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波力発電向け構造部材に適用が進むFRP

2022-05-30

エネルギーの自給率向上というのは、常に議論になりながらも、
喉元過ぎれば下火になるというのを繰り返すテーマの一つとも言えます。

今回ご紹介する波力発電も、オイルショックの際には日本が先導した技術といわれている一方、
原油価格低下によって止めてしまった故に、日本が追いかける側になったと考えられています。

 

当然ながら今までとは全く異なるエネルギー戦略を考えるのも重要ですが、
少なくとも電力をインフラとして基軸にする現代では、
やはりこの電力をどのように確保するかは世界各国にとっても重要な問題です。

 

今回は電力を得るためのエネルギー戦略の一つといわれる「波力発電」に焦点を当て、
FRPがどのように適用されているのかについてみてみたいと思います。

 

 

波力発電とは

波力発電は新しい差異性可能エネルギーとして注目されている

Photographed by Kammeran Gonzalez-Keola

そもそも波力発電とは何でしょうか。

言ってしまえば、海の波の力、つまり上下、押し引きの海水の移動をエネルギーとして取り出し、
電力を得るというものになります。

タービンや発電機を動かすというのが発電の基本ですが、
その多くは回転運動によるものです。

上記のような上下、押し引きという、繰り返し運動を回転運動に変換するのがポイントで、
そこの考え方が設計コンセプトの肝ともいえるのではないか、と個人的には考えています。

 

 

波力発電の主な形式

こちらについては、わかりやすくまとまっていた以下の記事がありましたので、
そちらを参考にご紹介します。

次世代を担うエネルギーは波!?波力発電の全容に迫る!

これを見ると、主に以下の4つの手法があるとのことです。

振動水柱型:ブイ等の電源として実用化済み。波のエネルギーで空気の流動を発生させ、タービンを回す。

可動物体型:波の押し引きを振り子として運動エネルギーに変換し、油圧モーターを回転させる。

越波型:貯留池を作り、その水面と海面の高低差を使ってタービンを回転させる。

ジャイロ式:回転体が回転軸を倒すという力が生じた際、元の軸位置を維持しようとする回転運動を発電に利用する。

 

 

波力発電システムの構造部材へのFRP適用

いくつか事例がありますが、今回はブイのタイプのものをご紹介します。

その一例が CorPower Oceans のものです。

どのようなものなのかについては、以下の動画を見るのが最もわかりやすいと思います。

海に浮かぶブイは波によって上下します。

そしてこのブイは地底に固定されているため、
基本的には同じ軸位置で上下運動をします。

その際、ブイの内部に搭載されている WAVE SPRINGS という装置が、
シリンダを通じて POWER CONBERSION MODULE と呼ばれる変換器に力を入力し、
それを回転トルクとして発電機に伝えるという仕組みのようです。

このブイは常にPRETENSION UNITによって、下方向(海底方向)に力がかかっている状態で、
波により上に移動すると下に戻るという運動を繰り返します。

この発電方式は冒頭ご紹介した4つの手法のどれとも違う方式という印象です。

発電機構の多くはブイの中にあるため海水による腐食やフジツボの付着などのリスクが低い一方、
海底と発電機構をつなぐ部分のシーリングの劣化などは、
保守のポイントであると感じます。

そしてFRPが使われているのは、
直径が9mと書かれているブイの筐体部分と10mの長さになるマンドレル(筐体から下に伸びている筒状の部分)です。

 

 

波力発電の筐体とマンドレルはフィラメントワインディング(FW)で製作

波の上下運動をできるだけ効率よく伝えるため、
ブイは形状検討から含めて設計やコンセプト検証に10年以上かかったようです。

またFRPを素材として選定する前段階でも、
SUS、アルミなどと材料価格だけでなく年間の発電量等の観点から、
コスト試算を行ったとも書かれており、事業性を意識した設計がなされています。

これらの検討の結果、FRPが最終的に構成材料として選定されています。

 

筐体、マンドレルは共にフィラメントワインディングで製作されることが決まったとのこと。

フィラメントワインディングというのは、
樹脂を含浸させた連続繊維を、型の表層に巻き付けていく技術で、
FRPの世界では比較的古い成形技術です。

フィラメントワインディングのコンセプトは以下の動画が比較的わかりやすいです。

 

実際に行っているフィラメントワインディングの工程としては、以下の動画が一例となります。

フィラメントワインディングでポイントとなるのは、
樹脂の「しごき」と呼ばれる工程です。

例えばガラス繊維であれば、ロービングをマトリックス樹脂が溜った槽を通して含浸させ、
そのまま型に巻き付けると、樹脂がロービングの奥まで含浸しない、
さらには過剰な樹脂が巻き付けられてしまい、
必要以上に樹脂ダレを起こすなどの問題があります。

上記で紹介した動画の中でも、
樹脂含侵後の繊維が小さな輪っかに接触している様子がありますが、
それがいわゆるしごきです。

 

 

波力発電の筐体とマンドレルを製作するシステムは移動設置が可能

今回用いられているフィラメントワインディングシステムは、
Mobile Filament Winding Systems ということなので、
移動設置が可能のようです。

輸送においてはコンテナを用いるようで、
この設備はそのコンテナにすっぽり入るため、
陸上、海上の輸送が容易になっているようです。

以下にこの辺りを説明している専用ページがあります。

Mobile, large-scale, automated filament winder

上記の画像ではいくつかブイの成形、
より正確には、樹脂は含浸させず、ガラスロービングを型に巻き付けた状態のものを見ることができますが、
こちらはコンセプト実証用である1/4サイズのものですので、
実際の波力発電はこの4倍の大きさとなります。

 

 

FRPは海で用いられるものとの相性がいい

今回、何故波力発電の構造物にFRPが使われたのでしょうか。

一つはやはり軽量化です。

例えば振動水柱型の波力発電システムの開発を行っているSTRUCTeamは、
金属でコンセプト用の発電システムを製作した上で、
構造部材には軽量化を目的に今後FRPを採用することを検討すると発表しています。

STRUCTeam extends composites support for wave energy convertor

上記のPJでは、以前ご紹介した3A Composites のリサイクル可能なコア材となる、
発泡材も使われるようです。

・関連コラム
鉄道車両 の構造部材、内装材で存在感を高める 3A Composites

マトリックス樹脂も生分解性の樹脂を採用するとのことで、環境性能を重視していると感じます。

 

大型を想定するには、どうしても重量がネックになるということです。
大きくなれば作るのも、輸送するのも大変ということです。

また、波力発電の場合は、海面上に構造物の一部は浮揚する必要があるケースが多い、
ということも、軽量化が求められる理由になっているかもしれません。

 

もう一つが、耐腐食性です。

金属は電解質水溶液である塩水にさらされると、その多くの場合腐食が進行します。

しかし、FRPはかなりの長期視点だとマトリックス樹脂が加水分解する一方、
多くの金属と比較して水による腐食にはかなり強く、
塩水に対する腐食性も同様に強いと考えられます。

 

上記の理由から、波力発電においてFRPは軽量化と耐腐食性という2つの機能性から選定された、
と理解することが肝要といえます。

 

 

今回は波力発電と、そこに適用されるFRPについてご紹介しました。

ご参考になれば幸いです。

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