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COVID 19 の緊急対応に向けた 3D Printing の活用 Vol.143

2020-03-23

 covid-19-3d-printed-adapter-ventilator

( The image above was referred from? https://www.3dprintingmedia.network/isinnova-shares-3d-printed-adapter-to-turn-snorkeling-mask-into-a-non-invasive-ventilator/ )

今日のコラムでは COVID 19 の緊急対応に向けた 3D Printing の活用 ということについて述べてみたいと思います。

 

感染拡大の進む COVID 19

昨今の世界中のマスメディアで取り上げられている COVID 19。

感染拡大に加え、何より世界中で恐れられているのは、

「医療体制の崩壊」

です。

COVID 19で重篤になった患者の増加はもちろん、
それ以外のウィルスや持病のため呼吸器に問題が生じている患者の方がいる場合に必要とされるのが、

「酸素マスク」

です。

 

イタリアでは北部を中心に重篤者が増えていることもあり、
酸素マスクを用いた治療(対処療法が主体)を行うためのマスク不足に悩まされているようです。

 

3D Printer 技術の応用、そしてスポーツ用品を酸素マスクへ

このような中、イタリアの Isinnova という企業が、

「3D printing の技術を使って酸素吸引用のジョイントを作り、
それを、市販されているシュノーケリングマスクに装着することで、
緊急対応用の酸素マスクを作る」

という発表をしました。

この発表はこちらのページで読むことができます。

 

材質等、技術的な情報はほとんど述べられていませんが、
以下の動画を見るとどのような部品を作り、
それをどのように使うのか、ということについては理解できると思います。

シュノーケリングマスクのメーカーはスポーツ用品では有名な DECATHLON ( デカトロン )。
上記の動画で紹介されていたマスクはこちらのサイトでも見ることができ、
普通に買うこともできます。

潜水するのではなく、あくまでシュノーケリングです。
フルフェイスで顔を覆う一方、上部を大気に解放することで、
海の中を見ながら泳げるという製品です。

シュノーケリングマスクに 3D Printer で作った部品をつなげ、
緊急用酸素マスクにするという内容については、以下のタイトルでこちらのサイトでも記事として紹介されています。

Title: Isinnova shares 3D printed adapter to turn snorkeling mask into a non-invasive ventilator

 

シュノーケリングマスクの酸素マスクへの転用は非営利

これによると、重要なポイントは以下のようです。

– 試作品は Chiari Hospital の現場で検証されており(人工呼吸器を使った酸素吸引について)、特に問題は起こっていない。

– シュノーケリングマスクにジョイントをつけて酸素吸入をすることについて、医療認証を得ていないため、
使用はあくまで緊急時であり、その旨、患者に書面で理解してもらう。

– 今回の提案は営利目的でないため、3D printing 用の形状データは公開する。

– 粗悪品が出回ることを防ぐため、特許を取得しそれを無償公開する。

– 本製品を作製の上、営利目的で転売することを禁止する。

とのことです。

 

あくまで営利ではなく、
緊急事態によって医療体制を崩壊させないことが主目的にある、
ということを強く主張しています。

 

3D printing 技術の強みとは

今回のリリースで興味深いのは、

「3D printing の特性を上手く生かしている」

ということでしょう。

 

世界の様々な製品を適正価格で安定品質で作れる世界の工場ともいえる中国が混乱している現在、
様々な部品が供給不安になっています。

一般人向けの製品もさることながら、
製品供給不安に陥ってはいけないのは、各国の国内事情という観点でいくと

「消防、警察に加え、やはり医療」

です。

治安と安全に加え、病気やけがの人を救うための体制の崩壊は何とか避けなくてはいけません。

このような状況下にあって、 3D printer が優れるのは、

「生産性が高いわけではないが、原料と小型設備があれば自前で自由な形状物を作れる」

という点です。

各断面形状を積層していくというその製造コンセプト故、
3D Printer 本体の成形部分のサイズという上限はあるものの、
技術的には構築できる形状に制限がありません。

また、3D Printer 本体が医療現場にあれば、
3D 形状データと材料さえそろえることで、すぐにでも作製を開始できます。

この形状と作製開始の自由度こそが、必要なものを必要な時に作るという、
医療現場で最も求められる性能であり、
部品供給不安が襲い掛かる昨今、極めて重要なセーフティーネットとなるでしょう。

医療向けであれば例えば大手の stratasys は、以下のような医療専門のページもあります。

https://www.stratasys.co.jp/medical

これは生体適合性の高いスーパーエンプラのような材料ラインナップを抱えている企業ならではの強みともいえます。

今回は生体適合性の材料が求められるというよりは、
呼吸する酸素が通過する製品として問題は無いか(耐久性、材料漏出性、毒性、異物発生等)という観点ですが、
COVID 19 の拡大が 3D Printer が医療現場での緊急部品供給源として新たに見直されるきっかけになるかもしれません。

 

 

 

COVID 19 によってFRP業界もその影響を受けており、
全体的にみると押し下げの力が強まっている一方、
今まで後回しにされてきたもの、注目されてこなかったものが活気づくという、
単なる経済停滞ではなく、色々な意味で産業構造の変革が起こっていると強く感じています。

産業界における今までの正解と言われたものが成立しなくなり、
細々と続けてきたことが確たる地位を得るという変化が、
日々進行しているのです。

このような変革期に本当の力が試されるのだ、
と常々感じています。

 

この変革期にどの産業、どの企業が生き残るのか、
知るすべは今のところありませんが、
間違いなく言えるのは組織を構成する個々人が、

「ピンチやリスクの中にチャンスはないのか」

という創業期にある企業としての当たり前の考えを持ち、
それを行動に移すことだと考えます。

とある世界的な企業を創業した戦争経験者の創業者が、

「自分が苦しいときは相手も苦しい、という気持ちを忘れないことを戦争中に学んだことが役に立った」

と述べていた言葉を読んだことがあります(詳細のニュアンスは違うかもしれませんが、主旨として上記の内容だったと思います)。

 

今はまさにそのような状況といえるかもしれません。

 

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