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データマイニングを活用した熱可塑性FRP製パイプ/タンク製造システム ambliFibre Vol.127

2019-08-13

( The image above was referred from https://frptitan.com/thermoplastic-composite-pipe-made-of-amblifibre-system/

今日のコラムでは、

「 データマイニングを活用した熱可塑性FRP製パイプ/タンク製造システム ambliFibre 」

ということについて述べてみたいと思います。

 

ambliFibre とは

ambliFibre については以下のサイトで概要を見ることができます。

https://www.amblifibre.eu/

ambliFibre は、
adaptive model-based Control for laser-assisted Fibre-reinforced tape winding
の略とのこと。

プロジェクトの構成は、
レーザーによる積層システム開発実績のある Fraunhofer IPT や ILT、
光学システムの要素研究を行う Chair for Technology of Optical Systems (TOS) や、
Teaching and Research Field for Design and Development of Microsystems (KEmikro) といったアーヘン大学の組織、
並びに Ixun Lasertechnik GmbH 等の上記組織からスピンオフした民間企業の連合から成っています。

どのようなプロジェクトなのかは以下の動画を見るとわかりやすいかもしれません。

上記のインタビューでも述べられていますが、
IPTは既に25年も前にレーザーによるFRP積層システムは完成させています。

ポイントは、製造工程(主に積層、含侵)のインラインモニタリングを行いながらインプットデータを取得の上、
得られた製品の寸法検査や非破壊検査(明確には述べられていませんが、文脈や話している内容から含まれていると考えます)の結果、
試作品の機械特性評価結果の結果をアウトプットとして取得し、
これらのインプットとアウトプットをアルゴリズムで学ばせながら最適化を行うという、
いわゆるインテリジェントシステムを複数技術を統合させることで構築していくことです。

データマイニングにも力を入れているらしく、
smart human-machine interface (HMI)というアルゴリズムでこれまで蓄積されてきた経験値も参照しながら、
シミュレーションにより最適な工程を提案するようです。

工程の提案においては、FRPの積層時のポイントである

– レーザー出力

– 押し付け荷重

– プロセス速度

等の複数のパラメータについて、
その組み合わせも含めアルゴリズムにより検証を行うとのこと。

このようなことが実現できれば、
量産工程において、
常に最適化を繰り返すという、

「自分で考えるFRP製造工程」

が具現化できる、ということが ambliFibre の狙いでしょう。

ターゲットとする製品は熱可塑FRPパイプやタンクとのことで、
特にパイプについては海底油田等の高荷重並びに腐食が問題になるような個所への適用を目指すとのこと。

海底油田や海底ガス田は、今後さらにFRPが活躍すると期待される分野ですね。

これについては過去のメールマガジンでも m-pipe (R) を例に述べたことがあります。

※ 海底油田、海底ガス田への熱可塑性複合材パイプの適用 Vol.086

今後は、この技術を

1. パイプ等の同一断面形状製品の連続製造工程

2. タンク等の単品製造を基本とした非連続工程

3. 上記1と2の組み合わせ

といった形態で産業界での適用実績を重ねていきたいとのことです。

 

紹介した技術のポイント

今回ご紹介した技術のポイントは、

「複数の要素技術を組み合わせ、一つのシステム設計をしている」

ということでしょう。

FRPは設計、材料、解析、品質保証等の複数の技術を幅広く理解していないと、
産業界で認められるものが作れないという事実があります。

ambliFibre は最終的な複合要素技術システムを構築するため、
必要な要素を有する組織や企業を集め、
そこでオープンな議論を行うというコンソーシアム体制を採用しています。

しかしながら欧州では一般的なこの取り組みは、
機密を第一に考える風潮の強い日本やアジア諸国では機能しにくいと私は考えています。

上述の複合要素技術システムを構築するためには、
日本は日本流で浸透しやすいやり方を構築するしかないと思います。

欧米を追従するというやり方ではなく、
自国、自社の強みを最大化させながら情報発信を徹底し、
同調する企業や国と連携していく。

このように自らが灯台となる取り組みが今まで以上に必要になっていくでしょう。

もう一つのポイントは、材料の品質データをプロセスにインプットするということでしょう。

FRP製品製造工程における最大のポイントは、

「入り口である材料のばらつきを材料規格で抑制することで後工程への影響を最小化する」

というものです。

FRPテープ材料の場合、繊維と樹脂の目付、開繊状態、
テープ幅、異物の有無などのデータが、
材料の品質データの一例です。

材料はどれだけ慎重に製造しても必ずばらつきます。

この材料のばらつきという存在を許容する一方で、
それに応じたプロセスパラメータの調整を行いながら、
実際の製品評価で取得されるデータを踏まえ、
常に工程の最適化を行う、というところまで今回のシステムが考えられているのであれば、
それは本当の意味でのインテグレートシステムといえます。

FRP製品の本格的な産業化に向けた取り組みの一例として、
ご参考になれば幸いです。

 

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