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海底油田、海底ガス田への熱可塑性複合材パイプの適用 Vol.086

2018-01-29
近年注目が集まる熱可塑性FRP。


熱可塑性の複合材料使用に比較的積極的な欧州を中心に、
Airbusなどでは機体にCFRTPを使い始めているというのはよく聴く話です。


また Overmolding で連続繊維のFRP成形物の上から射出成型で輪郭やリブの成形を行う、
といったことも積極的に取り組まれており、
量産性を意識し、好調と再編の続く自動車業界へ適用しよう、
といった動きも闊達化しています。



そんな中、海底油田、海底ガス田へ熱可塑性複合材パイプを適用する、
という話が注目されつつあります。

耐腐食性が高いというFRP固有の機能性を十分に活用したコンセプトです。

エネルギー産業界の中では比較的著名な動きでしたが、
資源開発という事業について、日本はどちらかというと出資という形でかかわるケースが多いため、
該産業の動きに対して製造業の方々にとって興味の範囲に入りにくいのかもしれません。


今回ご紹介するのはスーパーエンジニアリングプラスチックの代名詞ともいえる、
PEEK(Polyether ether ketone)の老舗ともいえるVictrexからのリリース記事です。

以下のURLから読むことができます。

https://www.victrex.com/en/news/2018/01/m-pipe-dnvgl-rp-f119-qualification-and-webinar


m-pipe(R)と呼ばれる高圧パイプをMagmaが開発し、
DNVGL-RP-F119 という認証を取得したとのことです。

このm-pipe(R)のマトリックスにVictrexのPEEKが使われているとのこと。


本認証を行ったのはDNV(デット・ノルスケ・ベリタス)というルウェー・オスロに本部を置く国際的第三者認証機関で、
船舶や航空機などの様々な認証を行っています。


認証を行うというのはより具体的にいうと、


「ある用途に使うために必要な要件を満たしている」


ということを証明することです。



よく航空機業界でいうとアメリカのFAA(連邦航空局)のFARなどと比較されることもありますが、
中身はかなり違います。

FAAの要件は極めて「ざっくり」で、細かい要件はほとんどかかれないのが一般的。

その一方でDNVは細かい要件がかかれることが一般的です。



さて実際のDNVGL-RP-F119の中身はというと実は以下の所で見ることができます。

https://www.dnvgl.com/oilgas/download/dnvgl-rp-f119-thermoplastic-composite-pipes.html



要件概要としては以下のように書かれています。

1. Suppliers of TCP for offshore service and suppliers of raw materials for such pipes
who seek market access for their products.

2. Operators, contractors and others seeking acceptance for using TCP in offshore operations.

3. Suppliers and recipients of TCP who need a common technical basis for contractual reference.


要件に加え、要件を満たすか否かの評価方法についての情報も含まれるのがわかります。


上記のVictrexのリリースによるとDNVGL-RP-F119の認証を受けるのに必要な試験は実に50以上。
海底10,000フィート(約3500m)、15ksi(約103MPa)に長期間にわたって耐えうることを証明するため、
厳しい要件が課されるのはある意味想定内といえます。



当然ながら認証においては長期耐久性、耐薬品性や耐腐食性といった基礎物性の取得と、
そのデータを活用した設計許容曲線の作成が必須であり、
Victrexは材料メーカーとしてこの辺りの協力を惜しまずに行ったと書かれています。
(協力対象者は恐らくPipeの設計を行っているMagmaです)


基礎データに裏付けられた設計というものは製品の信頼性担保に極めて効果があり、
また到達までに時間がかかるのが一般的です。


ここはVictrexが十分な材料データを持ち、
さらにデータ取得に全面協力した、
ということがDNVの認証取得につながったとみるべきかもしれません。




いかがでしたでしょうか。

高圧パイプというFRP適用の新たな一面をご覧いただけたかもしれません。


上記の通りFRP製品設計には設計と材料が密接に連携することは極めて重要であるということがわかると思います。

設計だけ、CAEだけ、材料だけ、製造だけ、品質保証だけ、
といった「だけ」という制約を意味する文言で範囲を狭めずに、
どれだけ広い業界と連携できるのか。

今後はこのような俯瞰した視点を持つ企業や個人が強く求められていくに違いありません。
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