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Carbon nano tube ( CNT ) によるFRP物性の改善

2015-07-27

10年以上前に一大ブームを引き起こした Nano technology 。

 

FRPの業界でも Carbon nano tube ( CNT )は早い段階から注目されており、
理論上の物性は現存するCFRPをはるかに超えると言われています。


ところが高いコストもさることながら最大の欠点である、


分散性の悪さ


からなかなかその特性を発揮できずにここまで来ているというのが実情です。

 


感覚的にわかるかもしれませんが、
ナノスケールで小さいものというのは非常に表面積が大きい一方、
お互いの粒子同士が凝集してしまうというデメリットがあります。


ナノスケールの技術で問題となるものの半分以上はこの分散性の悪さといっても過言ではありません。

 

 

私も Frauhofer にいた頃は銀のナノ粒子の添加材への導入、そして大学院にいた頃はナノスケールの金属粒子の形態制御の研究をしていましたが、TEM( Transmission electron microscope :透過型電子顕微鏡)で見える範囲でさえ、粒子が凝集していたことをよく覚えています。

 

 

そんな状況にあって、 SP NANO Ltd. という企業が新しいタイプのCNTを開発し、
それがFRPの物性改善に大きな効果があるということを発表しました。

 

上記発表内容のHPは以下の所です。

http://www.fulcrumnano.com/fulcrum-sp-materials-makes-breakthrough-in-the-reinforcement-of-panphenolic-based-composites/

 

発表の概要としては、SP1/CNTというCNTを PAN/Phenolic composite (PAN系炭素繊維とフェノール樹脂をマトリックスとするCFRP)に、繊維重量で0.2~0.3%添加したところ物性が大幅に改善したとのことです。

 


このSP1/CNTという製品は先述した分散性という課題を解決できたものとして紹介されています。

 

本材料は aspen (アスペン)という北米原産の木から分離されるSP1というタンパク質によって自己構造化されたものとのこと。

つまり、CNTをタンパク質の力である特定構造を形成させるというものです。

 

 

形成される構造はドーナツ構造。

 

この内側円内に12個のN(窒素元素)を末端とする官能基を有しており、
この官能基がCNTをある特定構造として結び付け、
CNTのついたSP1が結果として炭素繊維やアラミド繊維との結合を媒介し、
CNTを強化材としての機能を発現させることを可能にしているとのこと。

 

現代の遺伝子工学技術を持ってすれば、タンパク質の構造を変えることはそれほど難しくないらしく、
CNTを最も効率的に強化繊維と結びつける構造を見出すことができたようです。


そしてこのSP1の存在によりCNTの分散性も格段に向上し、
結果としてSP1/CNTを添加剤としての販売にこぎつけたとのことでした。

 

 


そして驚くべきはSP1/CNT添加によって得られた効果。


CF/Epoxyでは80%以上層間せん断強度向上、
CF/Phenolicでは層間引張で250%以上の強度向上がみられたとのこと。


それだけではなく、Epoxy接着剤との間の剥離強度が50%改善し、
Epoxy添加によりガラス転移温度が20℃も上昇したそうです。


これらの技術概要は以下の所にかかれています。


http://www.fulcrumnano.com/technology/

 

 

 

SP1/CNTが発表されたのは2014年3月で1年以上前ですが、
今後も様々な成果を出す可能性を有する、非常に興味深い添加剤なのではないかと思います。

 

特に、引張、せん断、剥離の強度といった機械特性だけではなく、
ガラス転移温度のような物理特性も変化したというところに注目です。


FRPを設計するにあたって重要項目のうち実に6割以上は物理特性である、ということは素材メーカーのような川上に近い企業の方にはあまりなじみがない事実かもしれません。

 

物理特性は、最終的に形状としてあらわれたとき、


「なぜ、その形状物にFRPを使う必要があるのか」


という市場命題にこたえるキーワードです。

 

強いだけ、丈夫なだけであれば従来の金属材料と置換する動機付けには不十分です。高価なCFRPを中心に、実績とコストという面でFRPは金属に太刀打ちできないからです。

 

耐熱性はFRPの弱点を補うための物理特性ですが、
FRPの利点を最大化する物理特性を見極め、
それを実現化できればFRPが市場で使われる理由がより明確化されるのではないでしょうか。

 

FRP材料開発においては、面白そうな添加剤を入れてみようという短絡的な発想をするのではなく、


「この材料を市場で使う理由を説明するためのコンセプトを初めに明確化しよう」


という広く、そして高い視点からのコンセプト立案が必須です。

 


今回ご紹介したSP1/CNTがお考えのコンセプト実証に活用できる可能性があるのであれば、
一度試作レベルでもいいので試してみるというのも一案かもしれません。

 

 

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