FRP業界での活躍を目指す企業のコンサルティングパートナー

根強いニーズのあるSMC/BMCと今後の課題

2021-11-16

イタリアの化学メーカ、PolyntがSMC/BMCにも使われる不飽和ポリエステル、ビニルエステルを、
2021年12月からそれぞれ1トンあたり200ユーロ、300ユーロ値上げすると発表しました。

Polynt Composites announces price increase for Europe

全く同じようなニュースが2020年12月にも発表されています。

Polynt Composites announces price increase for Europe

2年連続の値上げということになります。

COVID-19による原油の急激な需要減と、その後の回復に伴う需要増があり、
その一方で温室効果ガスの一つである二酸化炭素排出につながる原油需要の先細り傾向という、
未曽有の変動に翻弄されている経験から原油生産が伸びてこないということを一因として、
様々なものが値上がりの傾向にあります。

この流れがFRP業界にも波及し始めているのが、上記のリリース記事の背景にあると考えられます。

今日は不飽和ポリエステルやビニルエステルという樹脂をマトリックス樹脂として用いるFRP材の一種、SMC/BMCを事例としてその根強いニーズと今後の課題について述べてみたいと思います。

 

 

FRP材料の中では根強いニーズと実績のあるSMC/BMC

SMCやBMCと聞いて、材料をイメージできる方はあまり多くないかもしれません。

まず共通の特徴から言うと、どちらも強化繊維があまり長くなく(最長10mm程度で、多くが数mm程度)、
その配向がランダムになっています。

繊維長については最近一部の構造部材用途には最長50mmを超えるような特殊な製品もあります。

SMCとBMCの違いを理解するには言葉よりも実際のつくり方を見た方がわかりやすいです。

上記はmenzolitという化学メーカの動画ですが、
この中に2種類の材料の作り方が見えると思います。

ローラで移動したシートの上に、パラパラと短冊状の繊維を落とし、
最終的にシート状にして作るのがSMC、
繊維と樹脂をミキサーで混ぜ、大きな抱き枕のような形にしているのがBMCです。

SMCはマトリックス樹脂(充填剤を含む場合もある)を塗布したフィルムの上に強化繊維を落とし、
上から同じように樹脂付きのフィルムで合わせた上で、熱と圧力をかけて繊維に樹脂を含浸します。

BMCはマトリックス樹脂、充填剤、強化繊維を一気に混ぜ込むことで、
いわゆるバルクを作ります。

その形状からSMCはSheet Molding Compound、BMCはBulk Molding Compoundと呼ばれます。

前者はマトリックス樹脂として多くが不飽和ポリエステルで、一部ビニルエステルやエポキシがあり、
繊維長も長いものでは30mmを超え、繊維の種類もガラス繊維だけでなく炭素繊維のものもあります。

後者はマトリックス樹脂としてそのほとんどが不飽和ポリエステル、
繊維はほぼガラス繊維のみで、繊維長も10mm未満のものが多いです。

よって、SMCの方が材料特性が高く、BMCの方が成形しやすいという特徴があります。

BMCの成形事例は以下の動画を見るとイメージができます。

BMCは一般的に樹脂の流れと寸法安定性を武器に、樹脂製のトレーに加え、光学部品のハウジングや複合機の部材などに用いられます。また、ペレット状のBMCにして射出成形の要領で複雑形状の部品を作ることもあります。

その他の例として、マーブル(人造大理石)タイプのFRP製の浴槽はBMCを使ったトランスファー成形という手法で作られます。

熱をかけた雌型の中に座布団状態のBMCを入れ、
上から雄型で一気に押し込むことで逃げ場を失った材料が、
雄型と雌型の隙間を上方向に向かって駆け上がるという要領で、
浴槽のような形状物の成形が可能となります。

 

SMCは上述した浴槽に加え、5年ほど前に高級車のラゲージドアに採用されたことがあります。

アンテナ内蔵のため、電波透過性の良いガラス繊維を採用。
金属では複数部品が必要である一方、FRPは曲面形状を一体成形できるというメリットを評価されたのが、
採用決定の背景にあったと考えられます。

この辺りは過去のコラムでも述べたことがあります。

Mercedes SL Roadster のラゲージドアへの SMC 採用

最新型のSL(R232)では、CFRP、GFRPが使われている、
と書かれているだけでどこに使われているのかはよくわかりません。

The new Mercedes-AMG SL: the body shell

以下の紹介動画を見ても内装材の一部、ミラーカバー、スポイラー回り等に意匠目的の綾織りのCFRPが見えるだけです(AMG SL63の場合)。

ただ、ラゲージドアの形状はシンプルなものになっているため、
恐らくラゲージドアはFRPではなく金属(非鉄金属の可能性あり)に変更されたのかもしれません。

 

 

課題が見えつつあるSMC/BMC

上記の通りBMCを中心に根強いニーズのあるこれらの材料ですが、
課題が見えつつあります。

それを裏付けるようなものが以下の記事です。

PAINTING SMC: ADDING VALUE THROUGH A PERFECT FINISH

ここで述べられているのは、SMCは外観が優れている、ということです。

更にインモールドコーティングという、型内で着色まですることも可能で、
仕上がりも良いとのこと。

 

もちろん、このような切り口は悪くありません。

しかし、外観という観点でいうと正直FRPは最も苦手とする領域というのが私の考えです。

外観だけでいうと樹脂単体や金属等にはまったく太刀打ちできません。

必ず強化繊維の凹凸が何かしらの形で外観に影響を与えるからです。

逆にいうと外観で勝負しようという時点で、FRPの良さを消してしまっている可能性があります。
樹脂量が増えれば外観は良くなる傾向にあるからです。

しかし樹脂量が増えれば、それは少量の短繊維を強化繊維として含むような樹脂単体と近い材料との勝負となり、
FRPという強度や剛性で勝負すべき材料を選択する必要性が低下するというジレンマに陥ります。

 

そしてもう一つが脱プラスチックの流れです。

SDG’sをはじめとして、今プラスチックという名前の付くものの存在価値は急激に悪化しています。
FRPはいわゆる一般的なプラスチックのような樹脂単体と比べると、無機の強化繊維やフィラーが入っており、
マテリアルリサイクルもサーマルリサイクルも難しい。

このような材料を減らす方向に行こうという流れは、今加速することはあっても止まることはありません。

 

今の動向に対してどのように振る舞うべきかについて明確な答えは有りませんが、
少なくとも必要条件として考えられるのは、

・FRPという材料の適用動機を明確にできるよう、強みの明確化

・取り扱いや設計の難しさを乗り越えるための技術的な教育

・リサイクルの難しさを認識した上で提案するFRP材料の循環の有り方

といったことをきちんと考え、情報を発信していくことだと思います。

FRP関連技術が秘密主義、機密主義で育ってきてしまった弊害が今になって顕在化しているのかもしれません。

 

 

 

 

個人的には原油価格の上昇は続くと感じます。

そして近いうち、今以上に代替エネルギー確保について議論が不可避になってくると考えます。

このような議論の成立に必要と思われる材料や技術を提供できるのか、
というのが今FRP業界全体に求められているとだと感じます。

Copyright(c) 2021 FRP consultant corporation All Rights Reserved.
-->