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EN45545-2 で高い難燃性を示した PFA Composite

2019-04-01

弊社のメールマガジンである、
FRPのプロが注目する「業界最新ニュース」の中で、

バイオ系材料である PFA をマトリックスとした内装構造部材 Vol.116
というものについてご紹介しました。

 

今日のコラムではここ最近注目されている PFA をベースとしたFRPについて見ていきたいと思います。

 

EN45545-2 とは何か

まず最初に EN45545-2 という規格について見ていきたいと思います。

European CommissionのHPを見てみると、以下のように書かれています。

EN 45545-2 :2013+A1:2015

Railway applications
– Fire protection on railway vehicles
– Part 2: Requirements for fire behaviour of materials and components

※参照元URL:
https://ec.europa.eu/growth/single-market/european-standards/harmonised-standards/interoperability-rail-system_en

つまり鉄道輸送製品に用いられる材料や製品に関する、燃焼性評価試験規格ということになります。

日本でも例えば一般財団法人 電線総合技術センター等で評価を行うことも可能なようです。
以下のページの下の方にEN45545-2に関することが書かれています。

http://www.jectec.or.jp/trains/

とはいえ、概要を理解するには少し情報不足ですね。

概要を説明すると以下のようなものになります。

1. 製品のカテゴリーを選定

R1からR26に及ぶ製品のカテゴリーがあります。
どのような用途に用いられるのか、によって要件が変わるということです。

例としては以下のようなものがあります。

R1 : 天井や壁、窓枠、画面枠等の、水平または垂直の形状を有する表層材料

R22/23 : 座椅子、誘電コイル(恐らく、ここでいうコイルはヒーターも含まれる)

R24/25 : プリント基板

R26 : 小型電気製品

 

2. ハザードレベル

各要件に対し、十分に高い性能を見せたものを HL3 とし、
性能が下がるごとに HL2 、HL1 と数字が小さくなります。

このHLの数値定義は当然ながらどのような製品仕様なのかによって変化するようです。

想定されるトンネルの長さ、
各種駆動部分が自動か手動か、
二階建てか、寝台車か等がこれらを決める一要因のようです。

 

3. 主な評価内容

酸素指数、排ガス濃度/毒性などを含めた、
燃えやすさがその評価主体です。

合わせてこの評価で重要なのは、
構成する材料に対する評価があるのはもちろん、
電気系統などのシステムに関する評価があることです。

火災によって簡単に制御を失うような製品では、
認証は取れないということだと思います。

 

4. 規格の活用法

最も大切なのはここだと思います。

どのようにして規格を活用するのかというところが欠けてしまうと、
そもそも何のための規格か、という話になってしまいますね。

鉄道はある意味密室ですから、
内部で火災が起こったことで簡単に燃え広がっては大変です。

そこで今回のような燃焼性評価試験規格を取得している材料や製品を選択することで、
システム全体として燃えにくいという製品を構築することが可能となります。

材料をはじめとした要素製品がある程度の難燃性を有している、
という前提でシステムを構築できれば、
最終製品の燃焼性評価試験で不合格になるリスクが低減できる
ということになります。

低減できるというだけで、ゼロにはならないことも重要ですね。

要素の一つ一つが問題なくとも、
それをくみ上げてコンポーネントやモジュールとなった時、
想定しない挙動をすることがあるというのは様々な事例が示してくれていることです。

最近ありえない高頻度で墜落した最新型航空機がその一例です。
制御システムが原因と推測されていますが、
いずれにしてもその制御システム単体としては問題なくとも、
それを機体制御に適用したときに不具合が生じだものと考えます。

俯瞰して全体を見るというシステムエンジニアの存在が世界中で重宝されるのは、このような時代背景もあると思います。

尚、上記の EN 45545-2 に関する概要説明は以下のサイトを参照しています。
ご興味ある方はそちらも合わせてご覧ください。

https://www.antala.uk/fire-testing-of-materials-and-components-for-trains-en45545-2/

 

 

PFA の重合反応

PFAは polyfurfuryl alcohol (ポリフルフリルアルコール)の略です。

冒頭紹介した弊社のメールマガジンでも書きましたが、
コーヒーの苦み成分としても知られている身近なものです。

手持ちのフリーソフトで構造式書いてみました。


(The chemical structure is drawn by FRP Consultant)

重合形態ですが、酸触媒による脱水反応が基本です。

スキームについては以下の論文の (2) がその代表例です。

Poly(furfuryl alcohol) nanospheres: a facile synthesis approach based
on confinement effect of polymer and a template for synthesis of metal
oxide hollow nanospheres
Bull. Mater. Sci., Vol. 38, No. 7, December 2015, pp. 1859–1865
https://www.ias.ac.in/article/fulltext/boms/038/07/1859-1865

ただこのままだと直鎖の重合でその特性は熱可塑ライクになります。

もしかすると後述する Composite Evolution のプリプレグは、
機械特性の向上を目的に、何か他の化合物を添加し、
三次元架橋させているかもしれません。

一例として以下の論文ではCNTを添加することにより、
CNT上のカルボキシル基が架橋点となってPFAが三次元架橋しているメカニズムが提案されています。

Analysis of chemical polymerization between functionalized MWCNT and poly(furfuryl alcohol) composite
Polímeros vol.28 no.1 São Carlos Jan./Mar. 2018 Epub Mar 15, 2018

 

いずれにしても脱水反応による重合反応、
いわゆる重縮合反応によって高分子化が進むことで、
FRPのマトリックスとなる樹脂へと変化することがわかります。

 

 

PFAをFRPのマトリックスとする動機

ここは大きく分けて2点あります。

まずは機能性に近い意味で「難燃性」です。
これは冒頭の規格の所でも記述した部分になります。

Composite Evolution の Evopreg PFC 502 を一例に、
難燃性の評価結果を見ていきたいと思います。

技術的なデータ概要については以下の所で見ることができます。

Technical Guide – EN 45545-2 Test Results
Evopreg PFC502
Fire-retardant prepregs with low environmental impact

 

まずはカテゴリーです。

上記の製品は R1およびR6 と書かれています。

R1については上述の通り天井や枠組みです。

R6のカテゴリーは

Passenger seat shell – Base
Passenger seat shell – Back
(Covering)

ということで、シートの最外層であることがわかります。

※参照URL:http://en.fireresearch.cn/test-research/en45545-2-r6/

Evopreg PFC502 with Glass FibreというGFRPの場合、
酸素指数、燃焼速度、排ガス等、表示されているすべてのカテゴリーについて、
最高レベルである HL3 を示していることがわかります。

Evopreg PFC502 with Carbon Fibreについても同様にみてみると、
表示されているすべての評価項目でやはり HL3 を示しています。

ただ具体的な数値で見てみると、
酸素指数はCFRP(炭素繊維強化)と比べてGFRP(ガラス繊維強化)の方が10%程度低く、
MARHE( Maximum average rate of heat emission )は逆に10%程度CFRPの方が高いという結果になっています。

これはガラス繊維強化のFRPの方が燃えにくく、燃え広がりにくいということを意味しており、
内装材がCFRPよりもGFRPの方が多い背景にもなっています。

試験規格の結果だけを見るとどちらも HL3 ですが、
GFRPの方が優れているということは理解する必要がありそうです。

もう一つの特徴は、

「材料が天然素材由来である」

ということでしょう。

Evopreg PFC 502 も農業廃棄物からPFAの原料を作れる、
と書かれています。

マテリアルライフサイクルの提案としては極めて重要な点であり、
FRP産業のさらなる発展において不可避のコンセプトといえます。

イメージ的に

「環境にも人にもやさしい」

という訴求ポイントがでてくることは今回のPFAの大きな特徴といえるでしょう。
イメージ戦略は事業において柱になりうるということを再認識していただければと思います。

 

PFAをマトリックスとしたFRP例とその特性

次に機械特性を中心とした材料特性を見てみます。

以下のURLをご覧ください。

https://compositesevolution.com/wp-content/uploads/2018/10/Evopreg-PFC-Series-A4-Datasheet.pdf

基本仕様は以下のように書かれています。
(材料物性の書かれている E-Glass 300 g/m2 8H Satin 7781 について記載)

Reinforcement : E-Glass 300 g/m2 8H Satin 7781

Resin Content (by weight) : 40%
Tack Level : Medium
Width : 1270 mm
Ply Thickness (cured) : 0.25 mm
Density (cured) : 1.78 g/cm3
Max. Service Temperature (cured) : 200°C

まずは名称の意味から仕様を解読していきましょう。

E-Glass 300 g/m2 8H Satin 7781

と書いてあることから、強化繊維はEガラスの繊維、
目付が300g/m2であることがわかります。

物性値のイメージを作る意味で、Vfを計算してみましょう。

およその数値を見るため、ガラス繊維の比重を2.5として計算しました。
重量ベースであるRC(Resin content)が40、FRPの比重は1.78 g/cm3とのことですので、
Vfは 60 X 1.78 / 2.5 = 42.72 [%]
ということになります。

結論から先に言うとGFRPとしてはかなり繊維リッチなイメージです。
機械特性の強化を狙ったことがうかがえます。
ただGFRPを構造部材に使うという前提の場合だと、一般的な仕様設定といえます。

引張特性としては、
T11(0°引張強度)が 350 MPa、E11(同引張弾性率)が 23 GPa と書かれています(すべて室温環境)。

Eガラスの一般的な引張強度(ロービング:連続一方向繊維の場合)は3.5 GPa程度、
弾性率が 73 GPa 程度ですのでそれぞれ10分の1、3分の1程度に低下しています。

PFAの材料特性について信頼できるデータが無いので何とも言えませんが、
仮に一般的なエポキシと同等の引張弾性率(2-3 GPa)程度だとすると、
「複合側」から逆算するとVfは70%近くになります。

「複合側」というのは繊維と樹脂を組み合わせたFRPのような複合材料において、
その引張特性は体積分率で予想できる、というものです。

イメージは以下の式を見ていただくとわかると思います。

Eは引張弾性率、compositeはFRPの特性、fiberは繊維の特性、resinは樹脂の特性を意味しており、
Vfは単位体積繊維含有率の%を数値に直したもの(例:Vf = 50 は 0.5)です。

つまり、上記の結果は材料がUD(一方向材)として計算すると、
Vfが計算した42.72 %と比較し倍近くに高いことから、
上記で紹介した E-Glass 300 g/m2 8H Satin 7781 は、
平織(もしくは相当の織物)の基材形態であるということがわかります(例えば平織だと0°と90°と配向している繊維が半々であるため、0°方向に引張った際にその方向を強化できる繊維が半分となり、結果として引張特性は半分程度に低下することが知られている)。

このような簡易計算による材料仕様の推定はFRP設計者としては有効なスキルですね。

max service temperature 200℃は正直かなり驚きです。
service temperature なので常用環境を想定した数値です。

200℃環境下で安定して使える高分子材料というのは、
世の中見渡しても数えるくらいしかありません(短時間耐えるものは結構ある)。

ここは非常に興味深いところですね。
もちろん、ガラスと組み合わせることで断熱性能を向上させている、
というFRPとしての機能性も上記の耐熱性向上に一役買っているとみて間違いないでしょう。

尚、上記で紹介したVfやRC、目付といった特性の考え方については、
以前以下のコラムでも書いたことがありますので、そちらも合わせてご覧ください。

はじめてのFRP 材料仕様を示す 目付 、 Vf そして RC

 

上記材料特性を取得した際の成形工程についても書かれています。

6気圧のプレス成形、140℃で45分で成形するようです。
成形圧力は正直若干低めであり、
成形時間は昨今の高速成形と比べるとゆっくりですが(板厚にもよる)、
一昔前のCFRPと比べると大分早くなりました。

もう少し下を見ると今度はFAR 25.853の難燃性評価結果が示されています。
FARということは航空機用途ですね。

細かい数値については上記のデータシートをご覧いただければと思いますが、
FARの要求事項に対して十分なマージンをもって合格していることがわかります。

材料寿命についても書かれており、
-18℃で6カ月、室温(20℃)で3週間ですので、
一般的な熱硬化よりも低温保管寿命は短く、
室温保管期間は若干長い、という印象です。

以上を総括すると、
抜群の難燃性とマトリックス樹脂としては優れた耐熱性を示す一方、
それ以外の機械、物理特性は一般的ということになりそうです。

 

 

いかがでしたでしょうか。

今日はPFAをマトリックスとしたFRPを中心に、
難燃性試験やその特性について述べてきました。

特徴の所でも述べたように、
マテリアルライフサイクルを見据えたコンセプト材料が、
FRP業界に「難燃性という付加価値的機能性」を持ち合わせたうえで登場した、
ということが非常に喜ばしいことです。

今後もこの手の新しい材料の登場からは目が離せないですね。

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