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Eurofighter 向け towed decoy への CFRP 適用 Vol.144

2020-04-06

towed-decoy for eurofighter made by cfrp with bladder moulding

( The image above was referred from https://www.insidecomposites.com/rockwood-secures-eurofighter-order-from-babcock/

今日のコラムでは、Eurofighter 向け towed decoy への CFRP 適用ということについて述べてみたいと思います。

 

Rockwood Composites が受注した towed decoy? / 曳航式デコイとは

Rockwood Composites というFRPをはじめとした複合材料の成形加工を生業とする企業が、
Eurofighter 向け decoy の CFRP 部品成形を始めたとリリースが出ていました。

以下のサイトでリリースを読むことができます。

https://www.rockwoodcomposites.com/eurofighter-decoy-babcock-launch-sy

towed decoy という部品は、

「曳航式デコイ(えいこうしきでこい)」

と日本語で呼ばれるもので、
いわゆる「囮(おとり)」です。

曳航式デコイは、普段戦闘機の主翼の下等に装着されていますが、
それを脱着することで機能を発現します。

具体的には、戦闘機と曳航式デコイの間はワイヤーでつながれており、
母体から100m程度(長さは色々だと思います)離れたところで母体に追従します。

その後、レーダー波等を発信し、
虚偽の標的となる機体データを相手方のレーダー上に表示させるようにするとのことです。

これにより、誘導ミサイル等は曳航式デコイに引き寄せられ、
母体である戦闘機本体の被弾を防ぐ、という仕組みです。

当然戦闘機が普段装着する物なので軽いことは絶対条件なのと、
かなりのスピードで牽引するため、
それに耐えうる強度や剛性が必要であることは明白です。

これは、CFRPを用いる鉄板の動機といえるでしょう。

 

 

bladder moulding technology / 風袋成形

今回 Rockwood Composites が受注したのは、
曳航式デコイの筐体であるCFRP部品の成形です。

Rockwood Composites は bladder moulding technology 、
いわゆる風袋成形技術を有する企業です。

以下にCFRPの風袋成形の一例が動画で紹介されています。

こちらの動画では外側が金型、内側が風袋の場合の成型技術です。

このような成形方法であれば、比較的柔軟な形状物に対し、
中空成形物を作製することが可能となります。

 

では、今回の成形についてポイントといわれる部分を見てみます。

・積層数、積層配向を最適化することで、必要とされる構造部材としての性能要件を満たした

・強度や剛性といった製品の要件を満たすため、金型設計も見直した

・製品製造の安定性を担保するため、外側の風袋と内側のマンドレルの管理を行っている

 

上記を見ると、成形方法で性能の調整を行ったこと、
そして上記の動画と逆で、曳航式デコイでは外側が風袋、内側が金属のマンドレルのようです。

恐らく、電波を発生させる機器を確実に筐体内に収めるため、
内径公差の方が重要であることがその背景にあると考えます。

 

 

風袋成形適用の狙いと注意点

今回の曳航式デコイの製造において、Rockwood Composites が主張しているのは、

「品質とコストの両立」

です。

 

従来、曳航式デコイの成形はフィラメントワインディング(FW)で行われていたようですが、
それに比べ品質は安定し、コスト的にも有利ということが繰り返し述べられています。

 

個人的にはこのコンセプトは悪いとは思いません。
ただ、若干物足りないかな、という気もしています。

何故ならばコストと品質というのは当たり前の付加価値であり、
+αが見えないからです。

恐らく軍需関係ということもあり詳細は明かされていないだけかもしれません。

 

尚、風袋成形には注意点もあります。

今回の成形に使われている材料は恐らく熱硬化性のCFRPで、
マトリックスはエポキシ系やその派生ではないかと考えます。

エポキシの硬化反応、すなわち重合反応はアミン等の塩基性触媒による、
主鎖骨格中にある水酸基(-OH)とエポキシ基の間でのエポキシ開環重合反応によるものです。

 

化学結合が新たに形成されるということは、
活性種が発生しており(塩基性触媒下ではビスフェノール等の主鎖がアニオン種になる)、
当然この活性種は開環重合反応だけでなく、他の材料に対しても攻撃性があります。

 

そのため、風袋成形に用いるエラストマーもその攻撃を受ける可能性があるため、
繰り返し利用には注意が必要です。

 

この辺りが高分子を成形に用いることの限界の一つといえるかもしれません。

 

 

 

今回は軍需向けの風袋成形についてご紹介しました。

風袋成形は上述の通り、複雑形状への追従性が高いなどのメリットがある一方、
形状追従できるようなエラストマー等は、
熱硬化反応の攻撃を受け、劣化する可能性があるということも想定しなくてはいけません。

 

ご参考になれば幸いです。

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