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Graphene を熱可塑性発泡ポリウレタンに添加した 安全靴 の保護材へ適用 Vol.130

2019-09-24

Graphene を熱可塑性発泡ポリウレタンに添加した 安全靴 の保護材へ適用 ということについてご紹介したいと思います。

 

Graphene (グラフェン)とは

樹脂をマトリックスとした複合材料の本命候補として、
繊維以外で注目を集めている Graphene (グラフェン)。

炭素はダイアモンド( diamond )、グラファイト( Graphite )、アモルファス炭素( amorphous carbon )、
フラーレンのような原子数60以上の分子状炭素同位体の4種類の同位体があります。

Graphene は上記のうちグラファイトの一種で、
炭素原子が共役二重結合で六員環を形成し、それが平面上に広がる形態のため、
平面巨大分子全体にπ共役系が広がっていることから、
広い波長範囲にわたって光を吸収し、結果として黒色に見えます。

この平面巨大分子はファンデルワールス力、いわゆる分子間力で層状に結合していますが、
3.35オングストロームという離れた距離故に層間結合力が弱く、
それ故鉛筆のように微弱な力で剥離させることができます。

これを層状ではなく単層にしたものが Graphene です。

Graphene は複合材料の強化媒体として用いられるのではないか、
という取り組みは決して真新しいものではありません。

– 鋼鉄の200倍の強度

– 大変形が可能

– 銅の100倍にあたる高い導電性

等の機械、物理、電気の各特性を掲げ、
熱硬化性樹脂に適用するという取り組みがその一例といえます。

マトリックス樹脂(エポキシ樹脂)に対し、0.125wt%程度の表面を酸化処理したGrapheneを適用することにより、
破壊靭性が65%も改善したという報告例もあります。

同様に0.1wt%のGraphene添加により、30%程度の引張強度改善も実現できるうえ、
1wt%程度の添加量までは添加量に応じ、導電性が高まるといった結果も明らかとなっています。

この辺りの詳細については以下の過去のコラムをご覧ください。

FRP学術業界動向 – Graphene の FRP への活用

 

Graphene を適用する 安全靴 の保護材料

今回ご紹介する技術では、
この Graphene を安全靴の「中足骨(Metatarsal bone)」保護具である、
熱可塑性発泡ポリウレタンに混錬することで耐久性を高めながら、
耐衝撃性や衝撃吸収性をはじめとした保護機能の向上を目指す、
というのが狙いのようです。

Graphene の提供元は first graphene 。
以下のHPにプレスリリースも書かれています。

First Graphene announces successful trial of graphene enhanced safety boots

また、この安全靴のメーカーは Steel Blue という企業です。
以下にHPがあります。

https://steelblue.com/au/boots/

今回ターゲットとなっている保護具の概況については以下のイメージ図を見るとわかりやすいと思います。

( The image above is referred from https://steelblue.com/au/technology/met-guard/ )

100ジュール相当のエネルギーがその個所に加えられても、
足を守れるというのがポイントのようです。

上記のイメージ図によると20 kgの重さのものが50 cmの高さから落ちてくる、
ということが想定されているようです。

当然保護機能が高いのは重要ですが、
中足骨の部分であるため歩行による稼働が多く、
柔軟であることが必須。

そのため、発泡材料を用いて柔軟性と衝撃吸収性を高める必要があり、
その特性改善に Graphene が効果があると見込まれているようです。

用いている Graphene の製品名は PureGRAPH(R) 10 。

以下のHPで概況を見ることができます。

( The image above is referred from  https://firstgraphene.net/products/puregraph/)

 

製品名の10というのは粒径の情報のようで、
およそ 10 μm 程度の所に粒径の分布ピークが来ていることがわかります。

またカーボン製品ですのでラマン分光の結果も載っていますね。

ラマン分光を用いて光源であるレーザーによって励起された双極子モーメントのうち、
ラマン散乱と呼ばれる分子構造由来の特定の周波数シフトが出現し、
カーボンはGバンドのうちG+と呼ばれる1590 cm-1にピークが出現することが知られています。

CNT(カーボンナノチューブ)の場合はG-という低波長側にシフトしたピークが出現し、
これは直径に比例しています。

※参考:CNT の存在を確認する ラマン分光

その一方で PureGRAPH(R) シリーズはサイズによらず、
1300 cm-1付近にピークが見られます。

もしかするとこれはグラフェン固有のG-のピークなのかもしれません。

今回の中足骨の保護具への適用はまだコンセプト実証段階とのことで、
具体的なデータなどは出てきていません。

しかし、グラフェンが高分子中に入ることにより、
実際に外部衝撃が加わった場合、
その変形衝撃を早急に熱に変化させることで、
衝撃吸収性能を高め、足を守る、
というような効果を狙っているものと推測します。

 

 

今回のようなフレキシブルなものに限らず、
保護具の役割は外部からの衝撃を一刻も早く熱エネルギーに変換することです。

このようなエネルギー変換は粘弾性を有する高分子が比較的得意であり、
そこにフィラーや強化繊維を加えることでその特性が高まるということは概ね認められつつあることです。

いよいよ複合材料もナノテクを本格的な産業用途に適用しようとする段階に来たのかもしれません。

ミクロのメカニズムをマクロ的な機能発現につなげることは、
要素技術の大幅な進展に直結することが多いです。

 

今回の取り組みにより、Grapheneという新たな強化媒体が複合材料における選択材料として認知され、
様々な機能性発現や市場課題の解決に結びつくと期待したいと思います。

 

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