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FRP戦略コラム – 学術 論文 の重要性

2015-08-12

今日のFRP戦略コラムでは 論文 の重要性について書いてみたいと思います。

 

FRP業界に限らず、企業の技術者、研究者と話をしていると学術 論文 はあまり読まない、という傾向があるようです。

 

さらには学術論文を書いたことがある人、となるとほとんどいないようです。

 

 


学術論文は大学関係者が読むもの、そして書くものだという先入観があるように感じます。

 

そのため多くの企業は、このような学術的な部分に関しては大学の先生方に丸投げしてしまう、という傾向があるようです。


たとえ企業であっても自ら学術論文を読んで内容を理解し、また可能な範囲でその業界へ発信を続け、
学術業界でも自社のプレゼンスを高めていくという戦略が本業界での生き残りに必要です。

 


今日の戦略コラムでは「 学術論文の重要性 」という観点で話をしていたいと思います。

 

 

 


最近、何報の学術論文を読みましたでしょうか。

 

エンジニアリング(産業)にはすぐに役立つような内容はあまりなく、読んでも仕方ない。

 

そんな印象を抱いている企業の技術者や研究者は多いようです。

 

ところが実際に論文を読んでみるとわかりますが、アカデミックの色の極めて強い雑誌を除くと、最近は学術論文であっても”エンジニアリング的”な内容を掲載するものが増えてきています。


※ご参考
本HPのコラムでも「FRP学術業界動向」のカテゴリーの中で、
エンジニアリング的に応用できるような学術論文は不定期にご紹介しています。

 

特にFRP関係は理論的な部分があまりよく分かっていない、
そして産業界でも活性化しつつあり読者の関心が高い、
という背景もあって学術業界でも注目されています。

 

現状でいうと学術論文ではアメリカのElsevier社がFRP関係の雑誌を断トツで多く出版しています。

 


代表的なもので、


Composite Structures

Composites Science and Technology

Polymer Composites

Composites part A

Composites part B

Journal of Reinforced Plastics and Composites


といったものがあります。


一部はオンラインでなかみすべてを見られるものもあるので、定期的に雑誌のジャーナルを覗いて情報を把握することもやろうと思えば可能だと思います。

 


これらの雑誌ではFRPの原理原則的な部分をひたすら研究するような内容もありますが、エンジニアリング的な内容を書いている論文も多く見受けられます。


日本企業でも東レや三菱レイヨンなどはたまに上記雑誌で論文を投稿している例があります。

やはりFRPで世界をけん引しているFRP業界の企業は、学術業界でもある程度の存在感があると感じます。

 

私も上記の中では Polymer Composites に論文を掲載させており、現在も2報ほど上記の雑誌の中で査読中のものがあります。

 

 

このように企業の技術者や研究者が論文を投稿することは決して特別なことではありません。

 

 

ところが日本に限らず世界中で論文を投稿する企業の技術者や研究者はほとんどいません。

 

最も大きな理由は、


企業内で行った研究開発は機密事項であるため、内容を開示できない


というものです。

 


企業によっては学術論文投稿を禁止している場合さえあるくらいです。

 


しかし、学術論文は書くことは現段階では難しくても企業の技術者、研究者が定期的に論文を読むことで情報を収集することは重要です。

 

この主な理由は以下の通りです。


1.学術業界の動向を把握する


2.一つのテーマを論理的にまとめるという力を論文を通して学ぶ


3.専門的な内容に対するアレルギーを低減させる

 

それぞれ説明していきます。

 

1.学術業界の動向を把握する

各国の大学や研究機関がどのようにやっているんだろう、ということを把握することは、欧米でいえばその後工程に控える企業がどのようなことに興味を持っているのか、ということを把握するということにつながるケースがあります。


欧米では、

 

– 基礎研究は大学で


– 量産化開発は公的研究機関で


– 最終的な量産は企業で


という役割分担が機能しています。

 

恐らく欧米企業は公的研究機関や大学とうまく連携しながら、
コンセプト設計から協力できる体制を構築しているケースもあると考えます。


つまり大学の動向を把握すれば、欧米の産業界はどこを目指そうとしているのか、
という大まかの方向性を理解できる可能性もあります。


上記の方向性も参考に、では自社では何を目指すのかということを考えることで、
日本はもちろん、世界の企業との差別化をするという姿勢が競争力をつけるには必要です。

 

 

2.一つのテーマを論理的にまとめるという力を論文を通して学ぶ


企業の技術者、研究者と話をしていると、


「なぜ、その仕事をしているのですか」


というシンプルな問いに答えられないケースがあります。

 

 

「目の前に仕事があるからやっている」


「会社の方針としてやれと言われているからやっている」


そんな考えで日々の仕事に忙殺されているケースも珍しくありません。


エンジニアリング的な内容であっても論文を書けるくらい論理的に基礎からまとめあげられていないと、
その技術にはどこかでほころびが生じる、というリスクがあります。

 

行き当たりばったりのやり方では本当の技術は構築できません。

 

 

FRP業界で自社の技術を積み重ね、本当の技術力という底力を上げていくには、

 

「行った仕事をまとめるという論理的思考力」

 

が極めて重要です。

 

論理的思考力とは何でしょうか。


ロジカルシンキングという手法を学べということではありません。

 

論理的思考力の本筋は、


「自分の行っている仕事を”客観的”に見ることができる」


というものです。

 

仕事をやりながらも、


– なぜこの仕事をやっているのか


– この仕事で目指すものは何なのか


– そしてこれを最終的に自社のどのような技術の蓄積につなげていくのか

 

このようなことを考えられることこそ技術の蓄積に重要であり、
この技術の蓄積こそFRP業界での自社の競争力の根幹といえるものです。

 

 

このような思考の練習には、理想的には論文や報告書を大量に書くことが最適ですが、
論文を多く読むということもトレーニングとなります。

 

論文は長い時間をかけて行った研究を端的にまとめあげたものばかりです。

これらを読むことで、その思考回路を学び取るのです。

 

そして書いているのは論文を書くことを仕事にしている大学の関係者であり、
論文の質については玉石混交といえど厳しい査読を経て掲載されている論文は、
論理的思考の見本としてはかなり良いものだと考えます。

(そういう意味では、査読付きの実績ある上記で紹介したような雑誌を読むのが好ましいです)

 

専門的な内容を理解することはもちろん、上記のような自分を客観的に見つめるための論理的思考力の勉強に活用してください。

 

 


3.専門的な内容に対するアレルギーを低減させる

何か新しいことをやろうとすると、やる前から


「これは何か難しそうで…」


「弊社では難しいです…」


というコメントをいただくことがあります。

 


もちろん資金的に無理という場合は他の考えをしなくてはいけませんが、意外に多いのが、


「自分ではわからないので、例えば大学の先生に依頼する形でいいのであればやってみます」


という専門的な初期の段差がハードルとなっているケースがあります。


ところが実際にやってみると、それほど大変なことではなかったということはざらにあります。

 

論文を多く読むことで、このような専門的な初期ハードルを下げるという意味で論文を読んでおくというのは効果的です。

 

FRP業界で本当の技術を蓄積するには


「自ら手を動かして評価を行う」


というのが鉄則です。

 

一部の単調な評価は別として、評価の多くを委託で行うと評価を通して取得できる知見の半分程度しか得られない可能性があります。

 

そして自ら手と頭を動かして評価を行うにあたっては、専門的なアプローチへのアレルギーを低減することが重要であり、普段から論文を読んでおけば未知の専門的な部分についても進んでやろうという行動につながっていきます。

 

 

 


本日の記事では少し一般論に終始しましたが、企業の技術者や研究者の方も学術論文に対するハードルを下げていただき、自社の技術の底力を上げていくことでFRP業界で活躍できることを望みます。

 

 

理想的には企業の技術者や研究者もFRP関連業界の一流誌に論文を投稿し、世界中の専門家に自らの技術を周知させるということを徹底させたいところです。

 

 

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