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Sabic がGF強化の熱可塑性樹脂高強度板をリリース Vol.101

2018-08-13

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   FRPのプロが注目する「業界最新ニュース」Vol.101 2018/8/13

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<目次> ━━━━━━━━━━━━━━━━

・「FRP業界最新ニュース」

・お知らせ

・編集後記

<今週の「FRP業界最新ニュース」> ━━━━━━━━━━━━━━━━

今日の「FRP業界最新ニュース」では、

「 Sabic がGF強化の熱可塑性樹脂高強度板をリリース 」

ということについて述べてみたいと思います。

JECや Composite World でもリリース記事が述べられていましたが、
Sabic が STADECK(TM) という高強度板の製品をリリースました。

強化繊維とマトリックス樹脂の種類については、
ガラス繊維と熱可塑性樹脂を組み合わせているという以外は不明ですが、
後述する物性を見る限り高耐熱の樹脂を使っているようだ、
ということはわかります。

リリース記事は以下の所で見ることができます。

https://www.sabic.com/en/news/14418-sabic-launches-stadeck-heavy-duty-panels

想定される使い方は

「建築現場の足場」

というのがメインのようです。

それ以外にもイベント会場などの暫定建造物、
外装、塀、スロープ等にも適していると述べています。

詳細は以下のページを見ると種々述べられています。

http://bit.ly/2MmmsUd

この製品の特長は耐候性と耐腐食性による長寿命、そして軽量。

現場の作業性もよく、長く使えるため、
製品ライフサイクルの観点で見れば安くなるということが言いたいのだと思います。

製品には着色も可能であり木調から石のような風合いまで可能であり、
標準形状で厚みは55mm、幅が230mm、長さは3000から6000mmとのこと。

中東ではまだ一般的な木材の足場と比較し、
60%の軽量化32%のコストダウンが可能だと述べられています。

技術データを少し見ていきたいと思います。

データシートは以下のページで見ることができます。

http://bit.ly/2vzab5l

足場を想定した物性値が色々と書かれています。
目付(といっていいのかわかりませんが)8.5 kg/m2。

耐荷重としては 6kN/m2 と書かれていますので、
単純計算で1平方メートルに均一分散荷重状態で600kg以上耐えられるということになります。

ただデータにも書かれているようにあくまで1時間という短時間です。
足場を想定すれば妥当な考え方です。

Safety Margin という、恐らくここまでは何とか耐えられるであろうという荷重であれば、
30kN/m2 と書かれています。実に3トンを超えていますね。

その一方、垂直方向の荷重(板の長手方向に対する圧縮)には弱いようです。
あくまで長いはりとして用いた時にいかに耐えられるか、
ということを主軸に設計されているのが良くわかります。

衝撃荷重については Charpy を見てみたいと思います。
値は23℃、ノッチありで75kJ/m2です。
比較のために単位を直すと 7.5J/cm2です。

参考までに熱硬化のGFRPですと、
Vfが64.6%のUDで52.1J/cm2、
織物でVfが58.9-69.7%で5.5-5.6J/cm2です。

UDとはさすがに勝負になりませんが、
一般的な織物よりは30-40%程度耐衝撃性が高い、
というように見ることも可能です。

尚、この熱硬化のGFRPの値は以下の文献を参考にしてみました。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsms1963/43/487/43_487_482/_pdf

熱的特性としては41-51μm/mKとのことで概ね一般的なGFRPの層間方向に相当する値であるとわかります。
金属と比較し、熱変形が大きいことに注意が必要かもしれません。

線膨張については以下のコラムでも過去に述べているので、参考にご覧いただければと思います。

※線膨張係数に関する過去のコラム

Invar とFRPを組み合わせた試作型
http://bit.ly/2vKVCfd

そして注目すべきは荷重たわみ温度(HDT)。
156℃ですね。

このクラスになるとマトリックス樹脂はエンジニアリングプラスチックか、
スーパーエンジニアリングプラスチックなどある程度限られてきます。

想定される樹脂の一つが POM (ポリアセタール)です。
GF添加でHDTは150℃を超えることも可能のようです。

PC(ポリカーボネート)もGFを30%添加すると荷重たわみ温度は150℃弱まで上がってきます。

PETやPBTになるとガラス強化をすることで荷重たわみ温度が200℃を超えるようです。

炎天下での利用を考えるとある程度の耐熱性を有するのは当然といえます。

その他電気特性や製品の断面形状などもデータシートに掲載されていますので、
種々ご覧いただければと思います。

今日はガラス繊維強化の熱可塑性樹脂高強度板についてご紹介しました。

最近、GFRP(GFRTP)の活躍が目覚ましいと感じています。

CFしか使えないというハイエンドのアプリケーションも実際にあるのですが、
多くはそこまでのパフォーマンスはいらないが、
他の材料で代替し、それに伴う機能性を付与して付加価値を高めたい、
という設計戦略を検討する企業が増えているのは実感としてあります。

FRPといえばCF、GFといえば不飽和ポリエステルなどでハンドレイ、
という従来の固定概念を超えたアプリケーションやその検討が進むことは業界として望ましい状況でしょう。

ただし注意が必要なのは海外の情報をうのみにしないことです。

海外はあくまで海外。

欧州、北米はとりあえず様々なコンセプト提案をする文化があります。

その中には優れたものから大いに疑問を呈するものまで色々です。

日本は日本の強みがあり、
それが海外からも求められることもあります。

主役、主軸は自分たちであるという軸足をぶらさず、
着実に進むことこそが、過渡期を迎えつつあるFRP業界での成功の秘訣といえるのかもししれません。

<お知らせ> ━━━━━━━━━━━━━━━━

今後の登壇予定のセミナーを以下の通りご紹介させていただきます。
合わせて参加をご検討ください。

– 2018年 8月 27日(月)
10:30?16:30(昼食付)

会場:きゅりあん 4F 研修室(東京・品川区大井町)
*聴講者数が増えたため、会場変更の可能性があります。

CFRP製品の量産工程構築に必要な工程規格(Process spec)と関連文書作成法

https://www.science-t.com/st/cont/id/28628

– 2018年 9月 13日(木)
10:30?16:30(昼食付)

会場:PAT-T606会議室6階606(東京都・千代田区秋葉原)

CFRP/GFRP関連事業の事業戦略と推進方法
<経営者および決裁権を持つマネージャー・事業設計担当者向け>

http://www.johokiko.co.jp/seminar_chemical/AC180903.php

– 2018年 10月 4日(木)
10:30?16:30

会場:日刊工業新聞社 東京本社 セミナールーム(東京・日本橋)

FRP製品開発フローと技術的なポイント

https://corp.nikkan.co.jp/seminars/view/1927

– 2018年 11月 27日(木)

※現在、講演企画内容精査中です。決まり次第、お知らせいたします。

<編集後記> ━━━━━━━━━━━━━━━━

10年以上通っている音楽学校(私のパートはドラム)で、

「都合がよければ発表会に出ないか」

と突然誘われました。

仕事とトレーニング(ウェイトトレーニング+水泳)に注力していたこともあり、
久々に音楽にウェイトを置いてみるのも悪くないと思い、
4年ぶり4回目の出場を決めました(甲子園出場みたいですね)。

自分でバンマスをやっていたころは毎年出ていました。

曲名は「 Recorda me 」という1963年に Joe Henderson がリリースした曲です。
JAZZですがリズムは「ラテン」といわれました。
(個人的にはハイテンポのボサノヴァに近いようにも感じています)

演奏の雰囲気は以下の Chick Corea Trio の演奏のイメージで演奏出来たらいいな、
と思っています。

構成はピアノ(他の生徒さん)、ウッドベース(学校職員:プロ)、私(ドラム)のトリオです。

本番までレッスンは1回しかなく(もう終わってしまいました)、
リハーサルも1日(恐らく1時間程度)しかチャンスがありませんが、
JAZZは元々即興で楽しむものなのでいつもこのような感じです。

仕事もトレーニングもとても大切ですが、
発表会のある9月9日までは音楽のウェイトを久々に高めたいと思います。

・ 著書情報━━━━━━━━━━━━━━━━

『CFRP製品設計の前提知識 ?CFRP業界の特殊性を踏まえた重要ポイント?』
 http://www.johokiko.co.jp/ebook/BC170601.php

『CFRP ?製品応用・実用化に向けた技術と実際?』(共著)
 http://www.johokiko.co.jp/publishing/BC160301.php

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