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PPSU のFRPとの組み合わせ

2016-03-14

Solvay の Polyphenylsulfone ( PPSU )を用いたフォーム材料が Airbus A350 XWB の内装材料に用いられることが決定したようです。

http://www.prw.com/article/20160308/PRW/160309870/airbus-agrees-take-off-for-solvay-ppsu-foam


ここ最近熱可塑性樹脂の世界で名前を見るようになった PPSU ですがどのようなものなのでしょうか。

PPSU の構造式を以下に示します。

無題
( The image above is referred from http://www.anc-chem.com/products-detail.php?product_id=10

スルフォン基に加え、ベンゼン環やエーテル基で構成されており、明らかに剛直な分子構造であるということがわかります。


外観は透明な樹脂で、着色なども容易とのこと。

スルフォン系の高分子では最高レベルの特性を持っているとされています。


加えて耐衝撃性や耐薬品性が polyetherimide ( PEI )よりも高い模様です。


参考までに PEI の構造式は以下のようなものです。
イミド基が特徴的な高耐熱熱可塑性樹脂です。

無題1
( The image above is referred from http://www.sigmaaldrich.com/catalog/product/aldrich/700193?lang=ja&region=JP


PPSUは高い耐熱性を有していることから熱水消毒にも耐えられる熱可塑性樹脂として、
従来は医療材料として使用されてきたようです。 


PPSUを理解するための主なキーワードとして以下のようなことが述べられています。
(一部、上述の繰り返しになっています)

 

High HDT of 207°C (405°F)

荷重たわみ温度が200℃以上(概ねガラス転移温度程度)ということです。

一例として BASF のPPSU( P3010 )のガラス転移温度は220℃です。熱可塑性樹脂としてはかなりの耐熱性を有していることがわかります。
 

Superior toughness and impact strength

こちらもBASFのものを参考に見てみましたが、引張弾性率はエポキシとほぼ同等の2.3GPa程度。
アイゾットは室温環境でエポキシの約10倍の50kJ/m2
尚、物理特性である線膨張はエポキシとほぼ同等の4から6 [10-5/K]です。

 

Exceptional long-term hydrolytic stability
Withstands over 1,000 cycles of steam sterilization without any significant loss of properties

構造式を見るとわかりやすいですが、アロマ基が多く含まれる熱可塑は耐水性が高いのが一般的です。

 

Better chemical resistance than PSU and PEI

PPSUと引き合いに出される Polysulfone ( PSU )は以下の構造式です。
わずかな構造式の違いで特性が変化するというのがわかると思います。このような事実があるため、FRP業界に携わる人間は、程度の差はあれ有機化学に対する知見が必須である、というのが私の考えです。

無題2

( The image above is referred from https://en.wikipedia.org/wiki/Polysulfone

 

Inherently flame retardant

これはエポキシと比較し大きくアドバンテージがある点です。
難燃性を付与したいというニーズが最近エポキシにも高まりつつありますが、
化学構造式が燃焼性を支配している以上、本点においてはPPSUが圧倒的に有利といえます。

 

Transparent
Colorable

内装材として用いるためには、透明性と着色性は重要です。

 


さて、今回PPSUを本コラムでご紹介したのにはわけがあります。

Solvay は PPSU を Radel® として展開するこの手の樹脂の製造大手です。

http://www.solvay.com/en/markets-and-products/featured-products/radel.html

 


そして、Solvay はこちらの記事でもご紹介したように熱可塑性CFRP( CFRTP )のプリプレガーである Cytec を買収しています。
 

想像するに Solvay は Radel® とCFRPやGFRPを組み合わせてサンドイッチ構造部材として展開しているのではないかと考えます。


CFRTPの構造部材はどうしても高価。

そのため、フォーム材との組み合わせにより”かさ増し”をし、軽量化のメリットと強度保持のメリットを両立させようとしているのではないでしょうか。


実際冒頭で紹介したプレスリリースでも

「Cytec の製品とのコラボにより航空機業界に旋風を巻き起こす」

と意味深な発言を Solvay Chief Executive であるJean-Pierre Clamadieu氏はしています。

 


JECでも PPSU と Cytec のプリプレグの組み合わせが一部発表されていました。


恐らくこのような所に出ているのは本命のほんの一部にすぎません。


実際は Cytec の材料と PPSU の組み合わせ製品は2、3歩先まで進んでいるとみるのが妥当です。

 


巨大化学メーカーによる航空機業界の抱え込みが急激に始まっていることを強く感じます。

恐らく化学メーカーが後発でここに切り込んでいくのは極めて困難でしょう。

参入できたとしても価格をたたかれ、利幅を確保できない恐れがあるからです。

 


世界中の化学メーカーは材料のラインナップを持っているという利点を最大限に生かし、FRPとのシナジーを最大化しながら業界支配を急ピッチで進めています。


従来の化学原料を売っても商売にならないという危機感がこの動きを後押ししているようです。

これに対抗するための化学メーカー戦略の一つは少量多品種でカスタム対応を可能にすることに尽きるかもしれません。


日本の一部の巨大化学メーカーを除き、世界企業を相手に規模で勝負するのは得策ではありません。


巨大ゆえに対応しきれない少量部分というニッチを狙い、くさびを打ち込むことのほうが現実的です。

 


この際に重要なのはエンドユーザーニーズも踏まえた広く、そして高い視点。

いわゆる何度ものべている設計的視点であることに疑いの余地はありません。

 

インターネットや展示会で得られるような遅れた情報に惑わされることなく、どこに商機があるのか冷静な対応が求められているのではないでしょうか。

 

ご参考になれば幸いです。

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