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FRP戦略コラム – 航空機業界 への日本企業参入

2015-07-20

軽量化という付加価値のためFRPが絶対的な地位を築いている航空機業界。

先週のある民間紙の記事で、航空機業界への日本企業参入を進める自治体などの取り組みが特集されていました。

 

本日のFRP戦略コラムでは、この航空機業界への日本企業参入ということについて、自らの航空機業界での経験を踏まえ、記事などでは書かれることのない現実について改めて書いてみたいと思います。

 

 


FRPが航空機業界で市民権を得られている理由はなぜでしょうか。


コストをかけていいからですか?


最先端技術の集約されている業界だからですか?

 

コストについては確かに自動車などと比較するとさほどうるさくありません。

それよりも絶対的な品質保証体制が必要なため、
管理費がかさむことからコストが結果的に高くなっているという例が多くなっています。

しかし、それだけではありません。

 

最先端技術が集約されているか、についてはむしろ間違いです。

航空機業界は安全第一のため、家電、自動車といった業界と比較すると2世代、3世代前のものを使うことが当たり前です。


むしろ実績あるもののみを使いたいという超保守的な業界です。

 

 

実はFRPが航空機業界で認められている理由。


それは軽量化によって、

 

– 燃料を多く載せられる


– 荷物を多く載せられる


– お客様を多く載せられる

 

といった、

 

輸送能力の増大や航続距離延長という商品価値の上昇に直結している

 

という紛れもない事実によるものです。


燃費が○○%上昇しました、というスローガンではなかなか認められない自動車業界とはこのようなところが違うのです。

 

 

さて、初めにご紹介した航空機業界への日本企業の参入。

基本的には間違ってはいない方向だと思います。

 

実際、ものづくり産業では付加価値をつけて値崩れを防ぎたいという至上命令があるため、
そのフィールドとして航空機産業は理にかなっているといえるからです。

 


その一方で、マスコミなどでは述べられていない現実があるのも事実です。

 

航空機業界に参入する際、最も注意すべきこと。


それは、


「一度参入すると、品質管理を中心とした莫大なコストと手間がかかり続ける」


ということです。

 

加えて現在の航空機業界のルールはアメリカとヨーロッパにほぼ全域を掌握されており、中国のように航空機を購入して機体の最終組み立て工場を誘致する、というところまで進まないと、自国のルールで航空機業界での品質管理システム構築することは極めて難しいでしょう。

 

MRJがその急先鋒として風穴を開けようとしていますが、長い時間がかかると予想されます。

 

つまり、他国の作ったルールが絶対である、という不可避の現実のため、それに対応させるために膨大な労力をかける必要があるという事実を忘れてはいけません。

 


そしてもう一つ気を付けなければならない点があります。

 


それは、


航空機業界では、言われたことを言われた通りにやり続けるという姿勢が求められる


という点です。

 

もちろん量産工場では業界問わず当然のことです。


航空機業界では開発部門に対しても同様のことが求められてしまいます。

 

これはすなわち、新しいことを生み出すことを使命とする技術者たちを定常業務にはめ込むということを意味します。


当然、新しいことをやりたいと仕事に向かっている技術者に対しては、
モチベーションを大きく低下させる要因となります。

 

では、欧米ではなぜ航空機業界がうまく機能しているのか。

 

それは、

研究は大学で

量産開発は公的研究機関で

製品の量産と認定はメーカーで

という役割分担ができているからです。

 

日本企業もメーカーは量産と認定に役割を絞り、研究開発は大学と一緒に行い、量産開発は公的研究機関と一緒に行う、というようなことが実務レベルでできれば可能かもしれませんが、それほど余力のある企業など一握りではないでしょうか。


自社内で開発から量産までを行うケースの多い日本企業において、
航空機業界に参入することは本来新しいことを生み出す技術者を、

「決められたことをやり続ける」

という定常業務に追いやり、モチベーションを低下させる恐れがある。

 

売り上げや利益からでは見えない、このような問題点についても考慮した上で航空機業界への参入を心がけていただきたいものです。

 

 

 

いかがでしたでしょうか。


航空機業界は今後も伸びる可能性がある一方、上記のような問題もあります。

また、そもそも日本国内に航空機のマーケットがほとんどないという足元に市場が無いという弱みもあります。


これらも考慮しながら幅広い視点で業界への参入を検討することが重要なのかもしれません。

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