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ワイヤを組み込んだFRP材料の磁界応答を応用した応力状態評価 Vol.096

2018-06-05

先月末のJECの International news の中で、

「 A non-contact method to measure internal stresses in composites 」

という題目の記事が出ていました。

NUST MISIS Center of Composite Materials というロシアの研究機関が情報元です。

NUST MISISという1918年に設立された Moscow Mining Academy に源流をもつようです。

この辺りの概要は以下のURLに書かれています。

http://en.misis.ru/university/

ここでの発表内容の概要を見ていきます。

NUST MISISの今回の発表の動機は、

「材料成形体に付与される応力を非接触で検知する」

というのが出発点です。

ワイヤーをドライの基材に埋め込むことで、
応力に応じた反応をする網の目構造を材料の中に構築するとのことです。

10から60ミクロンという小型の非晶性のソフト磁性回路を用い、
応力がかかった状態になると外部磁場によるワイヤを介した応答が変化するという性質を応用するようです。

上記の評価は非接触で行えること、
また検査スピードが速いというメリットもあると述べられています。

課題としてはどのようにしてワイヤを内部に組み込むのか、
そしてそのワイヤが材料の物性に影響を与えないようにするのか、
といった観点であると述べられています。

 

まだまだ研究段階ではありますが、
興味深い話ですね。

 

光ファイバやひずみワイヤを基材に組み込んで、
材料を知能化しようという話は比較的歴史は古く、
私の知る限り20年近く前から見聞きしたことはあります。

この手の技術は非常に興味深い一方、
そのセンシングをになうものの多くが変形や熱に弱いという限界から、
成形してしまうとセンシング機能が失われるという課題が大きいと考えられます。

当然ながら上述同様、センサーを入れることによる材料物性低下も懸念されます。

 

今回のNUST MISISのコンセプトで面白いのは、
センサーであるワイヤは切れたとしても、
導電性を維持できていれば基本的には問題ないというところだと思います。

あくまで外部磁場に対する応答を見るので、
ワイヤが切れようが変形しようが、
逆にそれをひずみや応力に換算できるのであれば、

「材料成形体に付与される応力を非接触で検知する」

という目的は達成できると考えます。

 

 

最近ロシア国の企業のFRP業界へのアピールが増えてきている気がします。

ビジネス的観点、そして政治的観点と色々あるとは思いますが、
一つの流れとしてアンテナを張っておく必要はありそうです。

 

川上に位置する素材メーカー、基材加工メーカー、プリプレガーといった、
材料を直接扱う企業にとっての高付加価値へのアプローチの一つとして、
是非取り組みたい「機能化」。

材料製品単価を上げるためのビジネス戦略の定石とも言えます。

今回のようなセンシング技術も機能化に向けた動きです。

そして機能化に向けた取り組みには他業界との協業も必須でしょう。

従来の業界の枠組みを取り外し、どれだけ柔軟かつ広く行動できるのか。

そのような事業姿勢が今まで以上に求められているのではないでしょうか。

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