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FRP戦略コラム FRP業界活性化の肝となる プリプレガー の戦略

2016-04-13

近年、老舗 プリプレガー の戦略に分岐点が見え始めているというのが印象です。

 

プリプレガー の最近の動向を把握することは FRP 業界の今後を理解するうえでヒントになると思いますので、今日はこの辺りを述べてみたいと思います。


ここ数年の プリプレガー の動きは比較的激しいと思います。

日本を代表し、炭素繊維メーカーとしては世界最大のシェアを誇る東レ。


まずは自動車や産業用途をターゲットに見据えた ラージトウ に対応するため ZolteK の買収(2013年)はあまりにも有名です。

最近は展示会に行くごとに Zoltek と Toray がお隣同士で展示しているのを見かけます。


このことを端的かつ的確に述べている記事の一つは以下のものです。

私も大部分について下記の記事と類似の考えを持っています。
http://toyokeizai.net/articles/-/21341


本記事の中でも述べられていますが、東レ以外の日本の炭素繊維メーカーは苦戦を強いられているという所を忘れてはいけません。

そして同じ年の年末近くに行ったのが Saati S.p.A の買収です。

http://cs2.toray.co.jp/news/toray/newsrrs01.nsf/0/CE2494730BC8C6DE49257DAA00195AD5

 

この買収の結果設立されたのが以下の CIT という企業です。

http://www.composite-materials.it/pagina.php?cod=50


きちんと東レグループである( Toray Group )と書かれています。


買収目的は「川中にあたる中間基材事業拠点を手に入れることで一貫した自社サプライチェーンを確立(上記東レHP参照)」と書かれています。

CITのHPを拝見しましたが、経営者として見る限り比較的見やすく良いページであるという印象です。


アプリケーションごとに大きく振り分けがされており、それぞれに対してどのようなものがあるのかといったラインナップも見やすいです。


もちろん不十分なところもあって、繊維も織り方もマトリックス樹脂もアプリケーションすべてで同じになっており、作り込まれたのかどうかについては疑問を持たざるおえません。

そして昨年9月に発表したのが Delta Tech S.p.A の株式55%取得というニュースです。

http://www.toray.co.jp/news/carbon/detail.html?key=38B699D049FDB00B49257ED0000631FE


こちらは顧客へのカスタマイズ対応という所が主目的のようです。


ヨーロッパにテコ入れしようという意図が感じられます。


東レと比べれば規模は小さいですが他の炭素繊維メーカーやプリプレガーの動きもややあわただしいです。


まずは昨年7月に報じられた Solvay の Cytec 買収。

http://www.solvay.com/en/media/press_releases/20150729-Acquisition.html

 

この発表を見た時点では私はかなりの意外性を感じたのですが、その後の動きを見てこれが欧州のトレンドであるということに後々気がつくことになります。

基本的には下記の通り航空機に主軸を置いているのが Cytec のぶれない姿勢でした。

https://www.frp-consultant.com/2015/10/05/cytec-ceo-interview/

 

ところが、 Composite UK でも盛り上がるイギリスに New Application center を設立したという話が出始めた頃から、風向きが変わってきたと感じました。

Cytec が New Application Center を設立

さらに親会社の Solvay が下記の通り LFT ( Long fiber thermoplastics )の Epic polymer を買収。

Solvay が EPIC Polymer の LFT 事業を買収


加えてこれまでのFRPといえば一次構造材という考えをやめ、Solvay の発泡 PPSU と組み合わせたハイブリット材料を A350XWB へ投入するという戦略を発表し、 JEC 2016 でもかなり大々的に発表を行っていました。

PPSU のFRPとの組み合わせ

また Hexcel も比較的買収劇で最近注目されていますが、かなり昔から買収を繰り広げている企業ともいえます。


一例では20年も前に HERCULES のFRP部門を買収したりしていました。

http://www.nytimes.com/1996/04/17/business/company-news-hexcel-bids-135-million-for-hercules-unit.html

 

そして最近(2014年)ですがこちらもイギリス Duxford にマトリックス樹脂と接着剤を主とした研究開発センターを設立しました。
この研究開発センターは化学メーカー買収が礎になっているときいたことがあります。

http://www.hexcel.com/news/market-news/news-20141113


個性あるマトリックス樹脂の開発でFRP業界をにぎわすHexcelらしい戦略です。


さらに、Hexcelは Non crimped fabrics ( NCF )の専業メーカーである Formax も買収。

http://www.hexcel.com/news/market-news/news-20160105

 

そして、BMW 7 series 向けに高速硬化樹脂とプリフォーム工場を設立し、自動車業界に名乗りを上げています。

BMW 7 series への 高速硬化CFRP の適用

それ以外では Formosa のような日本以外のアジア諸国の炭素繊維メーカーも台頭しており、こちらも恐らく今後は買収劇を繰り広げるものと推測します。

http://formosa.co.jp/products/carbonfiber.html


これらを見ると色々な見方ができますが、一つ間違いなく言えることは


「新しいアプリケーションや事業形態参入を、異業種企業のM&Aで急いでいる」


という流れです。

 

もちろん、FRP業界に限った話ではないのかもしれませんが、この業界で特に最近感じることです。


ここでもう一つ面白いのは、参入する方向性として大きく2つに分かれてきているということ。

 

1つが大量生産、低コストを目指すもの。

自動車向けに各社が行っているアプローチです。

 

その一方で地道に顧客を得つつあるのが、

カスタマー向けに材料をカスタマイズするというオーダーメイドのアプローチです。


前者はわかりやすいので割愛します。

 

ここで注目すべきは後者の方です。

今は明らかにこちらにビジネスが向き始めていることは要注意です。


東レでいえば Delta Tech S.p.A の株式取得がこれに該当します。


ここ最近特に感じることですが


「FRPの本当の設計者が徐々に出てきている」


ということです。

 

数は圧倒的に少ないですが、全体を見ることのできる本当の意味での設計者が少しずつ表舞台に登場してきています。

そして彼らがこれまでFRP業界が停滞してきた文化を断ち切り新しい風を呼び込もうとしています。

 

このような顧客に対応するためには材料のカスタマイズが欠かせません

 

なぜならば、最終アプリケーションに適合した材料が量産ラインナップにあるとは限らないからです。

そしてこのようなカスタマイズしたい顧客をターゲットにした企業が少しずつ増えてきています。


しかも私が複数社と話した感じではそれなりのレベルを有しています。

量産品しか売らない、プリフォームまでやらないと売らない、部品供給までやらないと売らない、といったこれまでプリプレガーでは一般的だった「3無い」姿勢とは全く異なるスタンスの企業が出てきているのです。


今、需要はそちらに向いています。


材料も設計すべきであるという、ごくごく当たり前のことがようやく認識され始めたのかもしれません。


M&Aを主体に変化する顧客要望に迅速に応えようと奮闘する老舗プリプレガーとその牙城を崩すべく活発な動きを続ける世界中の中小企業。

本当の下剋上が始まったという認識で間違いはなさそうです。

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