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CFRTP を用いた 3D print 電気自動車

2015-07-17

アメリカから FRP を用いた 3D print ( 3D プリント)で車体を作る電気自動車の市販開始とのニュースが届きました。


http://www.businessinsider.com/what-the-first-3d-printed-car-for-consumers-may-look-like-2015-7#ixzz3fPPUBtKQ

 

この発表を行ったのはアリゾナに拠点のある、 Local Motors という会社です。

https://localmotors.com/


この会社は非常に興味深いです。


HPを見てみると車やバイクを初めとしたモビリティーについて、
2070年のデザインを考える、悪路走破の新しい車のコンセプト、
カッコいい車いすや空飛ぶ車のコンセプトまで。


プロジェクトを立ち上げや募集は公募も含めてやっているようです。


もしかすると、予算についてもクラウドファンディングを用いて、
色々な人の出資によって賄おうという考えなのかもしれません。


最近のスモールビジネスのトレンドですね。

 


初めの記事に戻って 3D print で作る電気自動車のコンセプトは、


– 駆動はモーターと電池である

– シートやフレームの大部分は 3D print で作る

– 3D print で作るため、購入者ごとにシート形状、外観はカスタマイズ可能


といったところのようです。

 

記事にリンクが貼られていた動画を確認したところ、今回の車体に使われているのは CF / ABS ( acrylonitrile butadiene styrene )。


つまり、CFRTPの 3D print によって作られているということです。


使用されているのはペレットのようですので、繊維は当然ながら短繊維。

 

シート、ベースフレームを作るための所要時間は44時間。

3D print 向けの形状を設計し、また 3D print 装置の性能向上によって従来は2500時間かかっていた車体製造時間の大幅な短縮に成功したとのこと。

 

そして驚くべきがその価格。

$18,000?$30,000、$1を\120で換算すると、\2,160,000 ? \3,600,000程度。


現行の自動車製造だと何千もの部品を多くの人で組み立て、またロボットでの溶接や加工といった複数種の機械の使用も必要であることから、人件費や設備費という観点で 3D print 機械一つで車体の大部分を作れてしまうということに競争力があるとのこと。


さらに素材に関しても現在の自動車製造ではどうしても加工工程で捨ててしまう部分が多く出る。


それに対して、 3D print はニアネットでの成形なので破棄する材料が圧倒的に少ない。


加えて熱可塑性のCFRPを使うことで素材の再利用もできると述べらえており、
価格だけではなく将来性を見てもビジネスが成立すると繰り返し述べています。

 


今回の 3D print の電気自動車は25年後を見据えたコンセプト実証車でもあるとのことです。


25年後には 3D print 技術が大きく進化し、精度、製造工程スピードが大幅に改善する時代が来ると期待されているため将来は明るい、というコメントで締めくくられています。

 

 


今回の記事で感じたこととして、全般的に「挑戦的な姿勢」はとても好印象です。
短繊維のCFRTPは今後も需要が拡大することは予想されているためその布石としては面白い、と考えています。


それ以外について感じたのは以下の2点です。


1.3D print 自動車は受け入れられる国とそうでない国に分かれる


2.雇用消滅の危機感

 


それぞれ述べていきます。

 

1.3D print 自動車は受け入れられる国とそうでない国に分かれる

私個人的にはヨーロッパや日本では 3D print の自動車は受け入れられないのではないかと考えています。

理由は単純です。


ヨーロッパ、特に日本人は表面の平滑さや凹凸に極めて敏感だからです。


これは国民性の一つだと考えているので、良い、悪い、という判断の話ではありません。


実際にアメリカで多くの仕事をやりましたが、彼らの多くは細かい傷や凹凸はあまり気にしません。

それよりも新しいことをやっているというコンセプトを大切にする傾向がありました。


逆にいうとこのような国民性からもアメリカ合衆国では受け入れられていく可能性はあるかもしれません。


3D print の積層構成によるどうしても生じる細かい凹凸が受け入れらる可能性はあります(最初に紹介した動画でも、パテで平滑にする画像がありました)。

 

ただしアメリカはアメリカで長距離走行が前提ですのでなかなか電気自動車が大幅に普及するとは考えにくいです。
電気自動車ではフル充電で300キロ程度走行が限度でしょう。


大都市の街乗りか、大きなトラックの荷台に載せて目的地まで行った後に、草原や砂地を走るか、というようなレジャー用途かもしれません。


いずれにしても新しい風を吹き込む風穴をあける1手ですので今後に期待したいところです。

 

 


2.雇用消滅の危機感

実はこれを一番感じました。

動画を見ていただくと、機械がほとんどの形状を作っています。


オートメーションはFRP業界でもトレンドですし、
何より品質安定という観点からオートメーションの果たす役割は大きいと思っています。

 

ただし、あまりにも自動化が進みすぎてしまうと、
工場で組み立ての仕事をしているような方々の雇用の一部が失われるのではないかと思っています。

 

東南アジアの低価格人件費とオートメーション。

 

これらの動向に注視しつつ、どのようにして新規事業を開発していくのか。

同時に社員の雇用をどのようにして担保するのか。

 

日本に限らず製造業全体に言えるジレンマかもしれません。

 

 

 

最後は少し話がそれてしまいましたが、CFRTPの 3D print 技術によって作られる車が市場に出るという今回のニュースは、FRP業界にとって注目すべき内容ではないかと思います。

 

3D print という試作能力を上手く使いながら設計と製造を近づけたという今回のアプローチは、FRP業界における新規事業開発検討の一助になるかもしれません。

 

 

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