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熊本県 での地震にFRPで何が貢献できるか

2016-04-22

熊本県 での地震により亡くなられた方々に謹んでお悔やみを申し上げます。
また被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。


初めて 熊本県 で大きな地震が起こった当初は顧問先企業様の依頼で海外にいましたが、その現地のニュースでも大きく取り上げられていました。

今週帰国し、新聞やテレビを見ることによって日に日に明らかになる被害状況に言葉も出ませんでした。

これらを見た時にFRPとしても何か貢献できないか。


そう考え今日この記事を書いています。

 

今回の地震の最大の特徴は、


「大きな地震が長期間続いている」


という点です。

私がキャリアを積んだ航空機業界では、


「LCF( Low cycle fatigue )と HCF ( High cycle fatigue )」


という二つの考えをある程度きり分けて設計を行いました。


つまり常用で力のかかり続けるHCFとあるイベントごとにかかるLCFです。


家の中にいる人が動く(歩く、走る)、外を走る車で揺れる、震度2、3程度の体で感じる地震、朝と昼間の温度差による線膨張ひずみ。


これらは定常負荷なのでHCFと同じ考えをします。基本的には無限寿命に近い設計をするのかもしれません。


その一方で、


震度4や5といった地震、数年に1度あるかもしれない巨大台風、季節ごとの温度差による線膨張ひずみなどは、耐用年数に応じたサイクル数を設定するのではないでしょうか。こちらは非定常、またはサイクル時間がとても長いのでLCFの考えだと思います。

 

そしてさらなる異常事態が、


自動車が突っ込んでくる、巨大台風、津波、震度6、7といった巨大地震などです。

これはLCFでもHCFでもなく、構造物の耐用年数期間のうち1、2回耐えられればいいという考えで設計するのが一般的で、そのイベントが万が一起こってしまった場合は交換する、建て直すというのが設計思想です。


LCFやHCFは疲労試験によって評価を行い、異常事態の評価には耐衝撃性評価のような静的試験によって評価を行います。

私は建築の専門家ではないので詳細はわかりませんが、概ね上記のような考え方で設計と評価をされているのではないかと推測しています。


そして熊本県の地震を振り返ってみるとこれらの設計思想を超越した出来事であるということがよくわかります。

本来、耐用年数期間の間に1、2回耐えられればいいという地震の揺れが何回も起きているのです。


昨日の新聞では熊本県内の最大震度について震度6弱、6強、7の揺れが計6回も起きたと述べられていました。

参照URL:http://weathernews.jp/s/quake/?fm=sw

 

つまりこれだけ強い揺れがこれだけ長い時間続くというのは

「設計思想の想定外となっている可能性が高い」

のが実情で、建物が次々に倒壊するということにつながっているのではないかと考えます。

 

人間の想定すること、知見は自然の力の前では無力であると痛感する状態です。

私も研究者、技術者の一人として自らの無力さを痛感すると同時に、多くの方が亡くなられ今も不自由な生活を強いられてしまっていることは猛省すべき点であると考えます。

 


今回の事態を踏まえ、FRPを何か活用できないかと考えました。

 

考えてみたのが、


「FRPによる一部損傷住宅の応急処置」


です。


崩れかけてしまった住宅が多くあるとききます。

入れないくらい崩れてしまった住宅ではなく、外観上は大きな問題は無いものの、部分的に損傷が激しく中には入れないというものもあるとききます。


自宅以外の周りの環境の安全性が確保されているのであれば、避難所ではなく自宅で過ごしたいというのが住民の方の本音ではないかと思います。

少なくとも私がその立場であればそう考えます。


その時に応用できるのかもしれないのが現場で硬化するFRPによる住宅補強です。


あくまで応急処置ではありますが継続する揺れに対しても住宅倒壊のリスクを低減し、住民のプライバシー保護と避難所のキャパシティーや環境改善にも効果があると期待できます。


転用できると期待できるのが以下にあるようなトンネル補強工事で使うようなFRP補修技術です。

トンネル の天井崩落対策へのFRP活用

 

当然ながらこれは恒久的に使えるものではなく、自宅を緊急用シェルターにするイメージです。

補修はマンションのような大型建造物よりも一軒家の方が応用しやすいと考えます。


日本の土木建築技術は極めてレベルが高いため釈迦に説法であると考えますが、同じ考え方をインフラに応用することも可能です。

 

今は目の前のことで精一杯かと思いますが、将来的な観点で行くとFRPを住宅に応用していくという考え方も必要になってくるかもしれません。

欧州では住宅にFRPを使うことで断熱性を高め、熱効率を上げるという考え方をEUとして行っていますが日本ではマトリックス樹脂の難燃性に問題があるとの認識で基本的には住宅への応用を認めていないようです。


欧州での取り組み( Prospect for new guidance in the design of FRP )の一例は以下の通りです。

https://ec.europa.eu/jrc/en/publication/eur-scientific-and-technical-research-reports/prospect-new-guidance-design-frp?search

 

安全性あっての新規材料転用ですので本観点を軽視をするのはご法度ですが、以下の記事でもご紹介したように熱可塑性樹脂をベースとした鉄道や航空機の内装材への転用も進みつつあります。

PPSU のFRPとの組み合わせ

 

鉄道や航空機の内装材の難燃性規定は非常に厳しく、恐らく住宅要件も満たすことができるレベルに到達している可能性があると考えます。

この難燃性がクリアできてFRPが住宅に応用できるという状況が揃ったという前提であれば下記のような設計思想の構築が急務かもしれません。

 

それは、


「複数回の異常事態が起こったとしても住民の避難空間を保持できる住宅」


です。

 

FRPというのは軽いということに加え、設計のやり方によっては


「剛性を高める」


ということができます。

部屋の空間のうち避難空間となりうる1階のリビング(のような部屋)、最低限のインフラ確保をする台所、トイレ、お風呂という前提の部屋とその部屋に隣接する構造物を従来の木材や軽量鉄骨に加えてFRPによって補強し、万が一屋根が崩れてきたとしてもその空間だけは保持するというコンセプトです。


すべてをFRPで作るとコスト的にも設計的にもハードルが高くなりますが、優先順位をつけて


「自宅が仮に半壊したとしても、避難シェルターとしての最低限の機能を保持する」


という割り切るを行うことで今回の熊本地震のように継続して大きな揺れが続く状況であっても


「住民の最低限の生活を守り切る」


という設計思想に対し、FRPによる部分補強を応用するのです。

 

 

まだまだ厳しい状況が続いております。そしてこの苦境は他人事ではなく、いつどこで起こるかわかりません。


私も顧問先企業、パートナー企業と連携しながら何か貢献できないか改めて自問したいと思います。


 

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