるといった行動力と交渉力が求められます。

このような取り組みは営業の方だけでなく、
技術の方にも求められる姿勢だと思います。

技術的な議論がある程度できないと、相手から話をしたいと思われないからです。
欧州はこのような考え方が浸透していると私は感じています。

 

 

 

JEC Forum DACHの主な中身

主として以下の5つのカテゴリーから構成されます。

The AVK Composites Market Report:AVKがまとめた複合材料市場に関する情報の提供

Keynote Speeches:各種専門家が最新技術や動向を解説

Workshop Sessions run by Suppliers:売りたい人が自社の技術やサービスなどをアピール

The JEC Composites Startup Booster Competition:新興企業が新技術や新製品を提案

The AVK Awards Ceremony:AVKが主催する授賞式

実際のイベントから抜粋した内容を踏まえた概要について私見を述べます。

 

 

Trends in the composites markets

1. “Development and Trends in the European Composites Market”
Dr. Elmar Witten, Managing Director, AVK
2. “Flexible High-rate Production for Urban Air Mobility / Electric Vertical Take-off and Landing Using Automated Ply Placement Technology”
Dr. Jamie Snudden, Technology Programme Manager, Airborne
3. “Accelerating Sustainability Management through Procurement Innovation”
NN, Volvo

主に複合材料業界の市場に関する内容です。

話題としては、UAM等の航空に関する話や避けて通れない環境保全に関するものが主となるようです。
DACH地域では複合材料について空を飛ぶことに使いたいという考えが強く、環境への配慮をビジネスにつなげなくてはいけないという考え方があるようです。

空を飛ぶものについては軽量化が絶対正義であることを考えれば上記の考え方は妥当であり、また絶対的な正解に到達できる可能性はまだ低いとはいえ、環境保全の考えと事業性を成立させなければならないという危機感があるものと感じます。

UAMについては過去のコラムでも取り上げたことがあります。

※参照コラム
Advanced Air Mobility と Unmanned Aircraft Systems に関連するFRP材料と工程の概況

 

 

Startup Booster Pitches

以下の5社が最終選考に残った企業として発表をするようです。
この中から受賞企業が1社決まります。

CARBOCON:Leading service provider when it comes to carbon reinforced concrete

FIBERIOR:Cost efficient manufacturing of continuous fiber-reinforced thermoplastics

HOLY TECHNOLOGIES:Sustainable lightweight manufacturing technologies for the 21st century

PLASTFORMANCE:High performance materials enabling future technologies

VOIDSY:Non-contact, fast and cost-effective NDT. Next generation composite quality assurance

キーワードを抽出すると、インフラ、熱可塑、環境保全、機能材料、非破壊検査といったところでしょうか。

抜粋してポイントを述べます。

インフラについてはFRPの耐腐食性を考えれば当然の考えですが、日本ではまだ一般的ではない状態にあるようです。
これからFRPはインフラの世界で今以上に使用されるようになると考えます。

熱可塑性樹脂を使った複合材料は、欧州で特に盛んという印象を持っています。
繊維長が数mmにも満たない短繊維を用いた射出成型品は日本でも一般的ですが、欧州では連続繊維も想定に入れた複合材料を視野に入れています。

今回発表される技術も連続繊維を強化繊維とすることで、
工程を連続的にするのが高効率化の基本コンセプトとしています。
引き抜き成型のような工程を採用していると想像しますが、
材料に加え型設計に高い技術力が必要であることを見逃してはいけません。

機能材料に関する話は、今回発表される技術の中で最もいい方向性を示していると私は考えます。
FRPは単なる構造部材として設定してしまうと、構造設計のやりにくさ、材料のばらつきといった負の側面にのみ目が行ってしまい、既存材料に太刀打ちできないからです。

発表される技術は射出成型を基本とし、設計まで視野に入れたもののようです。
燃料電池の長寿命化や電磁波の遮蔽を可能にする複合材料を提案すると書かれています。
異なる技術領域の知見がなければ思いつかない方向性だと考えます。

非破壊検査は非接触を基本とした Photothermal Tomographyとのことですので、
照射光に対する熱応答の違いを三次元画像化する技術だと想像します。
赤外線パルス波をFRP表面に照射した際、欠陥があると断熱効果により表面の温度が下がりにくい、という既存検査技術を応用したのかもしれません。

本非破壊検査技術を搭載した製品はvoidsy 3D V-ROXという名称のようです。
技術的なポイントは特に述べられていませんが、以下のような動画も公開されています。

 

Digitalization as an opportunity for composites processors

日本でも話を聞くことの多い「デジタル化」に関するテーマになります。

1. “Opportunities and Challenges of Composites Forming Simulation for Digital Product Development”
Dr. Dominik Doerr, Co-Founder and Managing Director, Simutence
2. “Eco-efficient and Process-safe Offline Program Creation through Integration of Digital Twins in the CAM Planning Environment”
Marc Loegel, Teamleader Composites, SWMS
3. “Digitization as an Opportunity for Organic Sheet in Large-scale Production”
Dr. Stefan Seidel, Head of R&D, Bond Laminates”

個人的な見解ですが、複合材料業界はデジタル化は遅れていると同時に、
領域によってはそれほど必要ないと考えています。

今回のテーマはどちらかというと私は必要ないと考えている技術です。
工程の自動化というものです。

今回話をする対象を複合材料の中でFRPとした場合になりますが、おそらくデジタル化というと成形した際にどのような形になるかを予想することを示唆しており、実際、上記の発表テーマもそのような内容です。

ただ、FRPは強い異方性があるためシミュレーションに必要な材料特性値を取得することが難しく、またそのような手間をかけてまで情報を取ろうとする企業は少数派であるうえ、結局最後は作らないと納得しないということが目に見えているからです。

Picture Frame TestやShear Lockingという言葉を聞いて、
すぐに何を意味するか即答できる方は少ないでしょう。

シミュレーションの情報精度向上に必須のデータ理解が不足している業界に対して、デジタル化だけを進めると混乱だけが生じるでしょう。

 

逆にFRPに対してデジタル化を進めるべきなのは設計と検査です。

設計は異方性を考慮した形状や機能発現をあらかじめ理解するのに重要であるうえ、応力解析は見逃しがちなホットスポット(応力集中領域)を明確化することが期待されます。

検査も同様に見逃しが減ることに加え、検査条件を常に一定にするということにおいてデジタル化は重要と考えます。

人による検査は人依存の部分が出る、そして人はミスをすることを考えると、自動化を主としたデジタル技術の応用は有意義と考えます。
そして、検査結果を画像認識を応用しながら異常を見逃さないという使い方も妥当だと考えます。

 

 

いかがでしたでしょうか。

今回はJEC Forum DACHを引き合いに欧州におけるフォーラムの特徴と関心の高い技術テーマを述べました。

欧州がすべてにおいて優れているということを述べるつもりは毛頭ありませんが、海外は異なる文化を有するため取り入れるべき観点や考え方があるのも事実です。

そして同時に日本も機密、機密と隠したり、身内で引きこもるのではなく、積極的に技術情報を発信していくという姿勢が求められると考えます。

技術情報発信こそが、次の新しい世界の景色を見るための手段である、というのが私の意見です。

 

ご参考になれば幸いです。

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