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Alpex と HRC のJVが江蘇省に複合材向けツーリング工場を建設 Vol.120

2019-05-07

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FRPのプロが注目する「業界最新ニュース」Vol.120 2019/5/6

(隔週月曜日発行)

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<目次> ━━━━━━━━━━━━━━━━

・「FRP業界最新ニュース」

・お知らせ

・編集後記

<今週の「FRP業界最新ニュース」> ━━━━━━━━━━━━━━━━

今週のFRPのプロが注目する「業界最新ニュース」では、

「 Alpex と HRC のJVが江蘇省に複合材向けツーリング工場を建設」

ということについて述べてみたいと思います。

FRPも含まれる複合材料に関するツール(金型等)を設計、
製造、販売する Alpex Technologies GmbH という企業と、
FRP製品の成形加工を生業とする HRC という企業のJV(Joint venture)が、
江蘇省に複合材向けツーリング工場を建築したとのことです。

本内容の記事は以下で見ることができます。

https://www.compositesworld.com/news/alpex-and-hrc-form-jv-to-provide-composite-tooling-services-in-china

Alpex Technologies GmbH という企業は金型などのツーリングに特化した企業のようです。

以下のURLで会社紹介の動画を見ることができます。

宇宙、航空、自動車といったアプリケーション向けにツーリングを販売することはもちろん、
成形加工工程の設計と提案、またプロジェクト推進のサポートなども行うということは、
以下のHPにも書かれています。

https://www.alpex-tec.com/

 

動画を見てみると、
プレスを中心としたさまざまな成形加工に関わる情報が出てきます。

RTM等の金型も範疇のようですね。

Aplex Technologies はオーストリアの企業です。

この企業のHPを見てみると、
つい最近も DINOMAX というマシニングセンターメーカーに出資するなど、
積極的な技術協力体制を構築している印象です。

 

一方のHRCについてはあまり情報が出てきませんでしたが、
China Composites Expo 2019 に出展していたらしく、
概要は以下のページで見ることができます。

http://www.chinacompositesexpo.com/en/netshow.php?company_id=1921

これを見ると基本的にはFRP成形体を製造、販売する企業だということがわかります。

加えて、HRCは中国企業であると同時に Fraunhofer ICT の中国におけるパートナーであり、
ACTC(Advanced Composite Technology Center)という中国における自動車向け軽量化研究所を、
ICTと協力して立ち上げているようです。

 

 

今回のリリースから考えるべき点は2つあります。

 

一つ目はFRPのアジアでの主役は間違いなく中国であるという事実です。

 

欧州、北米におけるFRPの市場の次として、
アジアは極めて高いポテンシャルを有する地域とみられています。

これまでアジアの地位を上げるのに重要な役割を果たしてきたのが日本でした。

衰退する繊維業の新たな一手としてガラス繊維や炭素繊維といった新規の繊維を事業に育て、
今でもその地位は高いと考えます。

しかし、良くも悪くも日本における第二次産業の研究開発については、
効率化を目的に分業が進みました。

これにより研究開発スピードが向上し、
様々な製品を世に送り出してきました。

その一方で分業は副作用もあります。

最も大きな副作用は全体を俯瞰してみる企業や技術者が減少し、
さらに機密に対する過剰な意識が先行して敷居を高くして協業を嫌うことで、
協業するという文化が衰退したということです。

結果的に幅広い考え方と知見が必要な、
FRPをはじめとした新規素材を活用する土壌が日本に少なくなったのです。

日本における研究開発の高速化は当然ながら莫大な利益をもたらした一方、
高額の投資が継続的に必要になる上、
日本以外のアジア国の台頭により低コスト化が一気に進みました。

コスト競争から逃れるため、
新規技術を開発しようとしても、
上述した分業化と機密の意識過剰により、
新しいものがなかなか出てこないというジレンマに陥っているのが今の日本の第二次産業だと思います。

 

中国も元々は先進の技術を形だけまねて製品を出すという戦略でしたが、最近は

「技術はお金で買う」

というマネー戦略が先行しています。

今回の Alpex と HRC のJVについても中国側であるHRCがかなりの資金を出し、
中国進出のリスクと障害を低減させているものと推測します。
(出資比率までは調べていないため不明です)

このような姿勢には賛否両論あるのは事実ですが、
お金を大量に使って攻め続けるという大国中国が海外から見ると魅力的であり、
その結果としてアジアの中心地になりつつあるのは事実だと思います。

これに対抗するには日本の企業もマスだけを追い続けるだけの戦略から脱皮し、
物によっては少量多品種で勝負するという必要性が高まっているのではないでしょうか。

 

 

もう一つがFRPの成形加工における最重要の要素をシンプルに理解するということの大切さです。

様々な企業からFRPの成形加工工程について情報が欲しい、
技術的指導をして欲しい、評価をしてほしいという依頼が来ます。

上記のような仕事でいつも違和感があるのが、

「成形や加工のノウハウ」

という言葉です。

すべてを否定するつもりは毛頭ありませんが、
FRPのような異方性が高く、扱いに注意が必要な材料の成形加工について、
ノウハウを積み上げないとうまくできないというものは、
再現性を低くし、結果として量産に耐えられないケースが多くなります。

バランスの悪い積み木の上にさらに積み木を積み上げるイメージを受けます。

一言で言えば、FRPの成形加工は要素を理解した上でシンプルなのが一番なのです。

Alpex のHPにも色々書いてありますが、
そこから得られる範囲での情報はごく一般的です。

Innovative と書いてありますが、
特段何か新しいものではないのです。

それが悪いのかというとそうではありません。

FRPの成形加工で最も重要な要素が抑えられているか、
ということがはるかに重要なのです。

シンプルに考えた時に抽出される成形や加工に対する要素が、
何らかの形で網羅されているのか。

それがわかっていれば、大きな問題はありません。

Alpex のHPでは、私が最重要と考えるもののうち、
いくつかの要素が述べられていませんが、
これは実際に話をしないとわからないので何とも言えません。

逆にいうと Alpex が本当に技術力があるのかは、
話を聴けば大体わかるのです。

重要なのはこのような判断の根拠になる問いかけを予め整理しておくことでしょう。

企業によっては機密やノウハウだから言えないということもあるでしょう。

そのような企業であってもこちらの問いかけに対する応答を見れば、
技術力の有無は概ねわかります。

私の見ているところが細かいノウハウではなく、
本質を理解しているかしか見ないからです。

FRPの成形加工を生業とする企業を調べる際、
話をする際には上記のことを意識すると良いかもしれません。

いかがでしたでしょうか。

今回のような動きを見る際は、
その背景にある経済的、経営的、そして何より技術的動きは何なのか、
ということをバランスよく見ることだと思います。

ご参考になれば幸いです。

 

<お知らせ> ━━━━━━━━━━━━━━━━

今後の登壇予定のセミナーを以下の通りご紹介させていただきます。
合わせて参加をご検討ください。

– 2019年6月20日(月)12:30-16:30

会場:日刊工業新聞社 東京本社 セミナールーム(東京・日本橋)

FRP製品開発フローと技術的なポイント

〈2019年6月20日 セミナー 〉FRP製品 開発フロー と技術的なポイント

– 月刊誌「 機械設計 」連載:2019年5月号発売中

2019年5月号が発売され、第5回目の連載記事が掲載されています。
ご興味ある方は購入をご検討ください。
今回は熱硬化と熱可塑の違いと留意点について書いています。

※題目 知っているようで知らない「熱硬化」と「熱可塑」の違い

http://pub.nikkan.co.jp/magazines/detail/00000863#index

<編集後記> ━━━━━━━━━━━━━━━━

いよいよ長期のGWも最終日ですね。

本メルマガをご覧の方の中には、
ゆっくり休めた方、
家族サービスやプライベートで忙しかった方、
仕事に打ち込まれた方など、
色々だったと思います。

この連休の後半、私の実家に家族で泊まりに行きました。
そこで長女が

「授業で蝶の成長を調べる課題がある」

とのことで、猫の額ほどの庭に植えてあるゆずの木に卵が無いか、
父、私、娘の3人で探していました。

この時期、柑橘の木に産卵するのはアゲハチョウが多いとのことで、
1mm程の薄い黄色の丸い形の卵を探していました。

なかなか無いなー、と思っていた矢先、
突然目の前に大きな影が出現。

なんと、卵探しの最中にアゲハチョウが産卵に訪れたのです。

アゲハチョウはしばらく飛び回っていましたが、
ゆずの木の新芽を狙い、産卵をしていました。

子供にとっては何よりの勉強だったと思います。

産卵したばかりの卵がついた葉の一部を取らせてもらい、
今、箱の中で湿らせたティッシュと一緒に自宅のリビングに置いてあります。

明日、葉っぱと一緒に学校に卵を持っていき、
学校の授業の一環として観察を始めるようです。

もちろん、最後は蝶になるのを見届けて、
放すそうです。

産卵から何日で生まれるかなど、
子供と一緒に学んでみたいと思います。

・ 著書/連載情報━━━━━━━━━━━━━━━━

月刊「機械設計」(日刊工業新聞社)「これからの設計に必須のFRP活用の基礎知識」連載中
http://pub.nikkan.co.jp/magazine_series/detail/0001

『CFRP製品設計の前提知識 ?CFRP業界の特殊性を踏まえた重要ポイント?』
http://www.johokiko.co.jp/ebook/BC170601.php

『CFRP ?製品応用・実用化に向けた技術と実際?』(共著)
http://www.johokiko.co.jp/publishing/BC160301.php

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