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中東の Strata Solvay Advanced Materials がB777X向けFRP材料を提供

2021-09-21

COVID-19の蔓延による大打撃を受け、また困難な状況が続く航空機業界。

北米など一部の主力国内線は回復し、旅客航空会社の黒字化も見られ始めていますが、
日本の当該企業は苦戦を強いられ、最近も資金調達のニュースが出ていました。

しかしそのような中にあっても(むしろ、こういう時だからこそかもしれません)、
航空機メーカー各社は新しい機体の販売に向け、開発や評価試験を継続しています。

攻めることができない企業には資金が集まらないことに加え、
事業環境が改善した際、旅客航空会社からの受注も得られないことを考えれば当然なことかと思います。

苦境の続くBoeingが次の一手として期待しているのが、
2023年後半に納入予定とされるB777Xです。

多くの方が亡くなるという、
前代未聞の連続墜落事故を起こしたB737MAXの再来を思わせるソフトウェアの不具合により、
B777Xも飛行試験の延長ややり直しが取り上げられていますが、
現段階では納入時期の遅れに対する明確なリリースは出されていません。

※ご参考:B777X投入さらに遅延か 新たな安全性懸念が浮上

 

今回はB777Xの概要説明の後、
この機体に用いられるFRPを提供する中東のジョイントベンチャー企業、
Strata Solvay Advanced Materialsについて触れてみたいと思います。

 

 

先端が折りたたまれるB777Xの主翼

B777XのFRP部分にはStrata Solvay Advanced Materialsの材料が用いられる

(The image above was referred from https://www.boeing.com/commercial/777x/)

 

B777Xの概要については、
以下の動画が比較的わかりやすいかもしれません。

777X Static Airplane

2018年の動画で、静的試験向けに組み立てられているB777Xの機体を一例に、
概要を紹介しています。

詳細は上記の動画をご覧いただければと思いますが、
要点としては以下の通りです。

・コックピットはタッチスクリーンを採用

・窓の大きさは従来機種よりも一回り大きく(30%くらいかな、という話も出ています)

・静的試験に加え、飛行試験用に4機、更に詳細試験用に6機が必要

・主翼はスキンとスパーがFRP製で全長が72mあり、先端は折りたためる

・主翼には想定される最大荷重の1.5倍程度の力をかけ、破壊有無を確認

ポイントはやはり、

「主翼先端を折り曲げられる」

ということでしょう。このように主翼先端に稼働部のあるのは、民間機で初です。

 

航空力学を何となくご存知な方であれば、
何故このようなことが必要なのかはわかるかもしれません。

航空機にとって最も回避したいのは

「効率の低下」

です。

ここでいう効率は燃費という話ももちろんですが、
高速で移動する故、やはり空力性能に由来する効率が重視されます。

航空機の主翼先端では翼端渦と呼ばれる乱気流が発生し、
誘導抵抗というものが生じます。つまり、空気抵抗です。

この抵抗は主翼の先端が長細いほど低減されることが知られており、
最近の新しい航空機では主翼の先端がとがって伸びている事に気が付いた方もいるかもしれません。

このB777Xは主翼をできる限り伸ばして先端をとがらせ、
誘導抵抗を減らそうと考えたものの、長くなりすぎると飛行場のサイズ制限にはまらないため、
先端だけ上に持ち上がる機構を取り付けたということのようです。

 

また、主翼はFRPが多く使われていることが動画でも述べられています。
上記動画でも主翼下側のスキンはFRPの色で黒く反射しているのがわかります。

 

その一方で胴体は緑色の塗料が塗られています。

これは、胴体に何か物が接触したりした際にそれがわかるように塗られているものですが、
主に金属材料部分に対してBoeingが行う対応です。

つまり、B777Xでは胴体、少なくともスキンはFRPでは無いことがわかります。

BoeingがFRP適用の適材適所を進めることは度々伝わってきた情報ですが、
B787で話題となったFRP製胴体の適用を辞めたことは大きな方針転換といえます。

これは、胴体にFRPを使うと組み立て時の寸法精度誤差が大きく、
それを埋めるためにシムを使うというやり方が、
様々な評価試験でのネガティブな結果につながる上、
FRPの特性を低下させるという判断だったのではないか、
といったコラムも海外では見られます。

Composites in aircraft fuselage – now and in the future
https://www.compositesworld.com/articles/composites-in-aircraft-fuselage-now-and-in-the-future

 

いずれにしても、B787でチャレンジをしたからこそ分かったことです。

異方性のあるFRPを取り扱うというのは、
やはりきちんとした設計思想が不可欠ということの事例とも言えます。

上記コラムでも書かれているようにB787の設計は20年前をベースにしているため、
今はよりFRP設計思想が進化しているという部分もあるかと思います。

ただ、私個人の見解として、そもそもFRP以前に設計思想自体が分業によって弱体化しており、
基本からきちんと学ぼうとする技術者も少なくなっていることから、
いうほど変化が起こっていない様にも感じます。

これはFRP業界に限らず、製造業全体に言える大きな課題といえるかもしれません。

 

 

B777X向けのFRP材料を提供する Strata Solvay Advanced Materials

このB777Xの構造部材となるFRPを提供するのは UAE の Strata Solvay Advanced Materials という、
ジョイントベンチャー企業です。

Solvayは言わずと知れたベルギーの化学メーカーです。

FRP向けにも熱可塑を中心に材料を展開しており、
過去のコラムでも取り上げたことがあります。

※ご参考:Solvayが提案する高機能ポリアミドの LFT

※ご参考:Solvay 社製 PEEK シーリング材が耐油性と耐酸化性認定を取得

Strata は Mubadala Investment という国営持株会社の子会社のようです。

Mubadala Investmentについては、こちらのHPで見ることができます。
石油に依存しない様、様々な産業に事業展開している様子がわかります。

 

このStrataとSolvayがジョイントベンチャーとして立ち上げたのが、
Strata Solvay Advanced Materialsとなります。

この企業がB777X向けに材料を展開するという情報は1年ほど前に出ていますが、
最近の情報はほとんど開示されていないようです。

Strata, Solvay joint venture facility completed
https://www.compositesworld.com/news/strata-solvay-joint-venture-facility-completed

 

わかっていることとしては、この企業がB777X向けに提供するのが、
エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とした熱硬化性のFRPであること、
強化繊維が炭素繊維であることくらいです。

材料の仕様や特性等、多くの情報が現段階では謎です。

 

Strataのグループ会社である Strata Manufacturing の情報によると、
この材料は尾翼部分と床の梁に使われているようです。

尚、この Strata Manufacturing はBoeingだけでなく、
Airbus、Leonardo、Pilatus等の航空機メーカーにも製品を納めていると書かれています。

 

今回の記事から考えるべきことは何でしょうか。

 

 

中東諸国は脱石油に向けた産業の複合化を急いでいる

まず考えるべきはここです。

今までのような原油の一本足打法では、
この先が立ち行かなくなるという危機感がその根底にあります。

航空機産業への参入はその第一歩かと思います。

更に今回は航空機部品だけでなく、
欧州の化学メーカーと組むことで、
材料から提供するという体制を整えています。

今まで航空機向けのFRP材料と言えば、
北米、欧州、日本の3本柱で支えてきましたが、
その状況が大きく変わってきているのです。

さらに、中国を始め他のアジア諸国もこの手の流れに乗ってくるでしょう。

 

航空機で儲けを出すというよりも、
航空機業界で実績を作ってブランドを浸透させ、
他の産業に展開していこうとしているのは明らかです。

 

素材を押えれば、多くの川中、川下産業へすそ野を広げられるからです。

 

COVID-19の混乱と脱炭素への流れによって加速した中東の危機感は、
色々な意味でFRP業界も含めた様々な業界へと影響を与えていくものと考えます。

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