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CFRPを用いた 建築物 の地震倒壊回避

2016-12-05

先々週にも福島県沖でマグニチュード7を超える地震が発生している地震大国日本。

緊急地震速報や津波警報の発令など、今回の地震でもその迅速な情報発信に日本の地震に対する警戒の強さを感じました。


そして日本の地震に対応するための建築技術は世界屈指といわれており、その高い技術は地震の起こる海外を中心に注目を集めています。


そんな中、同じく地震の起こる地域の一つであるトルコがCFRPを用いた 建築物 の地震倒壊回避技術についてプレスリリースを行いました。

記事がわかりやすく書かれているのは以下のJECの International news のところです。

http://www.jeccomposites.com/knowledge/international-composites-news/carbon-fiber-based-material-could-prevent-collapse-buildings

リリースを行ったのは DowAksa(http://www.dowaksa.com/)です。


トルコにある Istanbul Technical University はDowAksaのCFRPを用いた 1/1 スケールの耐震試験を行っています。

cfrp_building_structure_reinforcement

(The image above is referred from http://www.jeccomposites.com/knowledge/international-composites-news/carbon-fiber-based-material-could-prevent-collapse-buildings)

トルコは1999年に1万8千人以上もの尊い命を奪われた地震を経験しており、その対策が急務とのこと。
この地震はイズミット地震と呼ばれ甚大な損害をもたらした地震として知られています。
 

死者と行方不明者を合わせると4万5千人ともいわれ、未曽有の大災害であったことがわかります。

震源近くの製油所が炎上したことも被害の拡大につながっています。
当然ながら日本も救援、救出作業に従事したとのこと。


日本の土木学会の専門家もイズミット地震の現地調査を以下で報告しており、
兵庫県南部地震よりも大きな揺れであったことなどが述べられています。

http://www.jsce.or.jp/library/eq10/proc/00034/84-12-0087.pdf

話をCFRP補強建築物の評価に戻します。

The Dow Chemical Company と Aksa Akrilik Kimya Sanayii, A.S.は50/50の Joint venture を立ち上げ、2つのビルを建築しました。


2つの建物は基本的に用いている材料は同じ、形状やサイズも同じにし、基本的な設計コンセプトは2007年に新たに制定された耐震性の要求も含むトルコの基準の前のものを適用したとのことです。
(あえて壊れやすい建物を作るためです)

そして建物のうち一棟はそのまま、もう一棟はCFRPで補強をしています。


その後、地震相当(どの程度のエネルギーかなどの詳細は不明)の加振をしたところ、CFRPの補強をしていない建物だけが倒壊しました。


この結果を踏まえ、CFRPは建築の耐震補強に効果があると述べられています。


本記事から考えるべきことは何でしょうか。

 

炭素繊維を用いた事業性

第一として考えなくてはいけないのは炭素繊維を用いた建物補強に事業性があるのか、というビジネス的な観点です。

よくこういうと素材が高すぎる、という点だけを述べる方がいらっしゃいます。

もちろん現段階では炭素繊維は高価ではありますが、そもそも論として、


「世界中のキャパシティーを合わせても一般汎用素材として必要な生産量には桁が2つくらい小さい」


という事実があります。


つまり、コンセプトをきちんと明確化し、仮に使えるとなってもその使用量に見合う生産設備がまだそろっていないのです。

将来的に生産量が上がってくるとは思いますが、あくまで現段階では供給量が一般的な素材に比べて圧倒的に少ないということを理解しておく必要があります。


建築物の補強などは安全にかかわる部分のため、突然、そして大量に必要になる可能性があります。

その時に現段階では炭素繊維の生産はその対応をできない可能性があるのです。


現段階における世界生産量をまず把握した上で炭素繊維がそもそも適しているのか否かについては熟考が必要かもしれません。


尚、炭素繊維以外(CFRP以外)では以下の記事でご紹介したSRF工法などがあります。

地震を超えるといわれる SRF工法


こちらは素材にポリエステルを使っている時点で素材供給に対する靭性が極めて高いといえます。


さらに建物の破壊変形をせん断で受けるなど、巻き方にも工夫がされています。

 

部分補強の概念

上記で紹介した写真では、建物柱や梁全体にCFRPを巻き付けているようなイメージになっています。

もちろん今回の評価はCFRPによる補強の妥当性をみることにある、ということは理解できますが、やみくもに巻き付けている感じが否めません。

もしかすると実際は応力が集中するところ、補強が必要なところにCFRPを用いているのかもしれませんが、全体をぐるぐる巻きにするというやり方はやや稚拙な考えではないかと思います。


建築物に限らず、航空機、自動車、風車といったアプリケーションでも同様ですが、それぞれ「形状」をもっています。


この形状が機械特性や物理特性に与える影響は極めて大きく、一般的にはこれらを合わせて評価しなくてはいけません。

この時に、応力集中が起こりやすいところなどをあらかじめ把握し、その形状を見直すのはもちろん、地震の場合は形状や剛性を変化させることで固有値(共振点)を移すといった設計を行います。


その上で、剛性や強度の向上が必要なところにCFRPなどの補強材を使う、というのがしかるべき設計のステップです。


このようなことを考えるととりあえず全面に巻き付けましょう、というのが違和感のあるアプローチであるということを理解いただけるかもしれません。

近年建築物へのCFRPやGFRPの適用は徐々に進みつつあります。

業界でも最終アプリケーションとして建築物の話が聞かれることが多くなりました。

実際に必要性も高まっているようです。


その一方で技術と事業性の両方を見ながら前に進むということがなかなか難しいらしく、技術を置き去りにして事業性だけをみる、事業性を無視して技術だけに走るといったアンバランスなアプローチが後を絶ちません。


ここは技術と事業性の両方をみるという俯瞰的視点をもちながら着実に前進するということを再度認識いただければと思います。
 

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